就業規則とは【社労士監修】記載事項3つと作成手順、注意点、よくある質問をご紹介します
2024/12/20
「就業規則」とは、企業(使用者)が従業員の賃金や労働時間といった労働条件、職場でのルールを文書化したものです。これには労働時間、給与、休日、退職、懲戒処分など、従業員の権利や守るべき規律が記載されています。
従業員が常時10人以上いる事業場では労働基準法に基づいて就業規則を作成し、管轄の労働基準監督署に届け出る義務があります。従業員と企業(使用者)双方の権利や義務を明確にし、職場におけるトラブルを防ぐための重要な役割を果たす就業規則。
この記事では就業規則の概要や作成する際のメリットや注意点、具体的な作成方法などについて詳しく解説していきます。
就業規則とは
就業規則は、労働基準法に基づき従業員の労働条件や職場の基本的なルールを定めたものです。就業規則には、労働時間、給与、休日、退職など、従業員の労働条件に直接関係する事項が含まれます。
作成しない場合の罰則は?
就業規則を作成しない場合の罰則は、以下のとおり企業の従業員の人数により異なります。
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就業規則が必要な企業
常時10人以上の従業員を雇用する企業は就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る義務があります。(労働基準法第89条による)
※ここでいう「常時10人以上の従業員」にはパートタイマーや契約社員など非正規の社員も含みます
※企業全体の従業員ではなく、事業場ごとにカウントします
就業規則作成のメリット
就業規則はスムーズな企業運営を行う上で大切なツールですが、メリットはもちろん、運用方法によっては思わぬ労力やコストが生じる可能性もあります。まずこちらでは、就業規則作成のメリットをそれぞれ解説します。
労働条件を明確化できる
労働時間、給与、休日などを明確に規定することができ、公平で透明性のある労働環境が構築できます。さらに、労働条件を明確化することは、労使間のトラブルを防止し、従業員が安心して働ける環境作りの基盤となります。
コンプライアンスの推進
労働基準法に準じた内容を規定することで、企業が法的トラブルを起こすリスクを減らすことができ、コンプライアンスの推進につながります。
雇用関係の助成金申請ができる
雇用に関する助成金の申請には就業規則の運用が条件の一つとなっているケースが多くあります。あらかじめ就業規則を作成しておくことで、これらの助成金の申請が可能になります。
就業規則作成の注意点
就業規則の作成には、労力とコストがかかります。社内で作成する場合は人員と労力、社外に相談する場合は法的な知識を持つ専門家のアドバイスを受ける必要があるなどコスト負担が必要となります。
就業規則の記載事項
就業規則の記載事項は、「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」「任意記載事項」の3つに分類されます。それぞれの内容について以下に解説します。
絶対的必要記載事項
絶対的必要記載事項は就業規則へ必ず記載が必要な項目です。以下の3つが該当します。
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相対的必要記載事項
相対的必要記載事項は、制度を設けていない企業においては記載する必要はありませんが、一定の制度を設けている場合は記載しなければならない項目です。
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任意的記載事項
「任意的記載事項」とは、就業規則への記載が任意である項目です。例として下記の項目があげられます。
・福利厚生についての事柄
・社内での服装についての事柄
・副業についての事柄
・企業理念
就業規則の作成手順
ここからは就業規則の作成手順について解説します。労働基準法に基づいて、労働条件や労使双方の権利や義務を明確に規定することが大切です。既に就業規則を作成済みの事業場で内容を変更する場合も同じ手順になります。
1.原案を作成する
労働基準法をもとに就業規則の原案を作成します。絶対的必要記載事項は漏れなく盛り込むように注意します。
※厚生労働省のホームページでは、モデル就業規則を掲載しています。こちらを参考にするとスムーズに作成できるでしょう。
2.過半数労働組合・代表者へヒアリング
作成した原案について、過半数労働組合(事業場のすべての労働者のうち、過半数が加入している労働組合)または労働組合がない場合、その企業で働く全ての労働者の過半数を代表する方(企業(使用者)から指名されたり、使用者と一体的は経営側の立場でない方)を挙手や投票などで選び、意見聴取を行います。
