おすすめの中途採用研修【年代別】成功させるポイントや必要な理由、成功事例等を紹介
2025/02/17
少子高齢化による労働力減少が懸念される昨今、中途採用に注目する企業が増えています。中途採用者は新卒採用者と異なり、既に社会や職種における基本的なスキルや知識を持っており、即戦力として成果を上げることが期待できます。
厚生労働省が令和2年、全国の5人以上の常用労働者を雇用する事業所を対象に行った「令和2年転職者実態調査」によると、転職者がいる企業の割合70.6%にも上ることが明らかになっています。このうち転職者に対して教育訓練を実施している企業の割合は74.5%、実施していない企業は22.8%で、転職者の力を活かすべく多くの企業が教育訓練を実施していることが分かります。
※ただし、この結果は回答企業の属性や業種により異なる可能性があるため、全ての企業に当てはまるものではありません。
この記事では、今注目される中途採用者の力を活かすための中途採用研修について、成功させるポイントや必要な理由、実際に行った企業の成功例などについて詳しく解説しています。
中途採用研修とは
中途採用研修とは、新しく入社した中途採用社員を対象に実施される研修のことです。
中途社員が職場の環境や企業文化に適応できるよう、社内のルールや業務内容、職務に必要なスキルを学ぶことを目的としたカリキュラムが実施されます。また、職場内の他の社員とのコミュニケーションや職場での人間関係構築も目的とします。
中途採用研修が必要な理由は?
中途採用研修が必要とされる理由は、以下の3点を身につける機会となるためです。研修プログラムで身につけるべき3点について、それぞれ以下に説明します。
企業理念の浸透
企業理念が浸透することで、中途採用社員は日々の業務での意思決定や行動の指針をはっきりとさせることができます。そして自分の仕事が企業のめざす目標にどう貢献しているかを認識できます。
研修で企業理念を理解することは、中途採用社員の業務効率や仕事へのモチベーションを高めることにつながります。
業務内容の理解促進
中途採用社員が業務内容を理解することは、自分の担当業務や役割を正確に把握し、効率的に仕事を進めるうえで不可欠です。
また、自分の業務内容をしっかりと把握することで、初めてチーム内での自分の役割を理解し、連携することができます。
職場環境への適応
中途採用社員が職場の文化や、チーム内の人間関係に適応することは、業務に就いた後のパフォーマンスに大きな影響を及ぼします。
職場環境への適応には、上司やチームメンバーとのコミュニケーションが必須となります。
中途採用研修で先輩社員とのコミュニケーションの機会を多くスケジュールし、中途社員の職場環境適応を促進することは、会社全体の成果に繋がります。
中途採用者向けの研修内容5選
ここからは中途採用者向けにおすすめの研修内容を紹介します。
OJT研修
OJT研修は、日々の実務を通して業務に必要なスキルや知識を身につける研修方法です。実際の業務環境で行うため、業務に即した内容の課題や問題に対する解決能力が高まります。
中途採用者は新卒社員と比較し、より即戦力での活躍が求められます。OJT研修は中途採用者が企業の一員として活躍していく上で、効果の高い研修方法と言えます。
ビジネスマナー研修
ビジネスマナー研修では、名刺交換やメール作成、会議での発言マナーなど、業務上必要な基本スキルを再確認し、新しい職場特有のルールや文化についてもサポートする内容を含めて学びます。
中途採用者は一定の社会経験を持っているものの、初心に立ち返り正しいビジネスマナーを確認することはとても重要です。
また新しい企業や業界に独自の仕事の進め方やルールがある場合、それらに慣れることも必要です。ビジネスマナー研修が適切に行われることで、中途採用社員の業務の効率化や職場への適応が促進されます。
コミュニケーション研修
コミュニケーション研修は、中途採用者が新しい職場で円滑な人間関係を築き、業務を効率的に進めるためにとても重要なプログラムです。
