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人事異動とは【社労士監修】拒否できる?目的や種類、成功ポイント、7つの実施手順も紹介

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人事異動とは【社労士監修】拒否できる?目的や種類、成功ポイント、7つの実施手順も紹介

人事異動とは【社労士監修】拒否できる?目的や種類、成功ポイント、7つの実施手順も紹介

2025/01/07

 

人事異動は、企業が経営戦略を実現するうえで重要な施策です。しかし、従業員にとっては期待や不安が交錯するイベントでもあります。

 

本記事では、人事異動の目的や種類、成功のためのポイント、さらに具体的な実施手順を7つのステップで詳しく解説します。

 

加えて、「拒否は可能なのか?」といった疑問や、メリット・デメリットについても触れ、実例を交えながらご紹介します。

 

人事異動に関する全体像を理解したい方や、円滑な運用を目指す企業担当者の参考になれば幸いです。

 

人事異動とは

人事異動とは、企業の命令で、従業員の配置や役職、業務内容などの労働条件を変更することです。

 

戦略実現に向けた組織の最適化の手段として広く活用されており、転勤や昇進・昇格、職種変更などの種類があります。

 

人事異動とジョブローテーションの違い

人事異動とジョブローテーションの違いは、目的や制度の運用方法にあります。

 

人事異動の目的は、企業が次年度の経営戦略を実現するために最適な組織を作ることです。部署での経験年数や就いている役職にかかわらず、柔軟に運用されるのが特徴です。

 

これに対し、ジョブローテーションの目的は、自社の仕事に関する広範な理解を持つ人材を育成することです。2〜3年の間隔で複数の部署を異動するなど、一定の計画性を持って運用されます。

 

人事異動の目的

人事異動の目的は、企業の経営戦略実現に向けた組織の最適化です。

具体的には、以下のような理由から人事異動が発生します。

 

人材を効率的に配置するため

次年度の戦略目標の達成のために、必要な知識・スキルを持つ人材を適材適所に配置します。

 

人材の能力開発のため

伸び悩んでいる人材をより適正のある部署に異動させることで、従業員のスキルアップやキャリアアップを促します。

 

健全な組織環境維持のため

定期的な人事異動によって組織の風通しを良くし、組織内の透明性を向上させ、業務運営の公正性を確保することで、リスク管理や健全な組織運営に寄与します。

 

人事異動の種類

人事異動には、さまざまな種類があります。

この章では、代表的な人事異動の種類として、転勤、昇進・昇格、職種変更について紹介します。

 

転勤

転勤とは、勤務地が変わる人事異動のことです。たとえば「これまで大阪支社で働いていたが、来年度から東京本社で働くことになった」といった異動を指します。

 

上記の例のように、引っ越しが必要になる規模の転勤もあれば、自宅から通える範囲内での転勤もあります。

 

昇進・昇格

昇進とは、役職や職位が上がる人事異動のことです。たとえば「平社員からリーダーになった」「係長から課長になった」といった異動を指します。役職や職位が下がる場合は降職などと呼ばれます。

 

昇格とは、等級制度を採用している企業において、等級が上がる人事異動のことです。等級が下がる場合は降格と呼ばれます。

 

職種変更

職種変更とは、業務内容が変わる人事異動のことです。たとえば「営業事務職から営業職になった」「人事部から経理部になった」といった異動を指します。

 

人事異動の実施7ステップ

企業が人事異動を実施するには、以下の7つのステップを踏む必要があります。

 

人事異動を検討している担当者の方は、いま一度ヌケモレがないか確認しておきましょう。

 

1.就業規則の確認

まずは、自社の就業規則における異動の規定の有無や、規定の内容を確認します。

 

就業規則に異動に関する規定がある場合、定めに従って人事異動を行うようにしましょう。

 

なお、就業規則に規定が盛り込まれていない場合にも、法律上、人事異動は企業が命令できる範囲の業務命令とされていますが、例外として、業務上の必要性がない場合や、従業員の私生活への著しい影響が懸念される場合には、法的に拒否が認められる可能性があります。

 

