リテンションとは【施策例を解説】導入メリットデメリット・リスク把握方法をわかりやすく紹介
2024/09/05
少子高齢化により、どの企業も人材不足が問題となっています。
そのため従業員を定着させるための施策である「リテンション施策」が注目されていますが、リテンション施策について詳しくご存じない方もいらっしゃるでしょう。
そこでこの記事では「リテンションとは?」「リテンション導入のメリット・デメリット」などを分かりやすく解説します。
リテンション施策について興味のある人事ご担当の方は、是非最後までお読みください。
リテンションとは?
リテンション(retention)は、英語で「維持」「保持」を意味する言葉です。
近年では、企業において優秀な人材を確保し、定着させる人事施策のことを指します。
またマーケティング領域で使われる場合には、既存顧客の維持という意味で使用されることもあります。
リテンションマネジメントとは?
リテンションの施策に力を入れた取り組みを、「リテンションマネジメント」と呼びます。
リテンション戦略と呼ぶこともあります。
リテンションの目的
リテンションの目的は、社内の人材を確保することです。その背景には、少子高齢化や団塊の世代の退職により、人材不足を課題視する企業の増加があります。このような状況下では、安定的に人材を確保するための施策が重要になっているのです。
リテンション施策の種類
優秀な人材の確保と定着を目的としたリテンションには、「金銭的報酬」「非金銭的報酬」の2つの施策があります。 以下にそれぞれを説明します。
金銭的報酬
金銭的報酬とは、従業員に金銭的な対価を与えることです。
例えば、成果に応じた給与やボーナス、目標を達成したときに支給される報奨金などです。自社株を購入して株価が上昇時に利益を得られるストックオプション、がん検診の補助などの福利厚生も金銭的報酬となります。
非金銭的報酬
非金銭的報酬とは、働きやすさや働きがいにつながる報酬のことです。
例えば、分煙や空調など働きやすい環境を作るための整備、上司と部下の間のコミュニケーションの活性化などです。またスキルアップ支援も、やる気のある社員にとっては働きがいやモチベーションアップとなるため、非金銭的報酬となります。
リテンションの導入メリット
ここまでは、リテンション目的と施策の種類をご紹介しました。では、リテンション施策は企業にどのようなメリットがあるのでしょうか。リテンション施策がもたらすメリットを3点説明します。
1、優秀な人材を確保できる
リテンション施策により、優秀な人材の流出を防止することができます。ノウハウを蓄積し継承できるだけでなく、新しい人材を採用するための事務コストや人材紹介会社などへの手数料などの採用コストも削減できます。
2、ノウハウを蓄積し継承できる
人材が流出すると蓄積したノウハウやスキルが流出します。従業員のノウハウや知識は、企業の競争力を向上させる重要な要素です。リテンション施策により従業員の転職を防止できれば、その従業員がもっているノウハウや知識の流出を防止でき、次世代の育成に加え、企業の競争優位性を維持できます。
3、生産性が向上する
リテンション施策により働きやすくて働きがいのある職場だと、従業員のモチベーションはアップします。モチベーションがアップすると生産性や業績が向上するでしょう。
4、企業イメージが向上する
離職率が低く社員の満足度が高い企業は、社会的な企業イメージが高まります。企業イメージの向上は入社希望者の増加ができるため、より優秀な人材の採用もしやすくなります。
リテンションの導入デメリット
リテンション施策にはメリットがある反面、デメリットもあります。デメリットを、以下3点説明します。
1、環境の整備コストがかかる
環境を整備するためには、整備コストが欠かせません。例えば、分煙を実施する場合、分煙対策用にオフィスのレイアウトを変更し内装を変えなくてはならず、そのためのコストを捻出する必要があります。またリモートワークなどの自宅でも働けるような環境を整備する場合には、設備投資が必要となります。リテンション導入を実施する際は、環境整備に伴うコストを捻出する可能性があることを覚えておきましょう。
2、制度の見直し業務が発生する
従業員の働きがいやモチベーションを高めるためには、既存の制度の見直し業務が必要です。制度を細かく理解して、見直し箇所を見つけてどのように見直すのかを検討しなければいけません。そのためには、関係部署や経営層との調整、制度導入から効果検証までを進める必要があり、労力と時間の確保が必要です。
3、長期的に取り組む必要がある
リテンションマネジメントは、数カ月で完結するものではありません。
なぜなら企業文化や従業員の行動様式を変えるためには、年単位の長期的な取り組みが必要だからです。またリテンション施策導入後も継続的に評価し、必要に応じて改善活動が必要です。
リテンションリスクの把握方法3つ
従業員が退職を決断すると、企業が引き留めても気持ちを変えることはありません。従業員の微妙な変化に早期に気づき、適切に対処していくことで離職リスクを軽減できます。ここでは、企業として何をすべきかを具体的に説明していきます。
積極的なコミュニケーションを行う
