障害者雇用の助成金制度とは【種類別】詳細と対象事業所、注意点をわかりやすく解説
2024/05/13
障害者の雇用促進や雇用の安定を図るため、従業員40人以上の企業では障害者を1名以上採用することが障害者雇用促進法で義務付けられています。従業員が40人に満たない事業所においても、障害者雇用により受けられる助成金制度が多数設けられています。
障害者の雇用に関する助成金制度は多岐にわたり、正規労働者はもちろんアルバイト雇用でも受給できるケースもある等幅広い一方、申請要件や方法がやや複雑です。この記事では、障害者雇用に関する助成金情報を分かりやすくまとめました。
障害者雇用を検討している、または助成金制度に興味がある事業主の方はぜひ参考にして下さい。
障害者雇用による助成金とは
障害者雇用による助成金は、国や地方公共団体が事業主・企業に対し設けている助成金制度です。障害者を雇用する事業主や、様々な特性を持つ障害者が働きやすい環境を整える企業に対して助成金が支給されます。
助成金の目的
障害の有無に関わらず、全ての人が自身の適性に応じて能力を発揮できる職場に就き、自立した生活が送れるような社会の実現をめざすことを目的としています。
対象となる事業所
障害者雇用に関する各助成金の対象となる事業所の共通条件は下記です。この他、助成金ごとに細かな要件が設けられています。
障害者雇用に関する助成金対象事業所の共通条件
1.雇用保険適用事業所
2.支給期間内に申請を行う
3.支給に関わる事務局の審査に協力する
※上記の1~3全てを満たす。
【種類別】障害者雇用助成金
ここからは障害者雇用に関わる助成金の種類・概要を解説していきます。
障害者作業施設設置等助成金
障害者作業施設設備等助成金とは、障害のある人を雇う事業主が、その人の障害に関わらず作業が行えるように施設の整備・設置等をする場合、その費用の一部が助成されます。
障害者福祉施設設置等助成金
障害者雇用する事業主または事業主が加入している事業主団体が、障害者の福祉増進を目的として、保健施設や給食施設等の設置・整備などをする場合、その費用の一部が助成されます。
※要件や助成率等の詳細は(独法)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用助成金のご案内」を参照下さい。
障害者介助等助成金
障害者を雇用し、支給対象障害者が主体的に業務を行うために必要な介助や雇用管理を実施する事業主に、費用の一部が助成されます。
※要件や助成率等の詳細は(独法)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用雇用助成金のごあんない 障害者介助等助成金」を参照下さい
重度障害者等通勤対策助成金
通勤を容易にするための措置を行わなければ、雇用の継続が困難な障害者を雇用する事業主や事業主が加入する事業主団体に措置費用の一部が助成されます。
【通勤が困難とされる障害者の例】
重度身体障害者、知的障害者、精神障害者または通勤が特に困難と認められる身体障害者(重度障害者等)など
※要件や助成率等の詳細は(独法)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「重度障害者等通勤対策助成金」を参照下さい
重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金
多数の重度身体障害者や知的障害者、精神障害者について、安定した雇用を継続することができると認められる事業主が、これらの障害者のために作業施設等の設置や整備を行う際、その費用の一部が助成されます。
※要件や助成率等の詳細は(独法)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用助成金のご案内」を参照下さい
トライアル雇用助成金
障害者を原則3ヵ月間トライアル雇用し、職場への適性を確認した上で継続雇用を検討できる制度です。障害者を採用する上での不安を解消し、雇用することができます。
この制度を利用する事業主は助成金を受けることができます。トライアル雇用助成金には「障害者トライアルコース」「障害者短時間トライアルコース」の2つのコースが設定されています。
障害者トライアルコースの概要
ハローワークや民間の職業紹介事業者等の紹介で、就職が困難な障害者を一定期間雇用し、適性や業務遂行可能性を見極める機会を設ける事業者に助成金が支給されます。
障害者短時間トライアルコースの概要
障害者を継続雇用することを目的とし、一定期間試行雇用。雇用時の週所定労働時間は10時間以上20時間未満とし、障害者の体調・状況に応じて雇用期間中に20時間以上を目指す事業者に助成金が支給されます。
※要件や助成率等の詳細は厚生労働省「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」をご参照下さい
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、障害者をはじめ就職困難者を採用した事業主を対象に支給される助成金制度です。ハローワーク等の紹介により、継続雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として採用する事業主が受給できます。
