外部講師の選び方【社労士監修】依頼方法や注意点、確認すべきポイント、成功事例を紹介
2025/01/31
社員に業務スキルや専門的な知識を習得させるため、研修を行う企業は少なくありません。研修の効果を大きく左右するのが講師の存在です。
内部講師か外部講師どちらに研修を依頼するかや、どのような講師を選ぶかは研修の成功に直結し、受講する社員の成長を促進する重要なポイントとなります。
この記事では外部講師に依頼する場合を中心に、選び方や依頼の仕方、注意点などについて解説します。
外部講師を招いて研修を行いたいと考えている企業の方はぜひ参考にしてみてください。
外部講師と内部講師の違い
外部講師と内部講師では、その立場や専門性に違いがあります。以下にそれぞれの特徴について説明します。
外部講師とは
社内のスタッフではなく、外部から招かれた専門家や講師が外部講師です。一般的に業界の専門家や技術者、功績のある経営者などが採用されます。
外部講師は社内の視点にとらわれない客観的な見方で研修を行うため、社員は新しい学びを得ることができ、視野を広げることができます。
社内に充分なノウハウがない場合や業界トレンドを取り入れる必要がある場合は、外部講師による研修やセミナーを利用する企業が多いです。
内部講師とは
外部の専門家ではなく、自社の社員やスタッフが研修や教育を担当する場合の講師を内部講師と呼びます。内部講師は企業文化や社内ルール、業務内容について精通しており、社内の具体的な問題やニーズにのっとった研修を行うことができます。
一般的に内部講師は企業文化浸透や社内ルール、社内業務プロセスといった内容の教育を担うことが多いです。組織特有の事情に即した具体的なアドバイスや支援が可能です。
外部講師を呼ぶメリット
外部講師を呼ぶことには、さまざまなメリットがあります。以下にそれぞれの代表的な内容を解説します。
より専門的な知識の提供
特定の分野で高い専門性や豊富な実務経験を持っている外部講師の研修では、より専門的な知識を直接学ぶことができます。既存の学びにはなかった新しい視点や最新の業界動向に触れることができ、質の高い学びが得られます。
業界トレンドの提供
特定分野の最新のトレンドや技術、ノウハウといった社内だけでは得られない情報を得ることができます。
社外視点からの研修
社内視点ではなく、社外からの客観的な視点で研修が行われます。固定観念にとらわれない革新的なアイディアやアプローチを提供できる点も外部講師のメリットの一つと言えます。
受講に対するモチベーションアップ
内部講師による研修では、通常業務の延長と捉えられやすく緊張感が薄れる場合があります。外部から著名な専門家や成功した経営者などを招くことは、受講者のモチベーションを高める効果があります。
社内リソースの負担を軽減できる
研修当日はもちろん、開催までの準備にも多大な時間と労力が必要となります。外部講師に依頼することで、研修準備や当日にかかる社内リソースの負担を軽減できます。
外部講師を呼ぶ際の注意点
外部講師を呼ぶ場合にデメリットとまではいきませんが、気をつけなければならない注意点がいくつか存在します。以下にそれぞれの注意点を解説します。
コストがかかる
外部講師を招く場合、講師料や交通費、宿泊にかかる費用などが発生します。有名な専門家を招致する場合、その費用が高額になることもあります。
内部講師を採用する場合と比較し、コストがかかる点は大きなデメリットと言えます。
組織の実情に合致しない
外部講師は社外の人材であるため、企業内部の事情や状況を十分に理解していない場合があります。その場合、講義内容が企業の実情と合致せず、受講者にとって効果的でない可能性があります。
一回だけの研修で成果を出しづらい
外部講師による研修は、研修後のフィードバックが難しく、研修や講義は一回限りで終わるケースが多く見られます。研修を受けた直後、意識は高まるものの継続できずに元の状態に戻ってしまう可能性があります。
一回限りの研修では効果が持続しにくい可能性があるため、研修後のフォローアップや効果測定を実施することが重要です。特に、研修内容が業務に定着するように、定期的なチェックを行うことが労働契約法の遵守に繋がります。
外部講師を選ぶ理由
外部講師を選ぶ理由はいくつか考えられます。以下の3点が主な理由です。
専門的な知識を得るため
外部講師は、特定分野での専門的な知識や豊富な実務経験や専門知識を持っています。また、最新の業界動向やトレンド情報にも詳しく、それらの情報や高度なスキルを学ぶことができます。
外部講師を採用することで、社員は即戦力となる知識を得ることができ、組織の競争力向上につなげることができます。
客観的視点の導入
外部講師を招くことで、企業外部の新しい視点からの研修を受けることができます。固定観念にとらわれない問題解決の方法や業務の効率化など、さまざまな面で新たなアイディアの発見やアプローチの方法を身につけることができます。
モチベーションの向上
外部から著名な専門家や成功した経営者などを招くことは、受講者のモチベーションを高めることにつながります。
外部講師の選び方
ここからは、適切な外部講師を選ぶための基準3点を解説します。
研修目的に合う専門性を持つ講師を選択する
外部講師を選ぶ際には、研修の目的に合った専門知識や経験を持つ講師を選びます。
例えば、マーケティングの研修を行う場合、対面マーケティングのほかデジタルマーケティングやSNSの活用術、顧客心理学といった幅広く深いマーケティング知識と実践経験を持つ講師を選択します。