効率よく正確に情報を伝える技術や、コミュニケーションの基本となる報告・連絡・相談(ホウレンソウ)といったものを学びます。
中途採用社員はコミュニケーション研修を通じ、自分の意見や考えを適切に表現する方法や、フィードバックを受け入れる姿勢、異なる意見の受け入れやディスカッションの技術を身につけます。
専門スキル研修
専門スキル研修は、中途採用社員が新しい業務で必要とされる専門的な知識やスキルを習得するために行われるものです。
すでに一定の専門スキルを持つ中途採用者はさらに強化すること、新たに異なる業種に臨む場合は企業のツールやプロセスに適応することを目的にカリキュラムが実施されます。
この研修により、中途採用社員は新しい職場でのシステムや業務プロセス、使用するツールに慣れ、即戦力として活躍できるスキルを獲得することができます。
リーダーシップ研修
中途採用社員向けのリーダーシップ研修は、中途採用社員がリーダーとしての役割を担うために必要なスキルを習得することを目的に行われます。
リーダーシップ理論やチームワークの向上やチーム内の信頼関係を強化するために効果的なコミュニケーションの方法、問題解決方法といったプログラムが実施されます。
【年代別】中途採用者向けのおすすめ研修
ここからは、第二新卒、30代、40代以上と年代ごとにおすすめの中途採用者向けの研修を紹介します。
第二新卒
第二新卒の中途採用研修は、スムーズな職場への適応と即戦力として活躍できるための知識・スキルの習得を目的とします。
下記のカリキュラムにより、効果的な研修を行うことができます。
OJT研修
実際の業務環境で実務を行い経験を積みながら、担当業務や職場のルール、企業文化といった知識、スキルを学びます。
ビジネスマナー研修
第二新卒の中途採用社員は、一定の社会経験を有しているものの、業界や企業の特性によっては再確認が必要なスキルがある場合もあります。
敬語の使い方や名刺交換、電話や来客応対など、基本的なビジネスマナーが身に付いているか再確認するための研修が有効です。
また前職で学んだビジネスマナーが、新しい職場や業界でのマナーと異なるケースもあります。ビジネスマナー研修でしっかりと知識のすり合わせや確認を行います。
キャリアデザイン研修
キャリアパスや働く上でのビジョンを描き、自己成長に向けた目標設定を行います。会社への信頼感を高め、仕事へのモチベーションアップをはかることができます。
30代
30代の中途採用社員に対する研修プログラムは、これまで培った経験やスキルを活かしつつ、更なる成長を促進することを目的とします。
以下は、30代の中途採用者におすすめの研修プログラムです。
リーダーシップ研修
30代の中途採用社員は、職責のある立場に立つことや、マネジメントスキルを必要とする場面が多くあります。リーダーシップスキルを強化する研修が効果的です。
リーダーシップ研修では、チームマネジメントや意思決定、コーチングに関する知識やスキルを学びます。
業界・業務の専門的知識、スキル研修
30代の中途採用社員は、すでに一定の業務スキルや業界の知識を持っていることが多いです。
前職での知識を活かしつつ、さらに深い知識やスキルアップをはかるため、業界固有の知識や最新のトレンド、自社製品やサービスについての理解、競合分析といった内容を研修で学ぶことが効果的です。
40代以上
40代の中途採用社員に対する研修は、すでに充分な業務経験や知識を持っていることを前提に、知識の深掘りやさらなるスキルアップ、キャリアの再構築、マネジメント力の強化を目指すものが効果的です。
以下に、40代の中途採用社員におすすめの研修プログラムをあげます。
コミュニケーション研修
40代は、部下と上司の間に立つ中間管理職の役割を担うケースが多く、コミュニケーションスキルが求められます。
プレゼンテーションのスキルや折衝術、コーチングスキルについて、グループワークやケーススタディをまじえながら学ぶ研修が有効です。
戦略的思考を養う研修
40代の中途採用社員は、企業の中核を担う人材となることが期待されます。自社の立ち位置を把握し、今後の展開に向けた最適な戦略を構築できるよう、戦略的思考を養う研修が有効です。
