フレックスタイム制度とは【時差出勤との違い】タイプ・メリットやデメリット・注意点を紹介
2024/02/28
少子高齢化が進み、生産年齢人口の減少が懸念されている昨今、労働者が個々の事情に応じて多様な働き方ができる職場環境の整備が求められています。そんな中、すでに多くの企業が取り入れ始めているのが「フレックスタイム制」です。
フレックスタイム制は、8時-17時のように勤務時間を固定せず、労働者が既定の範囲で自由に働く時間を決められるものです。仕事と家庭、プライベートのバランスが取りやすく、労働者のモチベーションアップや定着といったメリットが期待できます。
この記事では「フレックスタイム制」の内容やメリット・デメリットや注意すべき点について解説します。
フレックスタイム制の導入を考えている事業者の方、導入済で運用方法にお悩みの方はぜひご参考にされてください。
フレックスタイム制とは
「フレックスタイム制」は、労働者が規定内で始業・終業時刻や労働時間を自分で決めることができる制度です。一定期間での総労働時間が定められており、労働者はその枠内で1日の勤務時間を調整することができます。
フレックスタイムと時差出勤制度の違い
フレックスタイムと混同されやすいものに時差出勤制度があります。両者は制度の目的や内容に下記の違いがあります。
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フレックスタイム制の目的
フレックスタイム制は、労働者が自分で出退勤時間や労働時間をスケジューリングする制度です。フレックスタイム制度を利用することで、労働者が育児や介護、習い事や家事といった家庭生活やプライベートと仕事のバランスを取りやすくなり、モチベーションアップにつなげることができます。
フレックスタイム制は、労働者のモチベーションアップを促進し、事業の生産性を高め企業成長につなげることを最終的な目的としています。
フレックスタイム制の種類
フレックスタイム制は「コアタイム」「フレキシブルタイム」と呼ばれる2つの時間帯で区分されます。2つの時間帯それぞれの内容を解説します。
コアタイム
コアタイムはフレックスタイム制のうち、1日で必ず出勤しなければならない時間帯です。必ず設定する必要はなく、仕事のボリュームが多い時間帯に設定したり、毎日決まった時間に会議が行われている会社で採用されることが多いです。コアタイムをのあるなしは一度決めたら変えられないということはなく、日ごとに変更することができ、日によって別の時間帯に設定することもできます。
フレキシブルタイム
フレキシブルタイムは、フレックスタイム制のうち労働者が自分で働く・働かないを自由に選ぶことができる時間帯です。 フレキシブルタイムを利用して出勤時間や退勤時間を自分で決めることができます。
スーパーフレックスタイム
コアタイムを設定せず、すべての労働時間をフレキシブルタイムとし勤務時間の決定を完全に労働者に委ねる制度として「スーパーフレックスタイム」があります。労働者の働き方により自由度が増し、個々の事情に合わせた勤務時間の設定が可能になります。
【例】通常の勤務時間制度
出勤~退勤まで必ず勤務が必要な時間となります
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出勤 退勤
【例】フレックスタイム制
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フレックスタイム制のメリット
フレックスタイム制を導入した場合、下記のメリットが期待できます。
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フレックスタイム制のデメリット
一方で下記のようなデメリットも発生する可能性があります。
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フレックスタイム制の注意点
・コアタイムの時間が多く設定されている場合やフレキシブルタイムの時間帯が短すぎる場合など、1日の労働時間が通常の勤務時間制と変わらない場合は、労働者が自身の裁量で勤務時間を決定するフレックスタイム制の趣旨と合わなくなり、フレックスタイム制とは言えなくなるため、コアタイム・フレキシブルタイムの設定には注意が必要です。
・フレックスタイム制を導入する際は、事前に就業規則等への規定が必要です。
・労使協定で、下記の1~6の事項を明確にすることが必要です。
1. 対象労働者
2. 労働者が勤務すべき時間を定める期間(清算期間)
3. 清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
4. 標準となる1日の労働時間
5. コアタイム(※任意)
6. フレキシブルタイム
フレックスタイム制で導入すべきポイント
ここでは、フレックスタイム制を採用する際に導入すべきポイントを3点解説します。
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フレックスタイム制導入時におすすめな助成金
フレックスタイム制導入の際に利用したい助成金をご紹介します。
働き方改革推進支援助成金
「働き方改革推進支援助成金」は、中小企業が職場環境の改善や有給休暇の取得推進や時間外労働の削減といった働き方改革に取り組む際、その環境整備に必要な費用の一部が助成される制度です。例えば、労働時間短縮・年休促進支援コースでは、対象の事業場において時間外労働時間を一定数に削減することを目指し、就業規則・労使協定等の作成・変更などの取組を行った場合、目標の達成状況により25万円~200万円程度の助成金が受給できる場合があります。
「働き方改革推進支援助成金」の詳しい内容や申請方法については厚生労働省「働き方改革推進支援助成金」をご参照ください。
助成金の相談は「サプナ社会保険労務士法人」へ
新しい制度や助成金は上手く活用することで事業活動に大きなメリットを生む反面、制度の内容や申請方法が煩雑なため利用や導入をあきらめてしまう事業者の方も多いようです。
制度の内容や申請方法が分からない、自社が助成金の対象か確認したい、そのようなお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。
フレックスタイム制でよくある質問
ここからはフレックスタイム制の導入を検討している事業者様からよくある質問と回答をご紹介していきます。
どこからが残業とみなされる?
フレックスタイム制を導⼊した場合には、労働者が勤務すべき時間を定める期間(清算期間)のうち、清算期間内の法定労働時間の総枠を超えた時間数が時間外労働となります。そのため、通常の勤務時間制で残業となる1日8時間・週40時間という法定労働時間を超えて労働しても、すぐに時間外労働は発生しません。
この場合、同じ清算期間内で1日の標準の労働時間に達しない日があったとしても欠勤とはなりません。 あくまで、清算期間の合計労働時間が所定労働時間を満たしているか、法定労働時間を超えているかによって残業や欠勤が発生することになります。
コアタイムの中抜けは可能か?
コアタイムはフレックスタイム制のうち、1日で必ず出勤しなければならない時間帯です。そのため、フレキシブルタイムの出退勤のように自由に行うことはできません。ただし、時間有給制度や時間欠勤控除が可能な企業においては、それらを利用し中抜けを行うことは可能と考えられます。
まとめ
令和元年4月にフレックスタイム制が変更になり、清算期間が1か月から3か月に延長され、より利用しやすく改善されてきています。今後も働き方改革の推進が加速され、さらなる改善が見込まれます。
一方でフレックス制度を導入したいが内容が複雑で不安があるという声も聞かれます。制度の導入を希望する方は、ぜひこの記事の内容をご参考にしてみてください。不明な点は専門家に相談するなどして最新の情報を把握し、制度を最大限利用しましょう。