トライアル雇用とは?企業・求職者別メリットやデメリット、注意点・助成金をわかりやすく解説
2024/05/27
トライアル雇用は、経営者と労働者のミスマッチを防ぐことができる制度です。トライアル期間に経営者は、働き手を見極めることができるため、入社後にしっかりと活躍してくれる人材を選びやすくなります。
本記事では、トライアル雇用の対象者やメリットについて詳しく解説します。
トライアル雇用とは
トライアル雇用とは、働いた経験のない方や正社員になることに不安を感じている人に対して、正社員の仕事を得るチャンスを与える制度です。この制度では、一定期間の有期雇用契約を結び、その期間が過ぎた後に企業と労働者が合意すれば、正式に正社員として雇用することができます。
「トライアル雇用」と「試用期間」の違いは?
トライアル雇用と試用期間の違いは、期間終了後の扱いにあります。試用期間は正社員を前提としており、期間終了時に解雇することは労働契約法16条で制限されます。一方、トライアル雇用は最初から有期雇用契約であり、期間が終了すると自動的に契約が終了します。
トライアル雇用の目的
トライアル雇用の目的は、企業が就職経験の少ない人や長い間仕事をしていなかった人を正社員にするチャンスを得ることです。また、企業と労働者がお互いを見極めることで、ミスマッチによる離職を防ぐことも目指しています。
トライアル雇用のメリット・デメリット
ここでは、トライアル雇用に関する企業側と求職者側双方のメリットとデメリットについて解説します。
事業主・会社側
トライアル雇用期間中は、企業が求職者の能力や適性を評価しながら、リスクを最小限に抑えることができ、不適切な人材の採用リスクを減らすことができます。また、トライアル雇用を通じて新たな人材を試すことで、企業には新しい視点やアイデアを持った人材が入る可能性が高まるでしょう。
さらに、トライアル雇用期間中は、有期雇用契約(期間限定の契約)を結び、本採用が決まった後に、正式な正社員契約を結びます。これにより、正社員の試用期間中に解雇するよりも、訴訟リスクが低くなるというメリットも期待できるでしょう。
一方、デメリットとしては、トライアル雇用を行うには、求職者の選考や評価、契約の手続きなど、通常の採用プロセスよりも多くの時間や手間がかかる場合があることです。また、助成金の申請のために作成する書類が非常に複雑です。通常の雇用よりもリスクは軽減されますが、手続きが複雑になる点に注意が必要です。
求職者側
トライアル雇用期間中に実際の業務を行うことで、求職者は実務経験を積むことができ、将来の仕事やキャリアの発展に役立ちます。また、求職者はこの期間中に企業を評価する機会を得ることができ、仕事内容や職場環境を実際に体験することで、自分のキャリアに合った企業を選ぶことが可能です。
さらに、トライアル雇用期間中に企業との相性が良ければ、正社員になるチャンスが増え、安定した仕事や福利厚生を享受できる可能性があります。
しかし、デメリットとして、トライアル雇用期間中は契約社員として扱われ、正社員になれる保証はありません。そのため、求職者は期間終了後の雇用について不安を感じることがあります。また、もし正社員になれなかった場合、3ヶ月という短い期間で離職したという経歴が残り、次の就職活動で不利になることがあるため注意しましょう。
トライアル雇用の注意点
ここでは、会社側と求職者側双方にとってのトライアル雇用の注意点について解説します。
事業主・会社側
会社がトライアル雇用を行う際は、通常の有期雇用契約と同様に、事業主は契約期間満了まで雇用しなければなりません。
求職者側
求職者側の注意点として、企業がトライアル雇用の目的を正しく理解しているかどうかが分からないという点にあります。トライアル雇用は、求職者が安定した仕事を得るためのシステムで、能力やスキルがまだ十分でなくても試すことができるものです。しかし、一部の企業は求職者の能力やスキルが不足しているとして、本採用を拒むことがあります。
もし能力やスキルが不足していたり、長い間仕事をしていなかったりしても、トライアル雇用を通じて安定した仕事を得られると期待している人にとっては、このような企業の対応に不満が残るかもしれません。
【事業主】トライアル雇用への助成金
トライアル雇用に関する助成金とは、ハローワーク等に対してトライアル求人を予め提出し、ハローワーク等の紹介を受けて従業員を3ヶ月の有期雇用で契約した上で、定められた条件を満たすことで受け取ることができる制度のことです。ここでは、トライアル雇用助成金の詳細を解説します。
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金には、「一般トライアルコース」と「障害者トライアルコース」の2つがあります。会社がトライアル雇用助成金を利用するためには、以下の点に注意が必要です。
・過去6ヶ月以内に会社都合退職者がいる場合
部署単位ではなく会社全体で判断されるため、助成金は受け取れません。
・直接雇用の従業員に限り適用。
派遣社員ではなく、直接雇用の従業員が対象です。
・過去5年以内に不正受給がないこと。
・事業主や役員が過去5年以内に助成金を不正に受け取ったことがある場合、助成金は受け取れません。
・労働保険料の滞納がないこと。
労働保険料をきちんと払っていることが条件です。
