男性育休とは【従業員・企業別】制度の特徴・免除内容・取得メリット・義務を詳しく紹介
2024/05/21
男性の育休取得は、家庭内の役割分担や子育てへの積極的な参加が可能ということで注目され、社会的にも推進されるようになっています。
伝統的な性別役割の見直しや働き方改革の一環として、男性が育児に積極的に関わることが重要視され、そのための制度整備も進んでいます。
今回は、男性育休の制度の特徴や、取得するメリットや、企業の義務などについて解説します。
男性の育休とは?
育児休業(育休)は、父親である男性が子供の育児に参加するために取得する休暇制度のことです。
従来、育児休業は主に母親が利用するものとされてきました。しかし、男性も積極的に育児に関わることが求められるようになり、その一環として男性の育児休業制度が整備されています。
男性が取れる育休の種類
男性が取れる育休の種類は、以下の通りです。
育児休業
育児休業とは、育児・介護休業法により従業員に与えられる権利です。
原則として、子供が1歳に到達するまでの間に企業に申し出ることにより、この制度の適用を受けることができます。
育児休業の取得概要
取得するための条件として、子供が最長2歳になるまでの間に申請できます。また、休暇を取る1か月前までに企業に申請します。育児休業を取得中は原則として就労することができません。
産後パパ育休(出生時育児休業)
産後パパ育休(出生時育児休業)は、育児休業よりも柔軟性のある制度です。男性が取得することを想定した制度であり、男性の育児休業を政府が促進するために実施された制度でもあります。
子供が生まれた日から、8週間という期間内に4週間まで取得可能。子供が1歳(最長で2歳)になるまでの間に取得できる育児休業とは別に取得することができます。
産後パパ育休の取得概要
取得するための要件は、以下の通りです。
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これらの条件に従って、男性は産後パパ育休を取得し、育児に参加することができます。
パパ・ママ育休プラス
「パパ・ママ育休プラス」とは、共働きの両親が育児休暇を分担して取得するか、同時に取得することができる制度です。通常の育児休暇は子どもが1歳の誕生日の前日までの期間であり、その後の育児休暇の延長は特別な理由がない限り認められません。この制度では、1歳2ヶ月まで延長することができます。
パパ・ママ育休プラスの取得概要
取得要件は、以下の通りです。
・両親共に育児休業を取得すること
・配偶者が子が1歳に達するまでに育児休業を取得していること
・本人の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日以前であること
・本人の育児休業開始予定日は、配偶者の育児休業の初日以降であること
パパ・ママ育休プラスの注意点
パパ・ママ育休プラスを取得する際の注意点として、夫婦のどちらかが専業主婦(専業主夫)である場合は、制度の適用を受けることができません。また、フリーランスや自営業者も適用されないです。
「育児休業」と「育児休暇」の違い
育児休業と育児休暇の決定的な違いは、法律的な義務があるかどうかです。育児休業は育児・介護休業法に基づく法律的な権利で義務化されているのに対し、育児休暇は努力義務であり、企業が独自に実施する制度となっています。
そのため、育児休業は対象者や休める期間などが細かく設定されているのに対して、育児休暇はいつからいつまで休むのかといった期間や、給付金、給与の扱いなどは企業側の裁量に委ねられます。
【従業員向け】男性育休への詳細
男性への育休についての取得メリットや、取得までの流れ、取得する際のポイントや、受けられる免除について解説します。
休業の取得メリット
男性が育休を取得するメリットは、多岐に渡ります。
家族間の絆が深まる
育児期間中に積極的に家族と関わることで、子どもやパートナーとの絆を深めることができます。これは、将来的に家庭内のコミュニケーションや協力関係を築く上で非常に重要です。育休消化後は、家庭内が安定することで仕事に安心して打ち込むことができます。
家事分担による幸福度が高まる
育児休業中、育児や家事をすることで、パートナーの負担を分担し、家庭内の負担を均等にすることができます。これにより、パートナーのストレスを軽減し、家族全体の幸福度を高めることが可能です。とくに共働きの家庭では、どちらか片方だけに育児負担や家事負担がかからないことにより、疲弊することを避けることができます。
社内の人へ配慮できるようになる
育児をした経験は、社内で働く子供を持つ社員に対して、深い配慮を持つことにつながります。自分自身が子育てで苦労することで、社員に気配りをすることができるようになり、会社全体の雰囲気が良くなることもあるのです。
取得までの流れ
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取得する際のポイント
男性が育休を取得する際の重要なポイントは、育休の取得を周囲への理解を求めることです。家族や職場の上司や同僚に自身の意思や理由を丁寧に伝えることで、円滑な育休取得や育児への取り組みが可能となります。
とくに、男性が育児に積極的に関わる姿勢は、社会的な変化や家庭内の役割分担に対する新たな視点を示すものとして、周囲の理解や支援が不可欠です。
受けられる免除
育児休業期間中は、社会保険料の免除が可能です。育児休業給付金が支給されますが、給与が67%(半年以降、50%)しかないため、経済面に不安は残ってしまいます。
しかし、社会保険料が免除されることで、不安が少し解消されるのです。また、社会保険料が免除されている間も、健康保険証は問題なく使えます。年金に関しても不利にならないように取り扱いされます。
【企業向け】男性育休への詳細
男性育休の推進メリットや、課される義務、取得推進時のポイントや、おすすめの給付金について解説します。
推進メリット
男性育休の推進は、企業にとってさまざまなメリットがあります。
生産性・企業イメージの向上に期待できる
人材定着や、生産性の向上です。男性が育児休業を取得することで、従業員のワークライフバランスが向上し、企業にとって有益な労働力を維持することができます。
育児休業を通じて従業員の生産性が向上し、定着率が高まることで、企業の競争力が強化可能です。また、男性育休の積極的な推進は、企業の社会的責任を示すものとして、企業のイメージ向上につながります。
企業イメージアップに繋がる
社会的に社員に対して深い配慮のある企業として認知され、顧客からの支持を得ることに貢献します。さらに、採用難による人材不足に打ち勝つ材料にもなるのです。
女性のキャリア形成支援になる
男性育休の推進は、女性だけでなく男性も育児の責任を果たすことができるようにし、女性のキャリア形成や就業復帰を支援します。これにより、企業は多様な人材を確保し、人材不足のリスクを軽減することができるのです。
課される義務
企業側に課される義務は、以下の通りです。
・従業員数1,000名超えの企業は、男性の育休取得率を公表する義務
・出産や妊娠に関して従業員から相談があった場合、育児休業制度について説明し、社会保険料減免などがあることを伝える義務
・育休制度に関して、研修を行うなど、雇用環境の整備をする義務
特に大企業に関しては、取得率公表などが義務化されており、取得率向上が急がれます。
取得推進時のポイント
取得推進時のポイントは、上層部が男性育休の取得を推進する姿勢を示し、積極的な支援を提供することです。
国の施策は、基本的には従業員に取ろうと言わせるのではなく、事業主側から社員に対して取るように働きかけなさいという意図があります。経営陣が制度を支持し、従業員に対して積極的に奨励することで、制度の利用率が向上します。前向きな雰囲気を経営者から作り出そうということです。
また、事業主は従業員に対して、男性育休制度に関する情報を十分に提供し、制度のメリットや取得方法について説明する必要があります。従業員が制度の存在や利点を理解しやすくすることで、積極的な取得が促進されます。
おすすめの給付金
企業向けのおすすめの給付金として、出生時両立支援助成金制度があります。中小企業が男性従業員が育休取得しやすい雇用環境整備や、業務体制を整える場合に受給できる制度です。具体的には、男性従業員が出生時育児休業を取得した場合には、20万円が支給されます。また、育児休業取得率が、事業年度の内に30ポイント以上アップした場合、60万円が支給されます。
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男性育休のよくある質問
ここでは、男性育休のよくある質問に対して回答します。
日本での男性による育児休業取得率は?
厚生労働省によると、日本での男性の育休取得率は、13.7%となっており、女性の85.1%よりも低い水準となっています。
参考:厚生労働省 P5
また、厚生労働省の他の調査によると、男性の育児休業取得率がアップするほど、平均取得日数が下がるという悪い相関関係にあるとのことでした。
参考:厚生労働省 P5
育児休業はいつまで取得が可能?
育児休業は、基本的に子どもが1歳の誕生日を迎える前日まで取得することができます。保育園に子供が入れなかったなど、特別な事情が存在する場合には、延長できることがあります。
育児休業の分割取得は可能?
育児休業の分割取得は可能です。育児休業制度では、育児期間を一度にまとめて取得するのではなく、分割して2回まで取得することができます。
まとめ
今回は、育児休業制度について詳しくご説明しました。特に注目していただきたいのは、企業が従業員に育休を取得するよう積極的に促す制度が整備されている点です。大企業には取得率公表義務を課すことや、中小企業であっても環境整備をすることが求められます。
従業員の定着率を上げるなど、様々な効果を狙い、制度を運用してみましょう。