スキマバイトという働き方と企業が導入する際の注意点
2024/08/30
ちょっとした空き時間にちょっと働くというスポットワーク、いわゆるスキマバイトと呼ばれる働き方が広がりつつあります。
働きたいと思ったときに、働きたい時間だけ働く。履歴書の提出もしなくていいし、面接もない。アプリ内で求人を探して、時間と場所が自分の希望に合うものを探し、お給料は日払いで受け取ることが出来る、という気軽さから注目をされています。若い世代だけでなく、高年齢の方もこのシステムを上手に使っているケースも聞きます。
企業側から見ても、例えば繁忙期など、必要なときにすぐ人材を確保することができ、採用活動、面接等のプロセスも必要がないため、人件費の削減にもつながります。
企業がスキマバイトを活用しようとする際の注意点は?
◆労働条件の書面での明示
短時間に気軽に働くのがスキマバイトとはいえ、これは働く人=労働者と企業の間の「雇用契約(労働契約)」には変わりがありません。したがって、企業側は採用するにあたって、就業場所、従事する業務、始業・終業時刻、賃金などの重要な項目について記載した「労働条件通知書」を交付する必要があります。また2024年4月からは「就業場所・業務の変更の範囲」も合わせて明示することとなっています。
◆労働時間の適正な把握
労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。実作業時間のほか、手待時間や準備、片づけなどの時間も使用者の指揮命令下で行われている場合には労働時間としてカウントします。たとえば仕事に就く際に制服等への着替えが義務付けられているような場合です。この時の着替えに要する時間は労働時間として取り扱う必要があり、賃金が発生するということです。
労働時間は1分単位で管理、計算をすることになっています。1日の労働時間を30分未満、または15分未満で切り捨てる処理は原則として違法ですので、注意が必要です。
また1日8時間、週40時間を超える労働には25%の割増賃金の支払も必要です。この労働時間には他の職場の労働時間も通算します。本業があって、副業として短時間のスキマバイトをする方の場合は注意が必要です。
◆社会保険・雇用保険要件の確認
おそらくスポットワーク、スキマバイトを想定したときには社会保険や雇用保険への加入は想定外だとは思いますが、一定期間続けて雇用する際などは、改めて確認する必要があります。また労災保険は適用されます。業務上でのケガ等が発生した場合は労災の対象となります。
◆安全衛生教育の徹底
労働契約を結んだときは、労働安全衛生法に基づき、雇い入れ時に、労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のために必要な事項について、教育を行わなければなりません。
主に機械等を使って作業する仕事、安全装置や保護具が必要となるような高所作業が含まれる仕事とはなってきますが、採用するスキマバイトの方にお願いする業務に合わせて、該当する項目を整理する必要があるでしょう。
活用するには「労務管理」が必要
働く側にも企業側にもメリットがあり、まだまだ拡大する模様のスキマバイトですが、企業が活用するには労働時間や仕事内容、賃金支払方法等の労務管理が必要になります。これらが疎かなまま進めてしまうと「労働条件通知書がもらえなかった」「仕事内容が聞いていた内容とちがった」などトラブルに発展するリスクにもつながります。しっかりとした計画を立て、準備を整えてから、上手に活用したいものです。
労働条件通知書等のモデルは厚生労働省のHPでも公開されています。
厚生労働省:令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます