セカンドキャリアとは【年齢別】目的や意味、重要性、助成金、見つけ方も詳しく解説
2024/08/20
平均寿命が伸び、100歳まで生きることが当たり前になっている現代は、従業員は自分自身で今までよりも長期的なキャリアプランを考える必要が出てきました。
企業も従業員へセカンドキャリアに関する情報や学びの機会を提供することが求められています。
そこで、セカンドキャリアを支援する企業向けの助成金制度を活用すれば、経済的負担を減らして従業員のセカンドキャリアを支援することが可能です。
この記事では、企業がセカンドキャリアを従業員へ推奨するメリットやセカンドキャリア実施のデメリットなども詳しく解説しています。
セカンドキャリアとは
セカンドキャリアについて、以下に詳しく見ていきましょう。
セカンドキャリアの意味
セカンドキャリアとは、人生における「第2の職業」を指します。
もともとは野球選手の引退時のキャリアチェンジを示す言葉として使われていました。
しかし、最近では早期退職者やキャリアアップのための転職者が増えており、そうしたキャリアチェンジも「セカンドキャリア」と呼ばれるようになりました。
また人生100年時代と言われて長寿命化している現代では、長期的なキャリア設計の必要性が高まっているため「将来を見据えたキャリアの転身やキャリアアップ」という意味合いも強くなってきています。
セカンドキャリアの重要性
従来の日本では終身雇用制度が当たり前の時代でした。しかし、最近では終身雇用を導入している企業は減ってきており、従業員は自分自身でキャリアを見直し、スキルアップしてキャリアを切り開いていく必要があります。
企業側も従業員のキャリアアップをサポートすることが求められています。
スキルアップしていくための支援はもちろんのこと、退職後も生き生きと働いていけるような情報支援や学びの機会をもてるような経済的支援が求められています。
【年齢・タイプ別】セカンドキャリアの目的
年代別にセカンドキャリアを考える理由と企業がどのようにサポートすれば良いのか、ポイントを説明します。
30代
入社後10年近く経過した30代は、チームリーダーなどを担当して、中心的な役割を担うことが増えてきている年代です。実務経験を通して専門性を磨いたり、管理職などのマネジメントに興味を持つようになったりと、将来のキャリアを考えるようになる年代でもあります。
また結婚や出産などライフステージが変わるのも30代です。
将来のキャリアを考えつつ、生活スタイルの変化に合わせて、キャリアを見直して自分の長所やスキルを棚卸しするサポートがあると良いでしょう。
40代
40代となると、部下をもってマネージメント業務に携わる人も増える年代です。会社にとどまってスペシャリストを目指す人や、独立して自分のスキルを試す人とに分かれる傾向にあります。
40代は、30代の頃に比べて仕事の幅も広がり、会社の中での重要性も高まります。
また、転職も難しくなる年代となるため、これまでの経験を踏まえて今後どのような人生を送りたいかを客観的に考えるためのサポートが大切です。
50代
50代は、定年後の働き方を考える年代で、企業によっては早期退職制度の対象者となることもあります。
定年後にフルタイムで働きたいのか、パートタイムで働きたいのか、同業種で働きたいのかなどを考えなければなりません。場合によっては、定年前に転職するケースもあるでしょう。
これまでに習得したスキルや人脈に固執することなく、新しい情報やスキルを常に取り入れて新しい環境で働き続けられるようなサポートが大切です。
出産・育児後
出産・育児により子育てと仕事の両立ができずに、キャリアを中断した女性でセカンドキャリアを考える人が増加しています。
キャリアを中断した女性が社会復帰をする際は、家庭と仕事のバランスを保つためにはどのようなサポートが必要かを考えていくと良いでしょう。
また今後どのようなキャリアを築いていきたいのかを考えてもらうためのサポートも必要となります。
セカンドキャリアを従業員へ推奨するメリット
企業がセカンドキャリアを推奨するとどのようなメリットがあるのか、解説しましょう。
従業員のモチベーションが向上する
自分のキャリアの目標を定めて働く場合、ただやみくもに働く場合とではモチベーションが異なります。
目指す目標が明確になった働き方は、日々の業務に対する意欲が高まるでしょう。
パフォーマンスが向上する
従業員のモチベーションが向上すると、自発的に仕事に取り組むようになります。その結果、パフォーマンスが向上するでしょう。
企業の社会的責任を果たすことができる
セカンドキャリアを推奨することは個人の成長を促進することに加えて、社会全体の経済の活性と人材活用にも貢献します。そのため、企業が社会的責任を果たす一環とみなされています。
優秀な人材を獲得できる
セカンドキャリアを支援する企業は、どの従業員にとっても魅力的な企業です。そのような企業には優秀な人材が集まりやすく、優秀な人材の社外への転職予防にもなるし、社外からの優秀な人材の獲得にもつながります。
セカンドキャリアの人を採用するメリット
