採用戦略とは【企業事例付き】立案・実施方法や成功ポイント、注意点などをわかりやすく紹介
2025/04/15
少子高齢化が進む昨今、労働力は減少を続けています。採用戦略は、企業の持続的な成長に不可欠なものとなっています。
単に求人を出すだけでなく、企業文化や現場のニーズに合った求職者を見極め、長期的な成長を見据えた採用を行うための戦略が必要です。
この記事では採用戦略の概要や、戦略に使えるフレームワーク、成功のポイントや企業事例等について解説します。
採用戦略とは
採用戦略とは、企業が優秀な人材を確保するために立てる方針や計画です。自社の現状を把握し、人材ニーズを明確化した上で、求人方法の選定や選考基準の設定、評価方法の策定を行います。
採用戦略には、入社後の教育も重要な要素となります。企業の成長や競争力向上に大きな影響を与えるため、慎重に設計する必要があります。
採用戦略が必要な理由
採用戦略が必要な理由は以下の3点です。
労働人口の減少
少子高齢化により労働人口の減少が進み、現代の採用市場は完全な売り手市場となっています。どの企業も優秀な人材の獲得を目指す中、自社のニーズに合致する優れた人材を確保するためには、戦略的な採用活動が必須となります。
物価高騰による採用コストの増加
続く物価高騰により、採用にかかるコストも増加傾向にあります。採用コストの増加は経営資源の圧迫につながり、企業の利益率低下を招く恐れがあります。
戦略的な採用活動を行うことは、リソースの最適な分配とコスト削減につながります。
採用活動の失敗を防ぐ
採用後にミスマッチが発覚し早期退職となるケースが多く見られます。自社が求める知識や経験、スキルを持つ求職者を採用ターゲットとして明確化し、自社のニーズを求職者にしっかりと伝えることが必要です。
また、採用後の教育やサポートもしっかり行うなど、戦略的なアプローチを行うことでミスマッチによる早期離職を防止することができます。
採用戦略の立て方
採用戦略を立てることで、企業の成長に必要な人材を効率的に確保し、組織の発展につなげることができます。ここでは、採用戦略の構築プロセスを 5つのステップ に分けて解説します。
Step1.自社の現状と将来のビジョンを明確化する
まず、自社の現状や今後の方向性を明確化させましょう。現在の人材状況を分析し、将来どのような人材が必要になるのかを見極めます。
自社の現状を把握する
・現在の人員体制・採用状況を確認
・既存社員のスキルセットを分析
・採用に関する課題を洗い出す
将来のビジョンを明確化する
・企業が目指す方向性を整理
・成長戦略に沿った人材の必要性を明確にする
自社の強み・弱みを分析する
・他社と比較した際の競争優位性を明確にする
・採用市場での自社のポジションを把握
これらを整理することで、どのような人材が必要なのかが具体的に見えてきます。
Step2.必要とする人材を絞り込む
次に、採用する人材の 具体的な条件や要件を絞り込みましょう。
求める人物像を定義する
・どのようなスキル・経験を持つ人材が必要か
・企業文化やチームに適した人材か
・即戦力か、長期的な育成を見据えた人材か
ターゲット層を決める
・新卒・中途・専門職など、対象とする人材の属性を決定
・業界経験者か未経験者か
・リモートワーク可能な人材か、出社が必要か
このステップでターゲットを明確にすることで、採用活動の効率を高めることができます。
Step3.採用の具体的方法を選択する
採用の成功には、適切な採用チャネルの選定は欠かせません。自社の状況に合った手法を組み合わせて活用することで、より効果的な採用が可能となるでしょう。
オンライン採用
・自社HPでの募集
・転職サイト・求人媒体の活用(リクナビ、マイナビ、ビズリーチなど)
・SNSを活用した採用(LinkedIn、Twitter、Instagramなど)
オフライン採用
・合同説明会やキャリアイベントへの参加
・大学との連携(インターンシップ・研究室訪問)
・リファラル採用(社員紹介制度)
採用コストやターゲット層に合わせて最適な手法を選びましょう。
Step4.採用活動のスケジュールを決定する
採用活動を スムーズに進めるため、以下のポイントを考慮しながらスケジュールの策定を行いましょう。
募集開始の時期を決定
・新卒採用:大学3年生のインターンシップ時期を考慮
・中途採用:繁忙期や人材流動が活発な時期を把握
採用プロセスを明確化
・書類選考、一次面接、最終面接などのフローを設定
・面接官のスケジュール確保
・内定者フォローの実施
予算とリソースの配分
・採用コストを事前に計算し、適切に予算を設定
・採用担当者の業務負担を考慮し、リソースを確保
計画的なスケジュールを組むことで、採用活動の精度を高められます。
Step5.実施
