ストレスチェック制度とは義務?罰則や対象の補助金について、導入時の注意点や手順も紹介
2024/02/09
ストレスチェック制度とは
ストレスチェック制度とは、労働者がメンタルヘルスの不調になることを未然に防止するために2015年に義務化された制度です。
厚生労働省の労働安全衛生調査によりますと、2021年11月から2022年10月までの1年間で、メンタルヘルスの不調により1か月以上連続で休業した労働者、または退職者がいた事業所の割合は13.3%にも上っており、労働者の状況把握に対する重要度が増しています。
ストレスチェック制度の概要
ストレスチェックとは、日々の業務や生活上で感じていることや体調などに関する質問に労働者が回答してもらい、それを集計・分析することで、労働者のストレスの状態を可視化する検査のことを指しています。
常時使用する労働者が50人以上の事業場では毎年1回以上、ストレスチェックを労働者に対して実施することが義務付けられています。
目的
ストレスチェック制度は、個人には結果をフィードバックすることでストレスの状況について自らの気付きを促すこと、企業には検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげることに導くことを目的にしています。
尚、ストレスチェックを受検するか否かは労働者本人の意思で決めることであり、強制してはいけません。
対象者・非対象者
厚生労働省はストレスチェック対象者を以下の通りで定めています。
期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。
その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
2の条件にはパートやアルバイトなどの直接雇用の労働者が含まれます。
また、派遣労働者へのストレスチェックは、派遣元事業者が実施しなければなりません。
項目数
ストレスチェックには、80項目・57項目・23項目の3種類があります。23項目版では「上司」「同僚」の2項目について、57項目版と80項目版で「配偶者、家族、友人等」が追加されます。
ここでは具体的にそれぞれの特徴について解説いたします。
57項目版
厚生労働省が推奨しているのは57項目版です。一般的には「職業性ストレス簡易調査票」と呼ばれています。5分程度で回答できるので、従業員が仕事の合間に手軽に実施できることが特徴です。
23項目版
23項目版は、57項目版ストレスチェックを簡略化したものです。質問数が少ないため、回答からストレスの原因や社内の問題点を分析することは難しいです。
一方で、受験を辞退する人を減らす効果が期待できます。まずは全体の状況把握をしたいという場合には効果的です。
80項目版
80項目版は、自らが行っている仕事に対するストレスに加え、上司や経営陣との信頼関係やリーダーシップの有無、人事評価の公正さ、職場でのハラスメント、仕事に対する役割の明確さや働きがいなどについても把握することができます。
質問数が多いので回答するのに10分程度の時間を要します。また、部署や課など、一定のグループの状況を調査する「集団分析」により、より詳細なデータを測定することができます。
実施頻度
ストレスチェックは1年以内の間に1回、実施することが義務付けされています。労使間での合意があれば、1年に複数回実施することも可能です。その場合、労働基準監督署への報告は年1回の報告で問題ありません。
実施者
ストレスチェックを実施する人は、下記4つの役割に分けられます。
- 事業者
ストレスチェック制度の実施責任があり、方針・決定・発表を行う運営者です
- ストレスチェック制度担当者
各事業場にはストレスチェック制度の担当者を置くことが義務付けられています
- 実施者(産業医など)
医師、保健師、労働大臣が定める研修を修了した看護師、公認心理師など
- 実施事務従事者
実施者の指示を受け、調査票の回収・集計のデータ入力などを行う補助者
実施事務従事者は労働者の個人情報にふれる場合があるため、人事権を有する人は、実施事務従事者になることはできません。
ストレスチェック義務化の対象企業
ストレスチェックは、2014年の労働安全衛生法66条の10が改正されたことにより、2015年から義務化されました。
対象事業所の条件
ストレスチェックは、事業場の法人格を問われず、常時50人以上の従業員を雇用している全事業場が対象となっています。
同じ会社であっても、支店、支社、店舗ごとに1事業場とカウントします。
実施しなければ罰則はある?
