【社労士監修】ポジティブ・アクションとは?目的や条件、メリット、注意点等をわかりやすく紹介
2025/03/25
ポジティブ・アクションとは、マイノリティや社会的弱者に対し積極的な支援を行い、平等な機会を提供するための施策や行動を指します。
職場での男女格差を解消し、女性の活躍を推進する取り組みも、ポジティブ・アクションの一例です。
ポジティブ・アクションを導入することで、職場に多様性を受け入れることへとつながります。女性の視点や経験が活用されることで、企業のイノベーションや生産性、効率性が向上する効果も期待できるでしょう!
この記事では、ポジティブ・アクションの概要やメリット、導入時の注意点、具体的な施策例について詳しく解説します。ポジティブ・アクションの導入を検討している企業担当者の方は、ぜひご参考にしてください。
ポジティブ・アクションとは
女性の職場におけるポジティブ・アクションは、男女雇用機会均等法を補完する形で行われます。具体的な取り組みとしては、企業が女性の採用・昇進を積極的に進めること、育児休暇や柔軟な働き方の導入等があげられます。
ポジティブ・アクションは、単に女性を優遇するものではなく、性別に関係なく平等な機会を提供することが基本となっています。
「男女雇用機会均等法」とは?
男女雇用機会均等法(正式名称: 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)は、日本において男女が平等に雇用される機会を保障するための法律です。
1979年の第34回国連総会で採択された「女子差別撤廃条約」を受け、日本では1985年に制定され、1986年に施行されました。その後も時代の変化に合わせて複数回の改正が行われ、直近では2020年に現行の内容へ改正されています。
この法律では、雇用管理全般において、性別を理由とする差別の禁止や妊娠・出産などを理由として女性に不利益な取扱い等をすることの禁止といった内容が盛り込まれています。
ポジティブ・アクションとアファーマティブアクションの違い
アファーマティブアクション(Affirmative Action)とは、特に歴史的に差別を受けてきた人々(例えば、有色人種、女性、障害者など)が社会で公平に扱われることを目的とした施策のことです。
一方、日本でのポジティブ・アクションは、特に女性従業員が働きやすくなるような改善措置を推進するという点に特徴があります。
違いを明確にすると、アファーマティブアクションは人種や民族なども含めた幅広い差別の是正措置を指し、ポジティブ・アクションは主に男女間の雇用格差を解消する措置を指します。
ポジティブ・アクションの目的
ポジティブ・アクションの目的は、職場における性別による不平等を解消し、女性が男性と同等に活躍できる環境を整えることです。そのために、以下の取り組みを推進しています。
差別禁止・格差是正
性別による差別を禁止し、給与や昇進、管理職への登用など雇用に関するすべての場面での格差を是正します。
女性が男性と平等な機会を得られるよう、具体的な改善を進めます。
女性の活躍推進
女性が仕事と家庭を両立し、生涯にわたりキャリアを継続できる環境をつくります。そのために、出産・育児休暇やフレックスタイム、リモートワークなど、柔軟な働き方を提供すること。
また、あらゆる業種・職種で女性が能力を発揮できる職場づくりを進めることです。
ポジティブ・アクションの適用条件
ポジティブ・アクションは、性別にとらわれない公正公平な労働環境の確保を目的としています。
この目的に基づき、以下のような性別による格差がある場合に、その適用が求められます。
・企業内の女性従業員の割合が少ない
・男性管理職が多数を占めている
これらの状況では、企業は積極的に女性の雇用促進やキャリア支援を行う必要があります。
また、採用活動において男女間の事実上の格差を解消する目的で「女性歓迎」などの条件を付けて求人を行う場合、募集する職種の女性比率が4割未満であることが適用条件となります。
ポジティブ・アクションへ取り組むメリット
ポジティブ・アクションの実施は、企業と従業員の双方にとって大きなメリットをもたらします。以下にそれぞれに考えられるメリットを解説します。
企業側のメリット
女性従業員のモチベーションアップと離職の防止
性別に関わらず、評価や昇進、昇給等が公平に行われることは、女性従業員の業務に対するモチベーションアップにつながります。
加えて出産や育児休暇等、柔軟な働き方を支援するポジティブ・アクションは女性従業員の定着率を高める要因となります。
職場における支援の充実は、従業員の離職を防止し、長期的に企業の利益を支えることになります。
多様性が向上する
女性従業員の増加により、企業内の多様性が向上し、多様な視点やアイデアが生まれやすくなります。
これにより、問題解決能力の向上やイノベーションの促進が期待され、企業の競争力が高まります。
企業イメージの向上
ポジティブ・アクションに積極的に取り組む企業は、社会的責任を果たしていると評価され、社会的な信頼や企業イメージの向上につながります。また、求職者にとって魅力的な企業となり、優秀な人材の確保にも貢献します。