採用戦略は実行して終わりではなく、常に見直しが必要になるため、応募状況や定着率を確認し、採用方法やプロセスを改善していきましょう。
効果の高い採用チャネルにリソースを集中させ、採用後のパフォーマンスや離職率もチェック。試行錯誤を重ねながら、最適な形を探りましょう。
採用戦略に使えるフレームワーク
勘や経験だけに頼るのではなく、効果的なフレームワークを活用することで採用を成功させることへと繋がります。ここでは、実践的で役立つ採用戦略のフレームワークを紹介します。
ペルソナ分析
採用活動におけるペルソナ分析とは、理想とする候補者(ペルソナ)を設定し、その人物像に基づいて採用戦略を策定する方法です。ペルソナの設定は、年齢やスキル、職歴や仕事に対する考え方、キャリアプランなどを盛り込み、できるだけ詳しく行います。
ペルソナ分析は、採用したい人材に対して適切にアピールでき、より効果的にマッチングが行える利点があります。
4C分析
4C分析の4Cとは「Customer」「Cost」「Communication」「Convenience」の4つの頭文字です。採用活動では、Customerを【求職者】として考えます。
Costは企業にとっての採用活動にかかるコストや、求職者が企業に入社した場合の懸念点やリスクを表します。また、Convenienceは求職者が応募しやすい環境が提供できているか、Communicationは求職者が企業と連絡を取りやすいかを表します。
3つの観点から採用戦略を立てることで、企業は求職者にとって魅力的な採用活動を展開し、適切な人材を引き寄せることができます。
3C分析
3C分析は、「Customer」「Competitor」「Company」の3つの要素から成るフレームワーク。Customerは求職者、Competitorは採用競合、Companyは自社を指します。
どのようなCustomer(求職者)を求めるのかを明確化し、競合他社の採用活動や市場の採用トレンドを調査、分析します。他社が成功している点を参考にし、さらに他社との差別化をはかるべく自社の強みや魅力を打ち出していきます。
競合他社との比較により、自社の強みや企業文化を再確認できます。
SWOT分析
SWOT分析のSWOTとは「Strength」「Weakness」「Opportunity」「Threat」の4つの頭文字をとったものです。それぞれ、強み、弱み、機会、脅威を表し、企業を内部環境、外部環境両方向から分析する手法です。
SWOT分析を採用戦略に活用することで、企業は自社の強みを最大限に活かし、弱点を克服するための具体的なアクションプランを立てることができます。
ファネル分析
採用活動におけるファネル分析は、求職者が募集を目にし採用されるまでの過程をファネル(漏斗)に見立て、各段階で課題となるポイントを洗い出し対策を行う手法です。
一般的に採用におけるファネル分析は、以下の段階に別れます。
・最初の段階(求職者が採用募集を目にする)
・求職者が募集に興味を持ち、応募を検討する、企業情報を収集する
・応募する
・選考
・採用
例えば最初の段階では、求職者の目に留まりづらい、応募者が少ないといった課題が発生する可能性があります。求職者が応募を検討する段階では、他社競合との比較に負ける、自社の魅力が十分にアピールできていない等の課題が考えられます。
各段階で考えられる課題に対し事前に改善策を講じることで、効果的な採用活動を行うことができます。
TMP設計
TMP設計は「Targeting(ターゲット)」「Messaging(メッセージ)」「Processing(プロセス)」の3つの要素から成るフレームワークです。ターゲットは求職者を表し、求職者にどのようなメッセージを伝え、どのようなプロセスで採用活動を行うかを中心に採用戦略を立てます。
TMP分析を通じて、ターゲットを明確にし、ターゲットにより響くメッセージを発信し、効果的なプロセスを構築することで、効果の高い採用活動を実施できます。
5A理論
5A理論は、採用活動における求職者の行動や心理を5つの段階に分け、段階ごとに企業がどのようなアプローチをすべきかを検討するフレームワークです。5Aとは「Aware(認知)」「Appeal(魅力)」「Ask(問い合わせ)」「Action(行動)」「Advocacy(支持)」の5つの段階の頭文字をとったものです。
認知の段階では、求める人材の目に留まる募集の方法、魅力の段階では、自社の強みや働くメリットを訴えることができる方法等、段階ごとに効果的なアプローチを考えます。支持の段階では、採用後の早期離職を防ぐためのフォローや教育を検討します。
採用戦略の実施方法
ここからは採用戦略の実施における一般的なステップを解説します。
