評価者研修とは【社労士監修】目的や学べること、実施のメリットデメリット、導入事例を紹介
2024/11/30
従業員を評価する立場にある管理職や人事部門が、人事評価に必要な知識やスキルを学ぶ「評価者研修」。適切な評価を行うためには、公平性を保つ知識やスキルだけでなく、被評価者の成長を促すフィードバック力も求められます。
しかし、評価者が十分な研修を受けていない場合、評価エラーやフィードバック不足といった課題が発生する恐れも……。
本記事では、評価者研修の目的や内容、実施のメリット・デメリット、導入事例などをわかりやすく解説します。
評価制度の改善を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
評価者研修とは
評価者研修とは、他の従業員を評価する立場にある評価者が、人事評価に関する正しい知識やスキルを学ぶ研修のことです。
基本的には、人事評価制度の概要を学んだうえで、目標設定や評価、フィードバックなどに必要なスキルを習得していきます。
評価者研修が必要な理由
評価者研修を実施する理由としては、以下が挙げられます。
評価エラーを防ぐ
評価者が陥りやすい先入観や偏見を理解することで、評価エラーを予防することができます。
評価の公平性を高める
全ての評価者が評価に関する正しい知識やスキルを身につけ、自社の運用ルールを理解することで、公平性の高い組織を作ることができます。
被評価者の成長を促進する
適切なフィードバックのスキルを身につけることで、被評価者の成長を促進し、いきいきとした組織を作ることができます。
評価者研修の対象者
評価者研修の主な対象者は、他の従業員を評価する立場にある方です。組織によっても異なりますが、以下のような方々が対象者となります。
・管理職
・経営者・役員
・人事部門
評価者は、被評価者に対して適切に評価を行う必要があります。そのため、人事評価制度を深く理解したうえで、客観的に評価を行い、正確な目標設定を実施し、被評価者の成長につながるフィードバックをするためのさまざまな知識やスキルが求められます。
また、
今回のテーマとは異なりますが、被評価者を対象に「被評価者研修」を行うこともおすすめです。被評価者研修では、成長につながるフィードバックや評価の受け止め方や、目標達成に向けて必要な行動などを学びます。
評価者研修で学べることは?
評価者研修で学べる基本的な内容としては、以下が挙げられます。
人事評価制度の概要
人事評価制度の根幹となる等級・評価・報酬について、意義や重要性、基本的な仕組み、自社の運用フローやルールなどを理解します。
目標設定の仕方
階層や職種に応じて適切な目標を設計する方法を学びます。また、被評価者が納得して取り組める目標の立て方や、避けるべき表現についても理解します。
目的達成に向けたサポート方法
被評価者が目標を達成するために評価者が取るべきサポートとして、中間面談の活用方法や、育成につながるフィードバック・アドバイスの伝え方などを理解します。
評価の仕方
評価の手順、留意点について学びます。評価者が陥りやすいハロー効果や寛大化傾向などの評価傾向を抑え、公平に評価するためのポイントを理解します。
面談・フィードバックの方法
評価面談やフィードバック面談の手順、留意点について学びます。被評価者が前向きに評価を受け止め、次の目標に意欲的に取り組むためのコミュニケーション方法を理解します。
評価者研修の実施方法
評価者研修を実施するには、自社で研修カリキュラムを作成するケースと、研修会社に依頼するケースがあります。
研修会社の実施する研修では、評価者の属性に合わせたさまざまな研修内容を依頼でき、評価者の役割・目的を理解して、一連の評価の流れやポイントを学ぶことが可能です。
評価者研修のメリット
評価者研修を行うと、以下のようなメリットが期待できます。
評価に必要なスキルが標準化できる
研修を通して、評価者の持つものさしやスキルを標準化することができます。これにより、評価制度をより公平に運用することができます。
評価の質を向上できる
評価者の評価スキルが上がることで、評価の質を向上することが可能です。これにともない、被評価者の評価に対する満足度も高まります。
従業員エンゲージメントの向上につながる
評価者の面談・フィードバックスキルが上がり、目標達成に向けた適切なサポートができるようになることで、被評価者が成長実感を持って日々の業務に取り組めるようになり、従業員エンゲージメントが高まります。
評価者研修のデメリット
評価者研修を行うことで、直接的に発生するデメリットはありません。ただし、研修を行う際には、以下のポイントに注意する必要があります。
座学だけではなく、実践的な形式で学ぶ
評価者研修では、ロールプレイングやケーススタディなど、実践的な形式で学ぶことが重要です。被評価者の立場になったり、他の評価者の評価を聴いたりすることで、より深い学びが得られるでしょう。
日常的な被評価者との信頼関係が重要
被評価者が納得して評価やフィードバックを受け入れるためには、日頃から評価者とコミュニケーションを取り、お互いに信頼関係を築くことが重要です。1on1ミーティングなどを積極的に取り入れ、通年で被評価者の成長を支援するようにしましょう。
評価者同士が情報を共有する
評価者によって評価への取り組みの度合いに差があると、不公平感が増してしまいます。評価者同士がやり取りできる場を作り、社内で発生している課題やフィードバックのノウハウなどを共有し合えるようにしましょう。
評価者研修が必要な企業の特徴
それでは、評価者研修はどのような企業に導入する必要があるのでしょうか?