講師が過去に行ったセミナーの評価や経歴、著書、講演履歴も参考にし、選びます。
カスタマイズの対応が可能な講師を選択する
講師がパッケージ化された内容のみでなく、企業のニーズに合致する研修内容へのカスタマイズに柔軟に対応してくれるかも重要な判断ポイントです。
研修の目的や課題、受講者の詳細を共有した上で、それに合わせてカスタマイズした内容を提供してくれる講師を選びましょう。
費用対効果についても検討する
外部講師を選ぶ際には、講師料や交通費、宿泊費などのコストと予測される成果を見極め、費用対効果についても検討する必要があります。
講師の持つ知識やスキル、研修実績が企業にとってどのような価値をもたらすかをしっかりと考慮した上で、予算と見合わせながら選択します。
外部講師と事前確認すべきポイント
外部講師へ依頼する際は、研修の目的や受講者の概要、目標とするゴールについて、しっかりと講師と共有することが大切です。
研修が専門的な内容だからと講師に丸投げするのではなく、準備からフォローアップまでを講師と自社で綿密に打ち合わせを行いながらすすめることが重要です。
事前確認する際のチェックリスト
外部講師を招く際は、以下の項目を事前に確認することで、トラブルなく効果的な研修を行うことができます。
・研修目的・ゴール設定
・受講者の明細
・講義内容・カリキュラム
・研修の形式と必要な機器・資料
・講義料・交通費・宿泊費などの費用
・講義後のフォローアップや追加サポートの可否
外部講師への依頼の仕方
一般的に外部講師への依頼は下記の手順で行います。
手順1. 研修の目的やゴールを明確にする
外部講師を依頼する前に、研修の目的や達成したい目標を明確にします。このステップが、適切な講師選びに繋がります。
手順2. 研修会社や講師の選定
研修内容に合った会社や講師をリサーチし、候補を絞ります。評価や実績を確認しながら選定を進めましょう!
手順3. 講師に依頼の連絡
選定した講師に連絡し、研修の概要やスケジュールを共有します。この段階で候補者の空き状況も確認すると良いでしょう。
手順4. 具体的な打ち合わせ
講師と研修の詳細について話し合います。具体的なプログラム内容や時間配分、受講者層について調整しましょう。
手順5. 講師との契約
条件が合意に達したら、正式に契約を交わします。
手順6. 研修当日に向けた準備
講師との協力のもと、資料や会場、機材などの準備を進めます。受講者への案内も忘れずに行いましょう。
手順7. 研修実施
当日はスムーズな進行が重要です。司会や進行役を設けると安心です!
手順8. 研修後フォローアップ
研修終了後は受講者からフィードバックを収集し、必要に応じて次のステップを計画すると良いでしょう。
研修外部講師の成功事例
株式会社ファーストリテイリング
社会の多様化・グローバル化といった外部環境の変化に対応すべく、ユニクロのファーストリテイリング社では外部講師を招いてアンコンシャスバイアス(過去の経験や育ってきた環境、社会属性によって無意識のうちに、他者に対して抱いている偏見)を無くすための研修を行っています。
2023年8月末時点で、ファーストリテイリング社の管理職に占める外国人比率は56%となっており、2030年までに8割に引き上げる方針です。国籍にとらわれず、優秀な人材を管理職に採用しながら成長し続けました。
本田技研工業株式会社
ホンダ社ではあらゆる環境変化に対応しうる“柔軟かつ俊敏な経営基盤”の構築を目指し、女性活躍拡大のための取り組みを行っています。
その一環として、マネジメント層への意識醸成を目的とした外部講師による講演会や女性社員を対象としたセミナーを実施。
取り組み内容が評価され 2019年度 新・ダイバーシティ経営企業100選に選出されました。現在も取り組みは続いています。
研修終わりにすべきこと
研修当日はもちろん、研修終わりのアクションは研修の効果に大きな影響をもたらします。以下に研修終わりにすべきことを解説します。
受講者からのフィードバックを集める
研修内容の理解度や分かりやすさ、研修内容が適切であったか、講師の研修の進め方といった研修についてのフィードバックを収集します。フィードバックを講師へ伝えるとともに、会社側も今後の外部研修を企画する際の参考にします。
受講者以外の社員への共有
今回の研修を受講しなかった社員へ研修内容の共有を行います。
フォローアップの実施
研修後に定期的なフォローアップを行い、学んだことが実務に活かされているかを定期的な面談やミーティングなどで確認します。
外部講師に対するよくある質問
選ぶ際に重要なポイントは?
研修の目的を明確にし、目的に合う専門性や経験のある講師を選択します。また、パッケージ化された研修内容だけでなく、自社のニーズに合ったカスタマイズが可能かどうかも重要なポイントです。
依頼費用はいくらぐらいかかる?
外部講師による研修の費用は、講師の専門性や知名度、時間や受講者数によって変わりますが、一般的に講義料は1日あたり30万円~50万円程度です。このほかに交通費や宿泊費が加算されます。
まとめ
専門的な知識やスキルを持つ外部講師を招いた研修は、企業に多くのメリットをもたらします。この記事を参考に効果的に研修を実施し、業務の改善化や効率化、人材育成を行い、持続可能な成長につながる基盤をしっかりと作っていきましょう。
参考:日本経済新聞.”ファストリ、外国人管理職8割に 海外で採用増・育成”,
株式会社ファーストリテイリング.”アンコンシャスバイアス研修を実施しました!”,
増子美和.本田技研工業株式会社.”Honda 多様性推進への取り組み”,