セカンドキャリア人材を採用するメリットを説明します。
即戦力として優秀な人材を確保できる
人材育成には時間とコストがかかるもの。しかし、即戦力として専門性の高いセカンドキャリアの人材を採用することで、人材育成のコストを削減できるメリットがあります。
スキル不足を解決できる
セカンドキャリアの人材を採用できたら、その部門のスキル不足を解決できる場合があります。
例えば、大企業での営業経験を活かして同業種の中小企業の営業へセカンドキャリアとして転職した場合。
大企業での業務プロセスを転職先の中小企業で転用することで、非効率だった業務プロセスの改善を実現できたという事例もあります。
多様性のある組織作りができる
セカンドキャリア人材は組織の活性化につながりやすいことがメリットがあります。自社にはない考えや新しい視点を持っているセカンドキャリア人材がイノベーションを生み出すきっかけになる可能性があるからです。
セカンドキャリア実施の際のデメリット
セカンドキャリアを実施するには、以下のような支援が必要となります。
経済的な支援をおこなう
セカンドキャリアを考えるためには、長期的な人生設計を考えることが大切です。従業員一人だけで人生設計を考えることは難しいため、キャリアカウンセラーからの客観的な助言があると理想の人生設計を築くことができるでしょう。
そのための研修費用補助があると、従業員は安心してセカンドキャリアに取り組むことができます。
時間的な支援をおこなう
従業員がセカンドキャリアを考える時間を確保できるように支援することも必要です。
たとえば休暇制度やフレックスタイムの導入など、従業員がセカンドキャリアを集中して考えられるような支援も必要でしょう。
情報的な支援をおこなう
従業員がセカンドキャリアを考えるために必要な情報を提供し、サポートを行いましょう。
例えば、キャリアカウンセリングによる情報提供やキャリアアセスメントを実施してキャリアを棚卸するなど、従業員が正確な情報を得てセカンドキャリアを考えられるような支援が必要です。
セカンドキャリアの受け入れで企業に求めるもの
企業が人材に求めるものと、セカンドキャリア人材の対象者が企業に求めるものが合致しているか、事前に確認しておくことが大切です。
なぜなら双方の認識が違ったまま入社すると、後に「こんなはずではなかった」と後悔することになるからです。
たとえば、以下のことを事前に確認しておくと双方の認識違いを防止できるでしょう。
・企業がセカンドキャリア人材にもとめる成果や役割などを言語化して、提示する
・セカンドキャリア人材の対象者がそれをしっかり納得・理解しているのか、しっかりと事確認する
セカンドキャリア支援向けの助成金
セカンドキャリアを実施するには、企業は経済的支援が必要となります。
しかし助成金の受給により経済的負担を減らすことができるのをご存じですか?以下に助成金制度を3つご紹介しましょう。
両立支援等助成金
「両立支援等助成金」は仕事と家庭を両立できる環境作りに取り組んだ事業者に支給される助成金です。対象者や助成内容が異なる4つのコースで構成されています。
1.出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境整備や業務体制整備を行い、育児休業を取得した男性労働者が生じた事業主に支給しされる。
2.介護離職防止支援コース
「介護支援プラン」を作成し、プランに沿って労働者の円滑な介護休業の取得・職場復帰に取り組み、介護休業を取得した労働者が生じた、または介護のための柔軟な就労形態の制度の利用者が生じた中小企業事業主に支給します。
3.育児休業等支援コース
育児休業から職場復帰の取り組みを行った事業者に対して、助成金が支給される
4.育休中当業務代替支援コース
育児休業や育児短時間勤務の期間中の業務体制整備のため、育児休業取得者や育児短時間勤務を利用する労働者の業務を代替する周囲の労働者への手当支給等の取組や、育児休業取得者の代替要員の新規雇用(派遣受入を含む)を実施した中小企業事業主に支給される。
5.柔軟な働き方選択制度等支コース
育児期の柔軟な働き方に関する制度(柔軟な働き方選択制度等)を複数導入した上で、「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」に基づき、制度利用者を支援した中小企業事業主に支給される。
6.不妊治療両立支援コース
不妊治療のために柔軟な就労形態を導入している事業者に対して、助成金が支給される
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65歳超雇用推進助成金
「65歳超雇用推進助成」とは、高齢者の雇用を推進する取り組みをおこなっている事業者に助成金が支給されます。雇用を推進する取り組みとは、以下3つです。
1.65歳超継続雇用促進コース
「定年年齢を65歳以上に引き上げ」「希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入」
「定年制度の廃止」「他社による継続雇用制度の導入」のいずれかの対応を行った事業者に支給されます。
