フリーランス新法で新たに企業に求められるもの
2024/02/29
2023年5月12日に「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(以下「フリーランス新法」)が公布されました。施行日はまだ決定していませんが、新しく公布された法律は1年6ヶ月以内に施行が決められていますので、2024年秋には施行されるでしょう。
働き方が多様になっている昨今、個人事業主(フリーランス)として働くという選択をする方が増えています。しかしフリーランスは企業に雇用されているのではないため、労働基準法の適用を受けることが出来ません。そのため、弱い立場になってしまうことも少なくなく、この働き方を選ぶ人が増えると同じく、トラブルの例も増えています。
そこでこのフリーランス新法では、「フリーランスの方が安心して働ける環境を整備」するため、
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・フリーランスの方と企業などの発注事業者の間の取引の適正化
・フリーランスの方の就業環境の整備
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を図ることが目的とされています。
なおこの法律におけるフリーランスとは「業務委託の相手方であり、従業員を使用しないもの」つまり単独(ひとり)で業務委託を受ける方をいいます。フリーランスで働いていても、従業員を使用している場合は対象にはなりません。
企業が守るべきルールとはどういうものか
今回のフリーランス新法の施行後、企業が守るべきルールは以下の通りです。
1.書面等による取引条件の明示
企業が業務委託を発注する際は、書面等による「委託する業務の内容」「報酬の額」「支払期日」等の取引条件を明示しなくてはなりません。「いつもと同じでお願いします」のような口約束、口頭での発注は出来ません。
2.報酬支払期日の設定・期日内の支払
発注した物品などの成果物を受け取った日から数えて60日以内の報酬支払期日を設定し、期日内に報酬を支払うことが義務づけられます。
3.禁止事項
発注した事業者は、フリーランス側に責任がないにも関わらず、「発注した物品等を受け取らない」や「発注時に決めた報酬額を後になって減額する」、「発注した物品等を受け取った後に返品をする」等の法律に定められた行為をすることが禁じられます。
4.募集情報の的確表示
広告などにフリーランスの募集に関する情報を掲載する際には、「虚偽の表示や誤解を与える表示をしてはならない」「内容を正確かつ最新のものに保たなければならない」ことの2つが義務づけられます。
5.育児介護等と業務の両立に対する配慮
発注した事業者はフリーランスの方が、育児や介護などと業務を両立できるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければならないという努力義務が課せられます。たとえば、時短勤務の設定やオンラインでの業務を許可する、また検診等を受診する時間の確保などです。
6.ハラスメント対策に係る体制整備
発注する事業者には、フリーランスの方に対するハラスメント行為に関する相談対応のための体制整備などの措置を講ずるなどの配慮が求められます。従業員に対してハラスメント防止のための研修、または相談窓口、相談担当者を決める、などです。
7.中途解除等の事前予告・理由の開示
業務委託契約を途中で解除したり、更新しないこととしたりする場合は、原則として30日前までに予告をしなければならないという予告義務が発生します。
もしこれらの7つのルールに違反をしたことが発覚すると、公正取引委員会、中小企業庁長官、厚生労働大臣が違反事業者に対して、助言、指導や立ち入り検査、勧告など行政指導の対象となります。またさらに違反を重ねたり、検査を拒否した場合は50万円以下の罰金に処せられるおそれもあります。この罰金は法人だけでなく、実際に違反を行った行為者にも科せられる両罰規定となっています。
フリーランスの方に業務を依頼することがある企業は早めの準備を
フリーランスという働き方を選ぶ方は、この先も増えることが予想され、人材の需要も高まっています。
フリーランスの方に安心して働くことが出来る環境を整え、充分にスキルを発揮してもらい、お互いが気持ちよく仕事に取り組むことが出来るように、今から準備をしておきましょう。