①経営計画を元に人材ニーズを明確化する
企業の中長期的経営計画を元に必要な人材を明確化します。企業が在りたい姿に向け、どの部門でどのような人材が不足しているのかを特定します。
②募集人材の具体化
募集する人材のスキルや経験、資格等、具体的な人物像を決めます。同時に対象外とすべき人物像についても定義します。
③スケジュールと募集方法の選定
採用スケジュールを決定した後、自社HPからの募集の他、求人サイトやSNS、人材紹介会社といったさまざまな募集方法の中から最適な求人方法を選定します。
④選考方法の選定
書類選考や面接、適性検査や論文といった選考方法のうち、いずれの方法を採用しどのようなプロセスを経て採用者を決定するかを決めます。求職者の能力や人物像を公正公平にはかることができるプロセスを採用します。
⑤採用後のフォロー
採用者確定後、早期に職場や業務に適応できるよう、新入社員研修やセミナー、オリエンテーションを実施します。新入社員の不安や不満を取り除き、早期離職の防止に努めます。
⑥採用活動の振り返り
実施した採用活動を振り返り、効果的だった点や問題点を洗い出します。改善や更なる効率化を目指し、次回の採用活動に活かします。
採用戦略策定の注意点
採用戦略を策定する際は以下の4点に注意して実施することで、より高い効果が期待できます。
・採用戦略は企業の中長期的な経営計画に沿い立案する
・採用戦略は自社の強み・弱みを分析し、強みを活かし、弱みを補完するための人材確保を意識し立てる
・採用戦略を立てる際は、人事関連部署のみならず、採用現場や各部署との連携をしっかりと行い進める
・採用戦略を実施する際は、一度で終了するのではなく振り返りを行い採用ノウハウを蓄積させていく
採用戦略の成功ポイント
採用戦略を立てる際は以下のポイントを押さえることで、より効果的に優れた人材を確保し、企業にとって価値のある採用活動を実現できます。
効果測定をおこなう
求人媒体ごとの応募者数や求人広告のインプレッション数、求人広告を出す前と後の応募者数の変化といった効果測定を行うことで、次回の採用戦略を立てる際、より効率的かつ効果的に進めることができます。
社内外で連携する
採用戦略は人事部門だけでなく、採用するポジションに関連する部門をはじめ各部門と連携することで、求職者に必要なスキルや理想的な人物像を明確にすることができます。また、社外の人材紹介会社、求人広告の専門会社や人事コンサル等と連携することも有効です。
これにより広範なネットワークを活用して最適な人材を見つけることができます。
採用戦略の企業事例
実際に成果を上げている企業の事例を紹介し、どのような工夫が採用活動に活かされているのかを見ていきましょう。
旭化成株式会社
経営戦略の実現に必要な人材確保に向け、採用すべき人財の質と量を、事業軸と機能軸の両面から、毎年全社的に洗い出している。採用や育成で確保できない人財は、M&Aを通じた人財獲得や、コーポレートベンチャーキャピタルや少額投資を通じた企業とのコネクション強化で対応している。
伊藤忠商事株式会社
企業価値に直結する人材戦略を整理し、戦略目標ごとに期待される成果を開示。また、少数精鋭組織での競争力向上のため、「労働生産性」を重視し、学生をはじめとする労働市場に積極的に情報を発信している。
採用戦略のよくある質問
採用戦略について、多くの企業が抱える疑問を解決するために、よくある質問とその答えをまとめました。採用活動の精度を高めるために、ぜひ参考にしてみてください。
採用戦略と採用活動の違いは?
採用戦略は、企業の未来に向けた人材の確保を見据え採用活動の方針や目標を定めるものです。一方、採用活動は採用戦略に基づいて実施する具体的な実行段階を指します。
採用戦略のKPI(指標)は何を設定すればいい?
企業の規模や業種によって異なりますが、以下を設定するのが一般的です。
・採用コスト
・募集から採用までの時間
・応募者数
・採用率
・採用者の定着率
採用戦略を見直すべきタイミングはいつ?
採用戦略は、採用目標が達成できていない場合はもちろんのこと、以下の場合も見直しが必要なタイミングと言えます。
・業績や組織が大きく変化した時
・経営戦略が変わった時
・市場環境が変化した時
・離職率が高まった時
まとめ
採用戦略は企業の人材確保における柱となり、企業の成長や持続的な競争力の維持に直結する重要な要素です。この記事を参考に、効果的な採用戦略を構築し実施していきましょう。
参考資料:
経済産業省.”人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~人材版伊藤レポート2.0~ 実践事例集 ”,
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