ワークライフインテグレーションとは?導入メリットデメリット・企業事例をわかりやすく解説
2024/09/06
労働人口が減少することが課題となっている中で、従業員が働きやすい環境を整える考え方が注目されています。
なかでも「ワーク・ライフ・インテグレーション」が注目されており、これは仕事とプライベートの両方を充実させることを目指す考え方です。
そこで本記事では、「ワーク・ライフ・インテグレーションの考え方」や、「導入のメリット・デメリット」、「導入方法」などを詳しく解説します。
是非、最後までお読みください。
ワーク・ライフ・インテグレーションの意味
ワーク・ライフ・インテグレーションとは、「仕事(ワーク)」と「プライベート(ライフ)」を「統合する(インテグレーション」ことを指します。
仕事とプライベートを切り離した考えではなく、統合して考えることで、仕事とプライベートの両方を充実させることを目指す考え方です。
働き方改革の注目により、ワーク・ライフ・インテグレーションを取り入れる企業が増えました。
「ワーク・ライフ・バランス」と違い
「ワーク・ライフ・インテグレーション」と似た考え方として、「ワーク・ライフ・バランス」があります。
ワーク・ライフ・バランスの考え方は、仕事とプライベートを切り離して、仕事以外を充実させることで豊かな人生を送ろうとするものです。例えば、ワーク・ライフ・バランスの考えで子育てを考えると、「子どもとの時間を過ごすために定時で仕事を終わらせる」というように子どもとの時間と仕事を線引きして、それぞれのバランスを保とうとします。
つまり、仕事もプライベートの生活の一部であり、両方が充実することで人生を豊かにするという考えの「ワーク・ライフ・インテグレーション」とは、仕事とプライベートを切り離して考えるところが異なります。
ワーク・ライフ・インテグレーションが注目される理由
ワーク・ライフ・インテグレーションが注目されるようになった理由を、2点ご紹介しましょう。
1、労働人口の減少
少子高齢化により人口は減少し、それに伴って労働人口も減少しています。企業は人材確保に苦戦しており、さらに優秀な人材の確保となるとさらに困難な状況です。そのため、従業員が働きやすい環境を整えることで人材を確保する必要性が高まりました。
2、働き方の多様化
厚生労働省が2019年に働き方改革に関する方法を発表し、多くの企業で働き方を見直すようになりました。例えば、フレックスタイム制などでプライベートによって働く時間を変更できる制度が導入されています。また在宅勤務を可能とする企業もあり、働く場所をオフィスだけに固定するのではなく、自宅でも働けるようになりました。
3、共働き世帯の増加
従来の働き方は、妻は専業主婦で家庭を守るのを良しとするものでしたが、価値観が変化した近年では共働き世帯が増加しています。しかし、地域や家庭では、性別の役割分業が残っています。例えば、夫婦ともに働いているにも関わらず、子供が風邪をひいて看病をするのは母親がメインになっている家庭が多くあります。
このような性別の役割分業により、仕事との両立に問題を抱えている人が多くいるため、ワーク・ライフ・インテグレーションにもとづく働き方が注目されるようになりました。
【企業】ワーク・ライフ・インテグレーションのメリット
ワーク・ライフ・インテグレーションを導入すると、企業にどのようなメリットがあるのでしょうか。以下に説明していきましょう。
1、企業の生産性を向上できる
ワーク・ライフ・インテグレーションは仕事とプライベートの双方の充実を図る考え方のため、従業員のモチベーションを向上させることが可能です。従業員のモチベーションを向上させることができれば、企業の生産性の向上を期待できるでしょう。
2、優秀な人材の離職を防止できる
在宅勤務やテレワークなど多様な働き方を実現できると、子供の育児や親の介護が必要な従業員でも仕事をしながら働き続けることができます。従来の働き方では、離職せざるを得なかった人材でも働き続けられるため、優秀な人材の離職を防止できるでしょう。
3、社会的評価が向上する
多種多様な働き方ができる企業は、会社の社会的評価は集まり、注目度も高まるでしょう。企業価値の向上により、優秀な人材の確保にもつながります。
【従業員】ワーク・ライフ・インテグレーションのメリット
ワーク・ライフ・インテグレーションを導入すると、従業員にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
以下に説明していきましょう。
1、充実した働き方ができる
ワーク・ライフ・インテグレーションは、仕事とプライベートの両方が充実することを目的とするため、充実した働き方ができます。子育てや介護でキャリアを断念することなく、ライフステージに合わせた働き方をできるようになり、仕事への満足度が向上するでしょう。
2、スキルアップができる
仕事のためにプライベートを犠牲にすることがなくなることで、プライベートの時間を確保しつつ充実した働き方ができます。確保できたプライベートの時間で勉強したり趣味に没頭することで、自己を成長させることも可能です。プライベートの中から得た知識や経験を仕事に活かすことができ、日々の生活の中でもスキルアップが期待できるでしょう。
3、過度な業務負荷が軽減される
プライベートと仕事とのバランスを保つためには、業務負荷は適正である必要があります。そのためワーク・ライフ・インテグレーションを導入された企業の従業員は、過度な業務負荷は軽減されるメリットが期待できるでしょう。
ワーク・ライフ・インテグレーションのデメリット
ここまでは、ワーク・ライフ・インテグレーションのメリットをご紹介しましたが、いっぽうでデメリットもあります。以下に説明していきましょう。
1、マネジメントが難しい
新しい働き方が導入されると、従来のマネジメントのやり方では適切な事業管理ができなくなる可能性があります。