従業員とのトラブルを避ける意味でも、あらかじめ異動に関する項目を設置することをおすすめします。

 

2.異動理由を明確にする

次に、異動の理由を明確化しましょう。

 

業務上の必要性や目的が不明瞭と思われる人事異動は、従業員のエンゲージメントを低下させる要因になります。

従業員から質問されたときに明瞭に回答するためにも「なぜ人事異動が必要なのか」を言語化することが重要です。

 

・課題を抱えている部署の洗い出し:人手不足・業績悪化など

・人事異動以外の方法での解決可能性の検証:即戦力人材の採用が難しい・後任を育成できる管理職がいないなど

・人事異動による解決可能性の検証:共通の商材を扱っているため組織に馴染みやすい・自部署でリーダー育成の実績があるなど

 

3.最新のデータをもとに適材適所の確認

異動の理由が明確化したら、最新の人材データを踏まえて、適材適所となるように異動案を策定しましょう。

 

人事異動の際には、従業員のキャリア志向やスキル情報、適性などを確認することが非常に重要です。

 

会社都合の人事異動は、「希望していないのに転勤させられた」「自分の能力が発揮できない」といった不和に繋がりやすいものです。

 

また、業務経験のない部署に異動した結果、かえって能力発揮が難しくなる可能性もあります。

そのため、事前に以下のような従業員データを確認しましょう。

 

・評価結果

・評価面談・フィードバック情報

・業務経験・実績

・スキル・資格情報

・異動希望の有無(転勤可否を含む)

・適性検査の結果

 

4.配置のシミュレーションをする

異動案が策定できたら、配置のシミュレーションを行いましょう。

 

具体的には、部署の合計人数や平均勤続月数、平均年齢、配置後の人件費などを確認し、大きな問題が生じないかをチェックしていきます。

 

また、キーマンの喪失により、異動元の部署の業績やチームワークが悪化することも考えられます。

後任の育成状況や、引き継ぎ対象者の有無なども含めてチェックしましょう。

 

5.内示

配置のシミュレーションを行ったら、いよいよ人事異動の候補となる従業員に内示を出します。

 

内示とは、正式な辞令を公表する前に、あらかじめ従業員に異動の旨を伝えることです。これにより、異動対象者の心の準備を促し、引き継ぎや後任の育成を円滑に進めることができるようになるのです。

 

特に、転居を伴う異動の場合は、従業員に十分な準備期間を与えるためにも、なるべく早い段階で内示を出す必要があります。

 

なお、人事異動情報は機密情報であるため、取り扱いには注意が必要です。

 

6.辞令

内示を通して、従業員との合意ができたら、適切なタイミングで辞令を発表します。

 

辞令とは、異動対象者の氏名や新旧の部署名・役職名などを記した文書のことです。

 

異動者への交付に加え、社内向けの周知のためにメールや社内システムなどに掲載することがあります。

また、役員・執行役員などの場合は、社外への周知として、新聞やWebサイトに人事異動を掲示することもあります。

 

7.人事異動の実施

辞令の発表後、適切なタイミングで人事異動を実施します。

人事異動の実施後は、異動者へのアフターフォローを行います。

 

勤続年数の長い従業員でも、勤務先や業務内容が変わることは大きなストレスに繋がります。

メンター制度やフィードバック面談などを通して、不安や課題に耳を傾けるようにしましょう。

 

また、異動元・異動先の部署の状況を観察し、大きな問題が発生していないか注視することも重要です。

 

人事異動のメリット

人事異動には、さまざまなメリットがあります。

この章では、企業目線から見る人事異動のメリットについて紹介していきます。

 

必要な知識・スキルを持つ人材を適材適所に配置できる

戦略目標を達成するには、人材を効果的に活用することが重要です。

 

たとえば新規事業を立ち上げる際にも、人事異動によってさまざまな部署から必要な知見やノウハウを持つ人材を集めれば、スムーズにプロジェクトを進めることができるでしょう。

 

伸び悩んでいる人材をより適正の高い業務に就かせることができる

現在の部署でなかなか成果が出ない人材や、壁にぶつかっている人材を放置していると、エンゲージメントの低下や退職に繋がるおそれもあります。

 