具体的には、SWOT分析やPEST分析といった手法を用いた環境分析、分析結果をもとに冷静に意思決定する力、リスクの発見とマネジメントについて、ケーススタディやシュミレーションを用いて学びます。
メンタルヘルス研修
40代は職場でもプライベートにおいてもプレッシャーを感じやすい時期です。そのため、メンタルヘルスやストレスマネジメントを学ぶことは重要です。ストレス管理やメンタルヘルスに関する知識、不調への対応、ワークライフバランスの取り方といった内容を学びます。
中途採用研修を成功させるポイント
中途採用研修を成功させるためには、採用された社員それぞれの背景やスキルを把握し、適切に目標を設定することが重要です。
以下は、中途採用研修を成功させるためのポイントです。
目標設定の明確化
研修のゴールを明確化します。ゴールを設定する際は以下のポイントに注意します。
・達成可能であること
・達成率を測定できる明確な指標があること
・業務に直結したものであること
・個々の立ち位置・役割に基づくものであること
効果的なフィードバック
研修中はフィードバックを迅速に提供し、問題点があれば早期に対処することが重要です。フィードバックを通じ、中途採用社員は研修や業務へのモチベーションをアップさせます。
定期的なフォローアップ
中途採用研修における定期的なフォローアップは、研修の効果を最大化するために不可欠な要素です。定期的なフォローアップを通じて、社員の進捗を確認し、問題点や課題を早期に解決することができます。
定期的なフォローアップは進捗確認や問題発見、解決はもちろんのこと、上司と中途採用社員間のコミュニケーション強化にもつながります。
中途採用研修の導入成功事例
ここからは、実際に中途採用研修を導入し成果を収めた企業の例をご紹介します。
株式会社クボタ
2018年時点で新規採用社員約500名のうち、半数が中途採用の社員。過去10年で約2,200名の中途採用を行っており、中途採用社員は社の成長を担う大きな力となっています。
継続的に実施している「キャリアフォロー研修」では、同時期に入社した中途採用社員が集合し、入社約1年間のそれぞれの取り組み・業務を振り返り、共有を行っています。キャリア形成のフォローや、部門をまたいだ社内交流・情報交換の場となっています。
また、さらなるスキルアップやキャリアアップのため、それぞれの役割や年次に応じた階層別教育や、業務遂行上必要なスキルを向上させるための目的別専門教育を実施しています。
株式会社ローソン
2017年時点で、総合職社員のうち約52%が中途採用の社員。
中途採用後の研修として必須の企業理念研修(自らの価値観と企業理念の再確認)の実施や、スキルを補完するためのeラーニング、外部学習機関への通学などを支援(一部費用補助)するローソン・オープン・チャレンジ・プログラムを整備し受講促進を行うといった施策を実施しています。
中途採用研修に関するよくある質問
研修期間の目安はどのくらい?
中途採用研修の期間は、業種や個人のスキルによって異なりますが、一般的には1週間から3ヶ月程度が多く見られます。
効果測定のベストな方法は?
研修前と研修後にテストを実施することで、知識やスキルの向上を比較する、研修後にアンケート調査を行うといった方法があります。
中途採用研修が無い企業もある?
中途採用研修を予め設定していない企業も実は少なからずあるようです。その場合は、過去の業務資料やマニュアルを確認したり、日々の業務の中で不明点などを確認し学ぶOJTに近い方法で業務スキルや知識を深めていくことになるでしょう。
まとめ
中途採用研修は、中途採用社員が迅速に業務に適応し、組織に貢献できるよう支援する重要なプロセスです。この記事を参考に、効果的に研修を実施し、社員の定着率向上や組織全体の成果向上を目指しましょう。
参考:
厚生労働省.“令和2年転職者実態調査の概況“,
株式会社クボタ.“働き方・成長に関する制度“,
経済産業省.“中途採用・経験者採用に積極的な企業事例集“,