2.高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
高年齢の雇用を推進するための環境整備を行った場合に助成金が支給されます。
たとえば、就業規則などに能力開発や賃金体系の制度の導入などを定めて、高年齢者の雇用環境を整備した場合です。
3.高年齢者無期雇用転換コース
50歳以上で定年年齢未満の有期雇用の労働者を、無期雇用契約に転換させた場合に支給を受けることができます。
早期再就職支援等助成金
計画的に中途採用を拡大した場合、東京圏からの移住者を雇入れた場合、事業規模の縮小などに伴い
離職を余儀なくされた従業員などに対し、再就職の支援や、その受け入れを行うと助成金を受け取れます。
1.中途採用拡大コース
雇用管理制度を整備したうえで、中途採用の拡大を行うことで助成金を受けることができます。
2.UIJターンコース
デジタル田園都市国家構想交付金(地方創生推進タイプ)(移住・起業・就業型)を活用して移住支援制度を利用してU・I・Jターンをおこなった人を採用した事業主は、助成金を受けることができます。
Uターン:地方から都市に移住した人が故郷に戻って就職すること
Iターン:地方から都市に移住した人が出身地ではない地方に移住して就職すること
Jターン:都市部から出身とはことなる地方へ移住して就職すること
3.再就職支援コース
事業規模の縮小等により離職を余儀なくされる労働者等に対する再就職支援を職業紹介事業者に委託したり、求職活動のための休暇の付与や再就職のための訓練を教育訓練施設等に委託して実施した事業主が受けられる助成金です。
4.雇入れ支援コース
再就職援助計画などの対象者を離職後3か月以内に期間の定めのない労働者として雇い入れ、継続して雇用することが確実である事業主が受けられる助成金です。
セカンドキャリアの見つけ方
従業員が理想とするセカンドキャリアを見つけるためには、どのようなサポートが必要なのでしょうか。ここでは、従業員がセカンドキャリアを見つけるための方法と事例をご紹介します。
順序1|人生設計を考える
まずは長期的な人生設計を考えてみましょう。
人生設計とは、どこで・誰と・どのような人生を送りたいのかを具体的に考えることです。
人生設計を考えてから「その人生を送るためには、どのような仕事をしていたいか」とブレイクダウンしていくように促していくことが大切です。
順序2|理想のキャリアを考える
順序1で考えた人生設計には、どのような働き方をすれば実現できるのかを考えていくように考えてもらいましょう。
順序3|自分の強みやキャリアを知る
順序2で考えた理想のキャリアを実現するためには、「自分の強みを活かすことができるのか?」「今までのキャリアを活かすことができるのか?」を考えていきます。その前段階として、自分の強みやキャリアを把握しておくことも大切です。
順序4|新たな資格や知識を習得する
順序2で考えた理想のキャリアを実現するためには、順序3で見えてきた自分の強みやキャリアだけでは不十分な場合には、新たな資格の勉強や知識を習得すると良いでしょう。
具体的に自分の強みやキャリアで十分か分からない場合には、求人情報を見て、どのスキルが求められているのかをチェックするのも有効です。
この順序1〜4の流れを通して、セカンドキャリアを見つけた女性の事例を紹介します。
ある女性は50代に入って、セカンドキャリアを考える研修を受講しました。それが転機となり、「両親の介護のために実家の近くに転居する。そしてその近くで人材育成に関わる仕事を見つける」が理想のキャリアプランであることに気づきます。
そこで、30年にわたる人事部での社員教育の実務経験を活かして、定年後はキャリアコンサルタントになることを決意しました。
人事での仕事が理想のキャリアプランにつながっていることに気づいてからは、日々での仕事にもやりがい感じつつ、キャリアコンサルタント資格取得に向けても勉強をしているそうです。
労務顧問・人事マネジメントの相談は「サプナ社会保険労務士法人」
「サプナ社会保険労務士法人」では、日々の労務管理上における諸問題だけでなく、人事評価制度の構築や見直しを行います。
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まとめ
この記事では、企業がセカンドキャリアを従業員へ推奨すると、以下のようなメリットがあることを解説しました。
・従業員のモチベーションが向上する
・パフォーマンスが向上する
・企業の社会的責任を果たすことができる
・優秀な人材を獲得できる
またセカンドキャリアを推奨するデメリットは、企業は研修費用の補助など経済的負担が必要となるところです。
しかしセカンドキャリアを支援する企業には助成金が支給される制度もあります。
そのため企業は経済的負担を減らして従業員へ推奨することが、可能になりました。
この記事を読んで、助成金に興味を持った方で申請方法が分からない、助成金の内容について詳しく知りたい、自社が助成金の対象か知りたいなど、お悩みをお持ちの方はお気軽にご相談ください。