例えば、在宅勤務が導入された職場の場合、マネジメント層は業務時間の管理や業務の管理を目視で管理することはできません。そのため、「業務開始時間は報告すること」「業務開始前には業務内容を報告すること」などの在宅勤務を実施するときの業務管理の方法を考えていく必要があります。
2、全ての職種で導入することは難しい
ワーク・ライフ・インテグレーションの制度を全職種・全部署で実施することが理想です。しかし、現実問題として難しい場合があります。
例えば製造業の場合、経理などの事務職の在宅勤務は可能ですが、工場の製造現場の従業員を在宅勤務にすることはできません。このように制度の活用が難しい職種がある場合には、検討が必要となります。
ワーク・ライフ・インテグレーションの注意点
ワーク・ライフ・インテグレーションの制度導入は、従業員の理解を得ることが大切です。制度導入により、働き方の自由度が増すため、従業員は自分自身の業務を管理するスキルが求められます。
そのためには、従業員に制度のメリットや考え方、仕事の進め方などを正しく理解してもらって、働き方を変えなければいけません。
そのためにワーク・ライフ・インテグレーションの社内研修を実施したり、すでに導入している企業の事例を学ぶことも効果的です。
ワーク・ライフ・インテグレーションの導入ポイント
ワーク・ライフ・インテグレーションの制度導入に際して、企業側と従業員がそれぞれ注意すべきポイントを解説します。
企業側
1、ITツールを整備する
在宅勤務など多様な働き方を実現するための環境整備が必要です。例えば、自宅からでも社内システムにアクセスできるようインフラを整備する、ウイルス対策がしっかり施されているPCを従業員に貸与するなどを準備しましょう。
2、制度の定期見直しを行う
制度の導入後は、課題の有無を調査し、課題があれば制度の見直しが必要です。
例えば、自宅で仕事をする在宅勤務制度は、通勤時間を省けたり、自室で仕事に没頭できたりするメリットがあります。その反面、時間のメリハリをつけづらいデメリットもあります。仕事に没頭して休憩を取らず、体調を崩す従業員もいます。
「勤務時間と休憩時間を上長に報告することで、業務にメリハリをつける」「在宅勤務は、週二日を上限とする」など、制度の見直しが大切です。
従業員側(個人)
1、業務の見直しを徹底する
従業員は今までの業務の見直しを行うことが大切です。例えば、今まで1時間かけて業務報告書を作成していた場合、「業務の品質は維持したままで、30分で業務報告書を完成させることはできないか」と業務のムダを省いて効率化できるところはないかを考えるために業務の見直しを行いましょう。
2、自主性をもつ
自由な働き方を行う場合には、マネジメント層は業務のやり方を細かく管理したり、業務の進捗管理を細かくチェックしたりすることが難しくなります。つまり、従業員は「自主性をもって自分で考えて行動すること」が求められます。
ワーク・ライフ・インテグレーションの導入方法
ワーク・ライフ・インテグレーションは、以下のような流れで導入していきましょう。
1、従業員に制度の目的・内容を理解してもらう
今までの働き方や仕事への考え方を大きく変える必要があります。そのため、制度の目的や内容を全社員が理解する必要があります。セミナーや説明会を実施により理解してもらうと良いでしょう。
2、制度を利用しやすい雰囲気を作る
制度があっても利用されなくては意味がありません。経営層が積極的に制度を利用するなど、利用しやすい雰囲気作りが必要です。
3、ITツールなどを整備する
制度を利用できるように環境整備(ITツール)を準備しましょう。
4、制度を導入し、定期的な見直しを行う
実際に制度を開始した後は、制度の見直しを行いましょう。
企業がすべき「ワーク・ライフ・インテグレーション」への課題
従来の働き方は、就業時間が固定化されて働く場所も決まっていました。
しかしワーク・ライフ・インテグレーションのように自由度の高い働き方では、上司と部下が同じ場所で働く機会は減るため従業員の業務管理や勤務態度をどのように管理していくかが問題となります。
目標設定や評価プロセスを可視化する新しい人事評価プロセスを検討し、従業員が納得する公正な評価制度の構築が必要です。
ワーク・ライフ・インテグレーションの導入事例
ワーク・ライフ・インテグレーションの導入事例を2つ紹介します。
1、オリンパス株式会社
オリンパス株式会社では、 従業員に育児や介護などの事情があっても、能⼒を存分に発揮し、積極的にキャリアを継続できる 環境を整備するために、ワーク・ライフ・インテグレーションの取り組みが推進されています。
「在宅勤務制度」「リエントリー制度」「役割フレックス制度」「労働時間短縮制度」などの数種類の制度が導入されています。
参考:コーポレートガバナンス報告書 (olympus.co.jp)
2、日本IBM
日本IBMでは、1999年に「e-ワーク制度」というテレワークの制度の先駆けとして開始しました。これは子育てをする女性従業員の意見で作られた制度です。他にも、「介護休暇」「看護休暇」「短時間勤務制度」など仕事と家庭生活を両立するための制度が設定されています。
参考:IBM ダイバーシティー&インクルージョン - Japan
まとめ
本記事では、仕事とプライベートの両方を充実させることを目指す「ワーク・ライフ・インテグレーション」について、詳しく解説しました。
この制度は、以下のようなメリットがあります。
1、企業の生産性を向上できる
2、優秀な人材の離職を防止できる
3、社会的評価が向上する
その反面、ワーク・ライフ・インテグレーションのような自由度の高い働き方では上司と部下が同じ場所で働く機会は減るため、従業員が納得する公正な評価制度の構築が必要です。
サプナ社会保険労務士法人では人事制度を構築するサポートも行っているため、「どのように公正な評価制度を構築すればよいのか」とお困りの方は、是非お問い合わせください。