向いている業務や、成長を後押しする業務に異動させることで、本人の能力開発ができ、組織により一層貢献してもらえる可能性が高まります。

 

コンプライアンス違反の防止に繋がる

長期にわたって従業員を同じ業務に携わらせていると、不正や汚職など、コンプライアンス違反が発生する可能性が高まります。近年、コンプライアンス違反の重大事件が多くなっています。

 

適度な異動によって新陳代謝を良くすることで、リスク管理ができます。

 

人事異動のデメリット

人事異動には、いくつかデメリットもあります。

この章では、企業目線から見る人事異動のデメリットについて紹介していきます。

 

希望しない人事異動は従業員の不満に繋がりやすい

従業員が人事異動を希望していない中で、会社都合で異動を命令すると、従業員の不満に繋がります。特に、家庭のある方や、持ち家のある方にとって、転勤や降職、降格を伴う人事異動には大きな負荷がかかります。

 

貴重な戦略が退職するおそれもあるため、人事異動を行う際は事前説明やアフターフォローが重要です。

 

引っ越しの補助などのコストがかかる

転勤を伴う人事異動の際には、引っ越しにかかる費用の補填や、単身赴任先の住居の手配など、さまざまなコストがかかります。

 

場合によっては、現地の人材を活用した方がコストパフォーマンスが高い可能性もあるため、利益と費用のバランスを意識しましょう。

 

キーマンが抜けた後の部署の業績低下に注意

優秀な人材を異動させると、もともといた部署で業務を回せなくなり、業績が低下するおそれがあります。

 

そのため、人事異動を行う際には、抜けた後の後任が育成できているか、引き継ぎの時間が確保できているかなどに注意を払う必要があります。

 

人事異動成功へのポイント

人事異動を成功させるためのポイントは、従業員データの最新化・可視化・一元化です。人事異動の決め方について、上司や人事担当者の勘を当てにしている企業も少なくありません。

 

しかし、転職がしやすく、平均勤続年数が短くなっている現代においては、より効率的に人的資源を活用することが必要になっています。

 

人材管理システムなどを導入し、人材に関するさまざまな最新情報を一元管理することで、人事異動のミスやトラブルを抑止することができます。

 

頻繁に人事異動が発生する企業の担当者の方は、ぜひ人材管理システムの導入を検討してみてください。

 

 

また、従業員のスキルや適応力の向上を図る取り組みも重要となります。異動時に効果的な研修を実施することで、スムーズな移行と成果の最大化が期待できます。

 

詳しくは、『異動時に受けさせたい研修6選!手段や課題、実施目的、メリットデメリットをわかりやすく解説』をご覧ください。

 

人事異動の成功例・失敗例

それでは、人事異動の成功例・失敗例としては、どのようなものがあるのでしょうか?

この章では、実際にあった人事異動の成功事例・失敗事例を紹介します。

 

成功事例

営業部のマネージャーであるAさんは、なかなかチーム目標を達成することができず伸び悩んでいました。一方、Aさんは非常に面倒見が良く、積極的に営業ツールの最新化を行っています。

 

企業は、適性検査の結果を踏まえ、Aさんを管理部のマネージャーに異動しました。管理部では、持ち前の視野の広さやタスク管理能力を駆使して、さまざまな業務分野の効率化に貢献しています。

 

失敗事例

新入社員であるBさんは、もともと関西出身だったこともあり、20名の新人の中から一人だけ大阪支社への配属となりました。

 

しかし、大阪支社にはベテランの従業員しかいないうえ、十分なアフターフォロー体制が敷かれていませんでした。Bさんは異動から1年後に退職することになりました。

 

人事異動での注意点

人事異動を行う際には、どのような点に気をつける必要があるのでしょうか?