ストレスチェック制度は、労働者に対して受検のするか否かの自由を与えているため、結果として実施しなくても罰則規程はありません。
しかし、労働基準監督署に状況報告を行っていない場合は労働安全衛生法第120条により、50万円の罰金が課せられます。
ストレスチェックの実施手順
ストレスチェックは調査するだけでなく、結果を分析し、職場環境の改善につなげていく必要があるため、事前準備が重要です。
ここでは、実施手順や注意点などについてご紹介します。
導入準備
ストレスチェックを導入する前に、「メンタルヘルス不調の発症を未然に防ぐために、ストレスチェックを実施する」といったような会社方針を労働者に対して明示して、実施方法などを説明する必要があります。
実施者などの選定
ストレスチェックを行うためには「ストレスチェック制度担当者」「実施者(産業医など)」「実施事務従事者」を選定しなければなりません。
中でも「実施者」は、ストレスチェックの結果を踏まえて、医師による指導が必要か否かを判断する役割を担うため、下記の条件を満たす人でなければなりません。
・医師
・保健師
・厚生労働大臣が定めた、検査を行うために必要な知識について研修を修了した歯科医師、看護師・精神保健福祉士・公認心理師。
選定方法
回収した調査票をもとに、実施者はストレスの程度評価を行ないます。
そして、既にメンタルヘルスが不調であると自覚している労働者であったり、ストレスが生まれている原因に対して周囲の対応状況が悪いと認められる労働者は、高ストレス者として選定します。
ストレスチェック実施上の注意点
メンタルヘルス不調の発症を未然に防ぐためとはいえ、労働者の個人情報にまで踏み込んで、精神状態まで把握するという行為は、とてもセンシティブな問題です。
ここではストレスチェックを実施する上での注意点について詳しく解説します。
個人情報の漏洩に気をつける
個人情報が保護されるという保証がなければ、受検を辞退する労働者が増えてしまいます。従って厳重に管理することが求められます。
また、受検結果は、労働者の同意なくして実施者から事業者へ提供することは出来ません。それは、個人を特定することができない方法で行う集団分析の結果であったとしても、事業場内で無制限に共有するべきではないと考えられています。
高ストレス者へ面接指導をおこなう
高ストレス者と選定された労働者から面接を受けたい旨の申し出があった場合、産業医などの医師による面接指導を実施することは事業者の義務です。
そして、面接指導の結果を基に医師の見解を仰ぎ、症状によっては就業上の措置を講じなければなりません。
労働者にとって不利益な扱いはNG
面接指導を実施した医師は、聴取した内容の中で労働者が安全に働くためや、健康維持のために事業者に伝えるべきだと判断した情報については、本人の許可がなくても事業者に提供することができます。
しかし、目的は事業者が適切な措置を講じるためであり、労働者を評価したりする為ではありません。医師は事業者に対して見解を報告する際には、労働者本人が「就業上の措置を希望しているか」といった意向を確認するなど、充分な配慮が必要です。
職場環境改善へ継続的に努める
ストレスチェック制度は、メンタルヘルスの不調を未然に防ぐためであり、事業場や部署単位で集計・分析するのは問題の発生原因を明らかにするためです。
米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、職場環境等の改善を通じたストレス対策のポイントとして、下記の内容を示しています。
- 過大あるいは過小な仕事量を避け、仕事量に合わせた作業ペースの調整ができること
- 労働者の社会生活に合わせて勤務形態の配慮がなされていること
- 仕事の役割や責任が明確であること
- 仕事の将来や昇進・昇級の機会が明確であること
- 職場でよい人間関係が保たれていること
- 仕事の意義が明確にされ、やる気を刺激し、労働者の技術を活用するようにデザインされること
- 職場での意思決定への参加の機会があること
厚生労働省でも、職場環境改善ツールを広く開示しています。
ストレスチェック助成金が廃止になる!?
独立行政法人労働者健康安全機構は2022年度に産業保健関係助成金の撤廃を発表しました。
ストレスチェックに活用できる助成金
2022年度に廃止された助成金制度に代わって、新設された助成金がありますので、詳しくご紹介いたします。
団体経由産業保健活動推進助成金
団体経由産業保健活動推進助成金は、小規模事業場等の産業保健活動の支援を行うために新設されました。事業者団体等を対象に、産業保健活動費用の4/5(上限100万円)が助成されます。
支給条件
廃止された助成金との違いは、事業所ごとの申請ではなく、商工会や同業組合などの小規模事業場の活動を支援する事業者団体が申請を行う点です。
具体的なサービス内容については下記をご参照ください。
https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/sanpo/sanpojoseikin/R4/dantai/org_josei_tebiki_R4.pdf
助成金の相談は「サプナ社会保険労務士法人」へ
サプナ社会保険労務士法人では、中小企業が組織的にストレスチェックに取り組むことで、継続的な事業成長につながるようなサポートを行っています。
オンラインによる無料相談サービスを実施していますので、専用メールフォームにてご連絡ください。
原則、3営業日以内にプロの見識をもって丁寧に返信させていただきます。
まとめ
これから本格的な少子高齢化社会となる日本では、人材の確保のために、安心して働ける職場を維持することは必須事項です。
義務だからストレスチェックを行うのではなく、積極的な業務改善を行うために、効果的にストレスチェック制度を活用するようにしましょう。