ポジティブ・アクションの推進は、単なる法令遵守にとどまらず、企業の成長戦略としても重要な役割を果たします。
従業員側のメリット
性別にとらわれない平等な待遇が確保される
ポジティブ・アクションの取り組みにより、評価や昇進、昇給における性別による不公平が解消されます。
能力や成果に応じた公平な待遇が確保され、性別に関係なくキャリアを築きやすくなります。
ワークライフバランスの向上
フレックスタイム制やリモートワークの導入、出産・育児休暇の取得促進等により柔軟な働き方が強化されるため、ワークライフバランスが向上します。
従業員の仕事のストレスが減少し、精神的・身体的な健康が保たれやすくなります。
ポジティブ・アクションの推進は、従業員の働きやすさを向上させるとともに、企業の生産性向上にも貢献します。
ポジティブ・アクション導入への注意点
ポジティブ・アクションの取り組みは必ずしもメリットのみを生み出すものではなく、デメリットも存在します。以下に、その代表的なものを解説します。
逆差別と感じられる恐れがある
ポジティブ・アクションの取り組みにより、男性従業員が女性ばかりが優遇されていると不満を感じる恐れがあります。逆差別として受け取られ、職場内での不公平感につながる場合があります。
職場内の男女の対立につながる可能性がある
さらに、職場内に不公平感が生じることで、企業の中で男女の対立を生むケースが見られます。男性従業員がポジティブ・アクションを不公平だと感じ、性別に基づく意識の対立が生じた企業例もあります。
対立が職場の雰囲気を悪化させるなどした結果、業務の生産効率が低下する可能性が考えられます。
ポジティブ・アクションの施策例
ポジティブ・アクションの施策として考えられる例を以下に解説します。
女性従業員の採用を促進するための施策
企業内の従業員の男女比率を均等にするため、採用時に女性採用枠を設けたり、女性求職者対象の説明会を実施する等し、女性従業員の採用数を増加させる
女性管理職の登用
管理職における女性従業員の割合を向上させるため、女性専用のリーダーシップ研修等のキャリアサポートを行い、性別に関係なく能力を発揮できる環境を作る
フレックスタイム制度の導入やリモートワークの推進
時間や場所に制限されず、育児や家庭の事情に合わせて柔軟に働ける環境を整備し、女性の仕事と家庭の両立を支援する
出産・育児休暇取得の促進
出産や育児等のライフイベントの際も、女性が安心して就業を継続できる環境を整備するため、出産・育児休暇等の取得を促進し、復職後のサポートを充実させる。
ポジティブ・アクションの導入プロセス
企業がポジティブ・アクションを導入するための具体的なプロセスを段階的に説明します。
1. 現状の把握と問題点の洗い出し
初めに企業内の男女平等の現状を評価します。従業員の男女比率や、管理職比率、賃金の格差等について実態の把握を行います。その上で、男女間に格差がある部分や格差の内容を分析します。
2. 目標の設定
女性従業員の採用促進や女性管理職数の割合を増加させる等、企業として達成したい目標を設定します。例として、3年後までに企業内の女性管理職の比率を10%から30%に引き上げる等、抽象的でなく、具体的な数値目標や達成までの期限を設定することがポイントです。
また、目標のための段階的な取り組みを計画し、スケジューリングすることも重要です。
3. 施策の実施
設定した目標を全従業員に周知し、達成に向けて取り組みを実施します。
4. 評価と改善
設定した目標に対し、ポジティブ・アクションの施策がどの程度効果を上げているかを評価します。目標値を達成できている場合は取り組みを継続し、満たない場合は施策を改善・修正します。
ポジティブ・アクションは一度の施策の実施で簡単に定着するものではありません。改善し継続していくことで、性別に関係なく能力を発揮できる職場環境が持続的に維持されます。
ポジティブ・アクションに関するよくある質問
ポジティブ・アクションと差別の違いは?
ポジティブ・アクションは、社会の中で不平等な扱いを受けているグループに対して平等な機会を提供し、社会的な活躍を促進することを目的としています。一方、差別は特定のグループや個人に対して不公平な取り扱いを行い、不平等の維持や拡大をはかることを目的としています。
差別は結果的に特定のグループが不利な立場に置かれ、疎外されることになります。ポジティブ・アクションは平等の実現を目的としているため、すべての人に対して平等な機会が提供される社会をゴールとする点に違いがあります。
まとめ
企業におけるポジティブ・アクションについて解説してきました。ポジティブ・アクションは女性従業員の活躍を推進し、職場での平等を実現するために重要な取り組みです。
企業が積極的に施策を導入することにより、女性が平等に活躍できる環境が整い、より多様で生産的な職場が実現され、長期的には企業の持続的な繁栄にもつながります。この記事を参考に、ぜひポジティブ・アクションの取り組みを効果的に実施してみてください。