近年、日本企業を取り巻く経営環境は、日々目まぐるしく変化しています。

このような環境変化にいち早く対応して、さまざま経営課題を解決する手段のひとつとして「戦略人事」が注目されています。

「戦略人事」とは、自社の経営戦略の達成に向けて、人事マネジメントを連動させるという考え方です。

では「戦略人事」は、これまでの人事部の仕事とは何が違うのでしょうか。

この記事では「戦略人事」の特徴や重要な要素、導入する際のポイントなどについて詳しく解説します。

戦略人事とは?

「戦略人事」とは、「戦略的人的資源管理(Strategic Human Resources Management)」を略したものです。

1990年代に、アメリカ合衆国ミシガン大学のスティーブン・M・ロス・スクール・オブ・ビジネス教授で経済学者のデイビッド・ウルリッチが提唱した考え方です。

その内容は彼の著書である「MBAの人材戦略」で紹介されています。

従来の人事部の仕事は、労務管理や人事制度に運用といった定型的なオペレーションが中心でした。

それに対して、戦略人事は売上目標や業界内の競争など企業の経営戦略に、人事部が積極的に関わるという考え方です。

戦略人事と人事戦略の違い

「戦略人事」と類似する言葉で「人事戦略」があります。「人事戦略」の定義には色々ありますが、一般的には優秀な人材の採用や人材育成のために、採用や教育などの人事の業務を改善・改革することを指しています。

「人事戦略」は、あくまで人事業務の改善・改革が目的であり、「戦略人事」のように経営戦略に人事が深くかかわるかどうかまでは問われていません。

人事における戦略の位置づけ

人事の機能は、一般的に大きく3つに分けられ階層になっています。

上から「戦略人事」、「インフラ人事」「オペレーション人事」で、下層の「インフラ人事」や「オペレーション人事」は、上層にある「戦略人事」の方針に基づいて行われます。

「戦略人事」は、企業の経営理念や経営戦略を実現するための人事戦略を構築することです。

この「戦略人事」を達成するために、人事に関する業務制度の設計や人材開発を行う「インフラ人事」と、労務管理や勤怠管理、給与計算などの日常業務や人事システムの運用を行う「オペレーション人事」が必要となります。

戦略人事に必要な要素

デイビッド・ウルリッチ教授は、戦略人事を実現するには、次の4つの要素が重要であるとしています。

HRBP(HRビジネスパートナー)

「HRBP」とは、Human Resource Business Partnerの略です。

「HRビジネスパートナー」と言われることもあります。

経営者や事業責任者のビジネスパートナー(BP)として同じ目線に立って経営戦略の達成を目指し、組織や人といった人事(HR)の面からサポートして実現しようとすることで、戦略人事では最も重要な要素です。

OD&TD(組織開発&タレント開発)

「OD(組織開発)」は、Organization Developmentで、「TD(タレント開発)」はTalent Developmentの頭文字を取ったものです。

「OD&TD」は、企業理念や経営方針を組織に浸透させることによって、組織全体を目指す方向性に導く役割の「OD(組織開発)」と、目標とする組織作りのために必要な人材を育成する役割の「TD(タレント開発)」という2つから成り立ちます。

ODとTDは、どちらがかけても機能しません。

CoE(センターオブエクセレンス)

「CoE(センターオブエクセレンス)」は、Center of Excellenceを略したもので、エクセレンスは卓越や優秀を意味しています。

戦略人事において、人事部門は人的なマネジメント関して卓越したスキルや専門知識を持っていることが必要とされます。

OPs(オペレーションズ)

「OPs」は、Operationsの略です。「戦略人事」においても、労務管理や勤怠管理、給与計算といったオペレーション実務を、正確かつ効率的に処理するが求められます。

戦略人事を導入する際のポイント

「戦略人事」には大きなメリットもありますが、導入や運用には難しい面もあります。

では、「戦略人事」を導入する際に、人事部はどのようなポイントに注意したらよいのでしょうか。

経営者が経営戦略を明確にする

「戦略人事」を効果的に展開するには、まずは経営戦略を明確にする必要があります。

戦略人事は、経営戦略を実現するための方法です。

経営者は、自社の経営戦略を明確に打ち出して、人的マネジメントを連動させやすい組織づくりを意識することが大切です。

人事部が経営的な視点で考える

「戦略人事」では、人事部が経営者と同じ視点を持って人的マネジメントを展開することが必要です。

具体的には、経営戦略を十分に理解して、それを実現するための人事戦略を立てることが重要です。

現場の理解を得る

経営者と人事部が「戦略人事」を理解していても、現場が理解していなければ経営戦略の実現は見込めません。

そのために重要なのはOD&TDです。

組織が一丸となって目標達成に向かうには、経営理念の浸透や人材育成が必要不可欠となります。

まとめ

企業が成長を続けるには、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」といった経営資源が欠かせません。

少子高齢化による労働人口が問題とされる日本においては、特に人的資源の有効活用が企業にとって最大のテーマです。

「戦略人事」では、人事部はこれまでのオペレーション的な業務だけでなく、経営戦略を達成するための人事戦略を立て、遂行すること求められます。

そのために重要なことは、人事部が経営戦略をしっかりと理解することです。