・過去1年以内に労働基準法違反で書類送検されていないこと。
事業主や役員が労働基準法に違反して労働基準監督署に書類送検されていないことが求められます。
これらの条件を満たしていないと、助成金を受け取ることができません。従業員の解雇や違法行為があった場合も同様です。以上を踏まえて、詳しく解説します。
一般トライアルコース
一般トライアルコースで必ず満たさなければならない対象者条件は、以下の通りです。
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次に、以下の表の中からどれか1つに該当する必要性があります。
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以下の人を雇用しても助成金支給対象ではありません。
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事業主は以下の要件を守る必要性があります。
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また、支給額については、以下の通りです。
障害者トライアルコース
障害者トライアルコースは、障害者が就職するのが難しい状況にある場合に、一定期間雇用することで、その適性や業務遂行能力を評価し、求職者と雇用主の相互理解を深めることを目的としています。この制度では、ハローワークや民間の職業紹介事業者を通じて、障害者を紹介し、就職の機会を提供します。このプログラムを通じて、求職者と雇用主が互いを理解し、障害者の早期就職を支援し、雇用機会の創出を促進することが期待されています。
障害者トライアルコースを利用するには、前提条件として以下の条件を満たす必要があります。
・継続雇用を希望していること
・障害者トライアルの雇用制度を理解し、同意していること
対象者は、障害者雇用促進法に規定されている障害者で、以下のいずれかに該当する人です。
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また、受給要件は、以下の通りです。
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【事業主】トライアル雇用助成金の申請プロセス
ここでは、トライアル雇用助成金の申請プロセスで重要な、必要書類や申請手順について解説します。
必要な申請書類
トライアル雇用助成金の一般コースにおける必要書類は、トライアル雇用の求人票と、実施計画書、結果報告書兼トライアル雇用助成金支給申請書です。
また、障害者トライアルでは、障害者トライアル雇用の求人票を用意し、実施計画書と受給申請書を提出します。
上記の他にも、両者共通で、賃金台帳や雇用契約書、出勤簿などが必要となります。
次で、提出タイミング等を解説します。
申請の流れ・手順
申請の流れや手順は、以下の表の通りです。
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期限内に書類を用意しましょう。
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トライアル雇用のよくある質問
ここでは、トライアル雇用のよくある質問に回答します。
トライアル雇用から正社員になれる?
トライアル雇用から正社員になることは可能です。実際に厚生労働省は、8割の人が正社員に登用されたという実績を公表しています。
参考:厚生労働省
トライアル雇用の解雇リスクは高い?
トライアル雇用の解雇リスクは、厚生労働省によると2割です。そのため、解雇リスクは低いと言えます。チャンスがあれば積極的に応募した方が良いでしょう。
トライアル雇用は「やめたほうがいい」と言われる理由
トライアル雇用を辞めた方が良いと言われる理由には、この制度に対する誤解があります。
企業の経営者にとっては、リスクを低く抑えながら正社員候補を採用できる制度であり、応募者にとっては、職歴が短かったり空白期間が長かったりしても、正社員を目指せる制度となっています。そのため、ミスマッチが生じることがある程度前提となってしまうのです。
トライアル雇用の制度は、短い期間でお互いを見極めることが目的であり、経営者も働き手も両方がストレスや不安を抱えながら実行するシステムとなっています。
まとめ
トライアル雇用は、企業と労働者のミスマッチを防ぐ制度です。これにより、企業は働き手を見極めて適切な人材を選びやすくなるため、働いた経験がない人や正社員になることに不安がある人にも、正社員の仕事を試す機会が提供されます。
トライアル雇用には「一般トライアルコース」や「障害者トライアルコース」などの異なるコースがあり、それぞれに要件や支給額が異なります。この制度のメリットとして、リスクを最小限に抑えながら能力や適性を評価できることや、新しい視点やアイデアを取り入れることができる点が挙げられます。
しかし、注意点もあり、期間途中での解雇にはリスクが伴います。また、助成金を受け取るためには一定の要件を満たす必要がありますが、助成金を活用することで企業のリスクを軽減することができるでしょう。
トライアル雇用は、企業と労働者の双方にメリットがありますが、適切に運用し、条件をしっかり確認することが重要となります。