この章では、企業が人事異動を行う際の注意点を紹介します。

 

異動の理由や決め方を説明する

従業員の伝え方によっては、人事権の濫用と認識され、訴訟などに発展する可能性があります。内示の際には、異動の理由や異動者の決め方をしっかりと説明することが重要です。

 

「新規事業のスムーズな立ち上げには、未開拓分野への営業実績が厚い○○さんの異動が必要」など、具体的な伝え方を心掛けましょう。

 

法令を遵守する

人事異動の際に従業員とのトラブルを避けるためには、法令を遵守する態度が重要になります。近年、労務まわりの法改正が多く発生しています。

 

雇用契約書や社内規程で定めている内容に違法性がないかなど、顧問弁護士や社労士を介して定期的にチェックしましょう。

 

人事異動を実施するうえで大切なことは?

最後に、企業で人事異動を行う際に、大切なポイントを紹介します。

 

従業員との信頼関係を築く

人事異動を成功させるためには、企業と従業員の信頼関係の構築が非常に重要です。たとえば、日頃から上司・部下の関係が良好であれば、人事異動によって退職リスクが高まる人材と、のびのびと活躍できる人材の判別がつきます。

 

また、異動がキャリアアップや能力発揮に繋がった事例が社内に蓄積していれば、企業への信頼感も高まるでしょう。

 

従業員が前向きになれる伝え方を考える

人事異動といわれると、どうしても従業員はネガティブに捉えがちです。

 

そのため、人事異動を内示する際には、異動先で身につくスキルや、異動によって経験できることなど、従業員にとっての意義やメリットを前向きな表現で伝えることが重要です。

 

人事異動に関するよくある質問

 

人事異動が多い時期は?

人事異動の時期は、企業によって異なります。ただし、決算期末前後に実施されることが多くなっています_そのため、3月決算の企業であれば3月や4月、9月決算の企業であれば9月や10月が、異動の多い時期と言えるでしょう。

 

人事異動が決算期末前後に多い理由は?

人材配置は、企業の組織戦略の一つであり、効率的な経営に欠かせないものであるためです。企業は、決算期末になると、次年度の経営戦略を策定します。

 

戦略目標を達成するために必要な組織を実現するためには、人事異動が必要となることが多いです。これにより、人事異動が決算期末前後に多く発生することになるのです。

 

異動通知のタイミングはいつがベスト?

転勤や出向など、引っ越しが必要となる場合には、1〜2カ月前に通知されることが多いですが、企業や業務内容によってタイミングは異なります。

 

急な異動通知は従業員を困惑させるだけでなく、エンゲージメントの低下や、貴重な人材の退職に繋がるおそれがあります。さらには従業員の家族にも影響があるため、前もって通知することが望ましいでしょう。

 

従業員の状況を考慮した上で、適切な通知タイミングを検討することが望ましく、従業員の家族にも影響があるため、余裕を持ったタイミングで通知しましょう。

 

昇降格や業務内容の変更などの転居を伴わない異動の際にも、1ヵ月前から数週間前までをめどに通知することが多くなっています。後任の担当者への引き継ぎなどの業務も発生するため、早めに通知するようにしましょう。

 

人事異動は拒否できる?

多くの企業では、業務命令として人事異動を行う可能性があることを、あらかじめ就業規則に盛り込んでいます。よって、従業員が人事異動を拒否した場合、業務命令違反に該当し、懲戒の対象となることが考えられます。

 

ただし、企業が人事権を濫用している場合や、従業員に著しい不利益が与えられる場合には、人事異動を拒否できることがあります。たとえば以下のようなケースです。

 

・業務上の必要性がないのに異動させられる

・従業員の私生活に著しい不利益が発生する

・いやがらせや差別などの不当な動機がある

 

従業員にスムーズに異動を承諾してもらうには、企業側が入社前に人事異動の可能性を十分に説明することや、人事異動が決まったタイミングで早めに異動通知をすることなどが重要です。

 

まとめ

人事異動は、企業の経営戦略実現や組織の最適化に欠かせない施策でありながら、従業員の生活やキャリアにも大きな影響を与えます。本記事では、人事異動の目的や種類、成功のポイントを解説しました。

 

円滑な人事異動には、従業員との信頼関係や適切な情報共有が不可欠です。また、前向きに受け入れてもらうための伝え方や支援体制も重要です。

 

この記事が、企業と従業員双方にとって役立つ情報となり、より良い人事異動の実現に繋がれば幸いです。

 


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