従業員同士のコミュニケーションや上司と部下のコミュニケーションは積極的に行うようにしましょう。コミュニケーションを日頃から行っていれば、「ネガティブなコミュニケーションが増えていないか?」「何か仕事で悩んでいないか?」などの変化に気づくことができます。微妙な変化をできるだけ早く察知するために、日頃からコミュニケーションを行うようにします。
勤怠状況のログを分析
従業員のモチベーションが低下していると、遅刻・早退・欠勤が増加し、これらの勤怠状況の悪化は離職を考え始めるサインとも言われています。そのため勤怠状況が悪化している従業員は、個別に面談を行うなど個別フォローをしましょう。また、優秀な人材の業務負荷は高くなる傾向にあるため、過度な負担が発生していないかを残業時間で確認することも大切です。
過去の離職者を分析
過去の離職者が「なぜ退職したのか?」という離職理由を分析しておくことも大切です。職場環境を理由に退職した従業員がいた場合、「職場環境のどこに問題があったのか?」「同じような環境の部署はないか?」「その部署の従業員に過度なストレスはかかっていないか?」など、詳細に確認することが大切です。
同じ理由で退職する従業員を出さないためにも、過去の離職者の分析は行いましょう。
効果に期待できるリテンション施策例
次に効果を期待できるリテンション施策を7点ご紹介します。ご紹介するリテンション施策は組み合わせられるため、社風や自社の実情に応じて最適なものを組み合わせて実施してください。
スキルアップ支援
従業員のスキルアップを支援していくことも有効です。スキルアップとは、日々の業務を行うための能力(スキル)を向上することです。特に優秀な人材ほど、自身のキャリアアップに意欲的に取り組む傾向にあるため、スキルアップのための制度を充実させて成長の実感を得られるように積極的に支援してください。
例えば、外部セミナーや研修の受講費用の補助を出したり、社内で勉強会を実施したりなどで、スキルアップを支援していくとよいでしょう。
キャリアアップ支援
スキルアップ支援に加えて、キャリアアップ(役職や賃金などの待遇を向上させること)のための支援も行うようにしましょう。例えば、社内公募制や社内FA制度(自分が希望する部署へ自らを売り込むことで異動することを可能とする制度)の導入などです。
従業員のキャリアや強みに応じて活躍の機会を与えることは会社への帰属意識につながり、従業員の定着につながります。
給与体系・評価システムの見直し
給与体系や評価システムの見直しは、従業員のモチベーションに大きな影響を与えます。現状の体制を見直し、問題点や改善点はないかを検討し、必要に応じて修正を行いましょう。成果だけで評価するのではなく、目標達成に向けたプロセスも評価軸に取り入れるなど、「自分の働きは適正に評価されている」という実感を得られるような評価制度を構築することが大切です。
部署移動・人材交流
優秀な従業員に対しては、スキルに応じて多様なチャンスを与えることが大切です。キャリアップ支援のところでもご紹介した「社内公募制や社内FA制度」のように、新しいチャレンジの場を提供するようにしましょう。希望の部署でさまざまな業務経験を積むことで、仕事のやりがいを高めることができて会社への帰属意識を高めやすくなるからです。
社内コミュニケーションの推進
良好な人間関係の構築のためには、社内コミュニケーションを活性化させることが欠かせません。部下と上司のコミュニケーション活性のために、定期的に面談を実施するのも良いでしょう。1on1ミーティングという従業員から上司に意見しやすい面談の機会を作る企業も増えてきています。
また他部署とのコミュニケーションも充実させて、社内全体でのコミュニケーションを活性化することも行いましょう。部署間のコミュニケーションがよくとれている組織は結束力が高く、そのような組織を持つ企業の業績は向上します。
ワーク・ライフ・バランスの実現
プライベートを充実させながら働き続ける「ワークライフバランス」の考え方が主流の昨今では、働く環境を整備することは大切です。
出産・育児・介護など個々の事情によって柔軟な働き方ができるように時短勤務やフレックスタイム制度の導入など、ワークライフバランスを実現できる体制を整えましょう。
職場環境の整備
従業員が気持ちよく働き続ける職場環境も整備しましょう。例えば、照明は明るすぎないか、クーラーの設定温度は低すぎないかなどの職場環境にも気を配ることが大切です。
また、職場で5S活動を実施するのも有効です。5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの頭文字であり、整理整頓されて清潔で健康的な職場環境を保てるように定期的に職場で掃除する企業もあります。
まとめ
この記事では、優秀な人材を定着させる人事施策である「リテンション」について、解説しました。
リテンションのデメリットは、以下3点です。
1、環境整備のコストがかかる
2、制度の見直し業務が発生する
3、長期取り組む必要がある
リテンションのメリットは、以下3点です。
1、優秀な人材を確保できる
2、ノウハウを蓄積し継承できる
3、生産性が向上する
4、企業イメージが向上する
企業が成長するためには優秀な人材の定着が不可欠で、そのためにはリテンション施策は有効です。どのようにリテンション施策を導入したら良いのかお困りの方は、お気軽にご相談ください。