基本的には全ての企業で評価者研修を行う必要があります。特に、以下のような企業においては、導入の必要性が高いといえるでしょう。
人事評価制度が機能していない
人事評価制度が形骸化し、正しく運用されていない企業もあります。従来の人事評価制度の見直しを行ったうえで、評価者に適切な評価の方法を理解してもらう必要があります。
評価に対する不満の声が上がっている
従業員から評価に対する不満の声が上がっている場合、評価エラーやトラブルが生じている可能性が高いです。課題を確認の上、必要に応じて研修を実施することが必要です。
目標達成率が低い
社内の目標達成率が低い場合、評価者の目標設定に問題があるか、目標達成に向けたサポートが十分に機能していないことが考えられます。評価者がコミュニケーションスキルを向上し、適切なサポート方法を学ぶことで、状況を改善できる可能性があります。
評価が人材育成につながっていない
評価やフィードバックが「本人に伝えるだけ」になってしまい、被評価者の成長につながらないのは非常にもったいないことです。こうしたケースでは、評価者が被評価者の成長を促進するためのコミュニケーション方法を学ぶ必要があります。
評価制度研修を行っている団体
この章では、評価制度研修を行っているさまざまな団体について紹介します。
社労士事務所
社労士事務所とは、人事労務分野の国家資格である社会保険労務士(以下「社労士」)が所属する事務所のことです。このうち、人事分野に強い社労士事務所では、評価者や被評価者に対する評価者研修を依頼できるところもあります。
コンサルティング会社
人事労務分野を得意とするコンサルティング会社の中には、コンサルティングサービスの一貫として評価者研修をはじめとする評価制度研修を行っているところもあります。企業や職場の課題にあわせて、オーダーメイド型のカリキュラムを組んでもらえるでしょう。
一般社団法人
一般社団法人の中には、人事労務分野の事業を担うところもあります。こうした事業所では、企業向けの人事評価制度構築や運営支援の一部として、評価者研修を実施しています。
学校法人
学校法人においても、人事評価制度研修を行っているところがあります。学校法人で実施する際には、企業だけでなく、大学などの教育機関向けの研修を請け負うこともあります。
評価者研修の導入事例
評価者研修の導入事例としては、以下が挙げられます。
評価者と役員が頻繁にコミュニケーションを取る|株式会社ヨネモリ
株式会社ヨネモリでは、評価者への説明会を毎年開催するとともに、「職能評価手引き書」を配布しています。また、公正な評価点のつけ方について評価者と役員がともに議論する場を設けることで、評価者同士で評価の差が出ないよう工夫しています。
毎月の目標設定とフィードバックで士気が上昇|株式会社阿智精機
株式会社阿智精機では、月に1回の頻度で従業員の技能目標の達成度を確認し、評価者がフィードバックを行っています。これにより、従業員が目標を意識する機会が増え、評価者からの助言を活かすようになり、モチベーションや生産性の向上に繋がっているようです。
参照元:
評価者研修についてよくある質問
評価者研修を実施する際に、企業が抱えがちな疑問や不安について、よくある質問をピックアップし、わかりやすく回答します。
研修はどのくらいの期間で行われるの?
評価者研修の期間は、企業や職場によっても異なりますが、プログラム全体で1〜2日間程度かかることが多いです。一方、内容を詰め込みすぎると理解が追いつかないこともあるため、プログラムを分散して数か月かけて学ぶこともあります。また、研修内容が定着するよう、評価の時期に繰り返し研修を実施したり、評価者同士がコミュニケーションできる場を設けるのも有効です。
実施するベストなタイミングは?
評価者研修を実施するタイミングとしては、期初の目標設定の前や、期末の評価実施の前などが挙げられます。また、昇格後、評価者に任命された際に導入研修として取り入れることも有効です。
事前準備に必要な物は?
評価者研修の事前準備として、評価者に以下について伝えておくことをおすすめします。
研修の意義や目的を評価者にあらかじめ提示する
評価者に意義や目的を伝えることで、研修に参加する動機づけにつながります。
評価やフィードバックの場面における困りごとや悩みを思い出してもらう
評価者が自分ごととして研修を受けるきっかけになるほか、質疑応答を効果的に活用することができます。
研修への積極的な参加と失敗を促す
評価者になると、実務では失敗が許されないことが多くなります。実際の評価の場面で正しい評価を行うためにも、研修の機会を活用して積極的に失敗するよう促しましょう。
まとめ
評価者研修を実施すると、評価者が人事評価に関する正しい知識やスキルを身につけることができます。これにより、組織の公平性が保たれるだけでなく、従業員の成長の促進やモチベーションの向上にもつながります。
一方で、研修の企画や実施の方法に悩む企業も少なくありません。評価者研修は、評価制度の信頼性向上や従業員の成長支援を目的とした重要な取り組みです。
ぜひ自社の評価制度を見直し、研修の導入を検討してみてください。