特定就職困難者コースの概要
高年齢者や障害者等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、雇用保険の一般被保険者として継続雇用する事業主に対して助成金が支給されます。
※要件や助成率等の詳細は厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」を参照下さい
発達障害・難治性疾患患者雇用開発コースの概要
ハローワーク等の紹介により、発達障害者や難病患者を雇用保険の一般被保険者として継続雇用する事業主に対して助成金が支給されます。
※要件や助成率等の詳細は厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」を参照下さい
障害者雇用納付金制度
障害者が障害に関わらず仕事で能力や適性を充分発揮できるための環境作りは事業者の社会的責任の1つであるという理念のもと、事業主間の経済的負担の調整を図るとともに、障害者を雇用する事業主に対して助成される制度です。
常用労働者が100人を超える事業者において障害者法定雇用率未達成の場合、納付金が課され、その納付金を財源として障害者雇用調整金等の各種助成金が支給されます。
人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)
障害を持つ訓練対象障害者が障害者職業能力開発訓練事業を行うために、事業主が訓練の施設または設備の設置・整備または更新をする場合や障害者職業能力開発訓練事業を行う場合助成される制度です。
人材開発支援助成金について知りたい方は「人材開発支援助成金の注意点や申請方法を解説」にて、より詳しく説明しているため、ぜひ参考にしてみてください。
※要件や助成率等の詳細は厚生労働省「人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)」を参照下さい。
障害者雇用による助成金の注意点
ここまで障害者雇用による助成金制度を種類別に解説してきました。制度の利用は、障害者を雇用する事業主にとって多くのメリットがある一方で、注意すべき点もあります。ここでは特に注意が必要な点を解説します。
障害者が継続して働きやすい環境を作る
2013年に障害者雇用促進法が改正され、「雇用差別の禁止」と「合理的配慮の提供」が義務化されました。障害者がその障害に関わりなく能力が発揮できるよう、ハード面の改善だけでなく差別のない職場の雰囲気作りや、各々の障害のサポートとなる労働環境作りを目指すことが重要になってきています。
いつまでといった期限なく、障害者が継続して安心して働けるように、事業者は環境整備することが大切です。
制度の変更を把握する
障害者雇用に関する助成金制度は、より利用しやすい制度に整備するため頻繁に変更・改正が行われています。適切な制度利用が行えるよう、事業者は厚生労働省や高齢・障害・求職者雇用支援機構のホームページで最新の情報を把握するようにしましょう。
間違いのない申請を行う
助成金制度は頻繁に変更・改正が行われ、申請手続きはやや煩雑です。必要な書類の準備を申請締切までに提出し、間違いない申請を行うことが必要です。
助成金の相談は「サプナ社会保険労務士法人」へ
障害者雇用に関する助成金は上手く活用することで、障害者の雇用機会の拡大や安定につながることはもちろん、企業の事業活動に大きなメリットを生みます。一方で制度の内容や申請方法が煩雑なため利用や導入をあきらめてしまう事業者の方も多いようです。
制度の内容や申請方法が分からない、自社が助成金の対象か確認したい、そのようなお悩みをお持ちの方はぜひ一度「サブナ社会保険労務士法人」にご相談ください。
まとめ
障害者雇用にかかる助成金制度は、より利用しやすく改善されてきています。今後もさらなる改善が見込まれます。
一方で助成金制度を利用し障害者を雇用したいが、制度の内容が複雑で不安があるという声も聞かれます。制度を導入し、障害者の雇用を希望する方は、ぜひこの記事の内容をご参考にしてみてください。不明な点は専門家に相談するなどして最新の情報を把握し、制度を最大限利用しましょう。
参考:
(独法)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED).”障害者雇用助成金のご案内”,
(独法)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED).”障害者雇用雇用助成金のごあんない 障害者介助等助成金”,
(独法)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED).”重度障害者等通勤対策助成金,
厚生労働省.”障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース”,
厚生労働省.”特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)”,
厚生労働省.”特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)”,
厚生労働省.”人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)”,