3.過半数労働組合・代表者からの意見書を受理
原案作成者(使用者)は、労働者代表からの意見をまとめ記載された意見書を受理します。
4.就業規則の届け出と周知
作成した就業規則、就業規則(変更)届、意見書をあわせて事業所管轄の労働基準監督署に提出します。また届け出た就業規則の内容を、従業員に文書や社内イントラネットなどを用いて周知します。
就業規則の改定ポイント
労働環境や法令の変更があった際、就業規則の改定が必要な場合があります。ここでは、就業規則の改定が必要なケースや改定の進め方について解説します。
法改正への対応
労働基準法やその他の労働関連法規が改正された場合、就業規則も法的要件を満たす内容に改定が必要となります。
企業の実情反映
勤務時間や賃金の変更、リモートワークの導入など働き方や労働環境が変化する場合、就業規則も改定が必要です。
従業員へのヒアリング&意見書の受理
就業規則を初めて作成した際と同様、作成した変更案について、過半数労働組合または労働者の過半数を代表する者に意見聴取を行い、労働者代表からの意見をまとめ記載された意見書を受理します。
就業規則の届け出と周知
作成した就業規則、就業規則変更届、意見書をあわせて事業所管轄の労働基準監督署に提出します。
就業規則の届け出と周知の徹底
作成した就業規則、就業規則変更届、意見書をあわせて事業所管轄の労働基準監督署に提出します。また変更した内容について、社内文書やイントラネットなどを用いて従業員に周知を徹底します。
規定内容の明確化
労使間のトラブルを防止し労働条件を全従業員に公平に適用するために、規定内容を曖昧にせず明確かつ具体的に規定します。
就業規則見直し時の注意点
就業規則を見直す際、不適切な変更はトラブルを引き起こす可能性があるため、以下の注意点を押さえて進めることが重要です。
労働基準法や労働契約法との整合性
最新の法改正を確認し照らし合わせた上で、整合性の取れない規定は削除し、法令に準拠する内容に変更します。
不利益変更に注意する
賃金削減や労働時間の増加など、従業員の不利益に成り得る変更については、経営状況の改善に必要であると説明できる合理的理由が必要です。また、従業員に充分な説明を行うことも必要となります。
就業規則のよくある質問
ここからは、就業規則についてよくある質問とその回答をご紹介します。
企業規模に関わらず規則は必要?
常時10人以上の従業員を雇用している企業には就業規則の作成と届出が義務付けられています。10人未満の規模の企業においては法的義務はありませんが、労働環境を明確化し労使間のトラブルを未然に防ぐため、就業規則を持つことが厚生労働省により推奨されています。
改定する頻度は?
改定頻度について法的な定めはありません。一般的に下記の事柄が発生した場合に改定が必要となります。下記の事柄がない場合も、1年~2年に一度、企業実情と規程が合っているかの確認を推奨します。
・法改正
・社会情勢や働き方の変化が生じた場合
・企業の方針に変更が生じた場合
従業員が反対した場合は?
就業規則の作成または改定を行う際、企業は従業員代表の意見を聴取することが義務付けられていますが、従業員代表が反対意見を出した場合でも、法的にはその意見に従う義務はありません。
ただし、労働条件の不利益な変更となる改定について変更後の就業規則の周知が適切でなく、就業規則の変更の合理性、必要性がない場合は無効となることがあります。
個別契約との違いは?
就業規則は全従業員に適用される労働条件や共通の規則です。個別契約はその下で従業員一人ひとりの労働条件を定めるもので、その内容は個人にのみ適用されます。
就業規則、個別契約のいずれも労働基準法などの法令に準拠した内容である場合、従業員に有利な条件の方が優先されます。
まとめ
ここまで就業規則について解説してきました。会社の新設や従業員の増加により、新しく就業規則を作成する場合、すすめ方が分からずとまどってしまうことがあるかもしれません。
間違いなく資料作成を行い、スムーズに就業規則の制定を行うためには正しい知識が必要です。就業規則の制定のすすめ方に不安がある方は、ぜひ一度プロのアドバイスを受けられることをおすすめします!
サプナ社会保険労務士法人は、就業規則に関する充分な知識と豊かな案件対応実績を併せ持つスタッフが在籍しております。安心して間違いのない就業規則の制定を行えるよう、相談者様をサポートいたします。
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参考:
e-Gov法令検索サービス.”労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)”,
厚生労働省.”モデル就業規則について”,