働きやすい環境づくり~不妊治療と仕事の両立支援②
2022/05/25
2022年4月から人工授精等の「一般不妊治療」、体外受精・顕微授精等の「生殖補助医療」について、範囲を拡大し、保険適用されることとなりました。企業においてはこのような制度の後押しもきっかけとなり、改めて社員が働きやすい環境づくりをすすめていく必要性が高まってきたといえるでしょう。
厚生労働省:令和4年4月から、不妊治療が保険適用されます。(リーフレット)
では具体的に企業は不妊治療と仕事を両立しようとしている社員に対して、どのように寄り添っていくことができるのでしょうか。2017年に厚生労働省が実施した調査では、不妊治療をしている(または予定している)労働者の中で、利用した(または利用しようとしている)制度は、「年次有給休暇」が最も多く、次いで「柔軟な勤務を可能とする制度(勤務時間、 勤務場所)」「休職制度」となっています。
引用先:厚生労働省 不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル
また不妊治療をしている(または予定している)労働者が会社や組織等に希望することとして、「不妊治療のための休暇制度」や「柔軟な勤務を可能とする制度(勤務時間、勤務場所)」「有給休暇を時間単位で取得できる制度」が多く挙げられています。その他に「有給休暇など現状ある制度を取りやすい環境づくり」や「上司・同僚の理解を深めるための研修」といった声もありました。
会社側としてまず現在ある制度の見直しからはじめましょう
企業側が、不妊治療を受けながら仕事も続けてもらいたいと考えている場合、安心して働き続けられるような職場環境の整備は欠かせません。上記のように不妊治療に取り組む方が、会社側に望むことは「不妊治療のために休める制度」「柔軟な働き方を可能とする制度」「有給休暇を時間単位で取得できる制度」にわけられます。
ひとつめの「不妊治療のために休める制度」については一部の企業では不妊治療のための休暇制度を導入しています。たとえば有給休暇の失効分を積み立てておくことができ、不妊治療はもちろん、疾病や育児、介護にも利用出来たりする制度などです。不妊治療に限らず、様々な病気の治療をしながら仕事を続けている人もたくさんいます。多目的な利用用途で利用できる制度を検討したいところです。
ふたつめの「柔軟な働き方を可能とする制度」については、フレックスタイム制があてはまります。すでに導入している会社も多くあるでしょう。フレックスタイム制度は自分で始業・終業時刻を決めることができ、月で総労働時間が決まっているため、日によって従業員自身で働く時間を決められます。そのため、不妊治療で通院の予定がある日には短い労働時間にして、通院日でない日には長く働くといった調整が可能になります。
そして「有給休暇を時間単位で取得できる制度」有給休暇であれば利用目的を問わず取得することが出来ます。これが時間単位でいつでも利用できるようになれば、より柔軟な働き方が出来るのではないでしょうか。
上記の取り組みの例は、就業規則の改定や制度規定の準備が必要です。有給休暇の時間単位取得については、労使協定の締結が必要となりますが、いずれも既存の制度を見直し、対象範囲を広げたりの枠組みの変更から取り掛かることが出来るのではないでしょうか。
多様な選択肢と休みやすい環境づくりを
不妊治療やその支援制度については職場での「周知」も重要になってきます。せっかく利用できる制度があっても、その存在を知らなかったら意味がありません。またその制度を利用しやすい環境づくりには、会社側の理解の促進も必要となってきます。これらを合わせて対策を講じていきましょう。