ガラスの天井とは【参考になる企業事例付】原因・影響・戦略を深堀りし、打破する方法を紹介!
2025/06/01
グローバル市場において、企業にESG経営や人的資本経営を求める株主や機関投資家が増えています。特に、日本企業に対しては、「ガラスの天井」の打破が強く求められています。
本記事では、ガラスの天井の概要や原因、具体的な解決策について紹介していきます。
ガラスの天井について詳しく知りたい経営層や、解決に向けた事例を参考にしたい人事担当者の方はぜひ最後までご覧ください。
ガラスの天井とは
ガラスの天井とは、組織の中で昇進に値する人材が、性別や人種などの理由から、不当に低い地位に据え置かれることを意味する比喩表現です。
日本においては、特に女性の能力開発やキャリア形成を妨げる要因として使われています。
「ガラスの天井」「ガラスの崖」の違い
「ガラスの天井」と「ガラスの崖」は、どちらも女性のキャリアにおける不平等を表す言葉ですが、意味は異なります。
「ガラスの天井」は、実力があっても女性が高い地位に昇進できない状況を指します。一方、「ガラスの崖」は、女性がようやく昇進しても、業績不振などの危機的な場面で任され、失敗の責任を負わされやすい状態を意味します。
どちらも見えにくい構造的な問題が背景にありますが、不平等が現れるタイミングや形に違いがあります。
詳しい両者の差異は、以下の通りです。
・「ガラスの天井」:能力や実績があるにもかかわらず、女性が管理職や役員などの高い地位に昇進できない状態のこと。性別による無意識の偏見や制度上の壁が影響。
・「ガラスの崖」:企業が危機的状況にある際に、象徴的なリーダーとして女性が抜擢される現象。成功が難しい場面での起用であるため、失敗の責任を負わされやすいリスクがある。
ガラスの天井が生まれる原因
この章では、ガラスの天井が生まれる要因について、女性側・男性側の視点に分けて解説します。
女性側|育児・家事負担の影響
総務省の調査によると、日本では女性が育児・家事に取り組む家事関連時間が男性側の約4倍にもなります。
この格差は、世界各国と比較しても深刻であり、女性が長期的に働くことや昇進を諦めてしまう要因となっています。
女性側|ロールモデルの不足
女性管理職の少ない職場では、女性社員が将来の自分の姿を重ねられるようなロールモデルを見つけにくくなります。
ロールモデルがいない状況では、女性自身が社内で活躍する姿を描けず、昇進や昇格に対しての意欲が弱まってしまうことがあります。
女性側|自己評価の低さ
十分なスキルや実績があっても、「自分はまだ早い」と感じてしまう女性は少なくありません。
この“コンフィデンスギャップ”は、出産や育児といったライフイベントと重なることでさらに強まり、昇進の打診に対して消極的になるケースもあります。
男性側|無意識のバイアス
社会やメディアの影響により、性別に基づいた固定観念を無意識に抱くことがあります。
これを「アンコンシャス・バイアス」と呼び、「男は仕事、女は家庭」といった考え方や、「看護師は女性、消防士は男性」といった職業イメージが、女性の昇進機会を狭める一因となっています。
男性側|ワークライフバランスへの偏見
業務量が多い職場では、ワークライフバランスを重視する社員に対して「甘え」や「責任感がない」といった否定的な声が上がることがあります。
こうした風土では、激務に耐えられる人材だけが残り、多様な働き方が許容されにくくなります。
その結果、働きづらい職場環境が固定化されてしまいます。
男性側|男性基準の評価制度
制度やキャリアパスが「フルタイム・長時間労働」を前提として設計されている場合、出産・育児などの事情を抱える女性は評価されにくくなります。
また、「成果よりも滞在時間で評価される」風土が残る職場では、多様な働き方に適応した柔軟な評価が難しく、女性の活躍を阻む要因となっています。
ガラスの天井による影響
ガラスの天井がある状況は、企業や個人に以下のような悪影響やリスクをもたらします。以下に主な影響を紹介します。
昇進の機会の制限
ガラスの天井によって、女性社員の昇進の機会が制限されます。このような状況では、管理職や経営層を目指す優秀な女性社員が離職しやすくなります。
また、離職者による企業への口コミや悪評が広まることで、新卒や中途採用の場面で女性から選ばれにくくなる可能性があります。
不公平な待遇
ガラスの天井は、十分な能力や素養を持つ女性社員に対して不公平な待遇を強いるものです。満足のいく待遇が得られない状況では、女性社員のエンゲージメントが低下し、結果として離職に繋がる可能性があります。
また、女性社員の就業意欲が下がることで、業務の質や生産性も低下するおそれがあります。
組織文化への影響
ガラスの天井は、組織文化にも深刻な影響を及ぼします。女性社員の昇進や昇格が阻まれることで、男性中心の管理職層に偏りやすくなり、女性蔑視や差別、ハラスメントが横行する懸念があります。
こうした組織文化が放置されると、コンプライアンス違反の発生リスクも高まります。
心理的影響
ガラスの天井は、社員の心理にも大きな影響を及ぼします。女性社員のモチベーションや自己肯定感が低下し、業務への意欲が失われやすくなります。
また、本来は育児や介護と両立したいと考える男性社員の声も届きにくくなり、全ての社員にとって働きにくい職場へと繋がります。
【企業向け】ガラスの天井を超えるための戦略
企業がガラスの天井を打破するために実践できる具体的な戦略としては、次のようなものが挙げられます。
評価基準の透明化と公平性を確保する
まずは、評価基準の透明化と公平性の確保に取り組むことが求められます。
ガラスの天井が生じる背景には、評価者による無意識のバイアスや評価制度上の課題が潜んでいるケースが少なくありません。
透明性が高く公平な人事評価システムを構築することで、女性社員だけでなく、全ての社員が働きやすい職場を作ることができます。
明確なビジョンを持つ
ガラスの天井の打破には、組織としての明確なビジョンを掲げることが有効です。
たとえば、企業理念やパーパスにD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を反映させるほか、「女性管理職比率30%」などの数値目標を設ければ、全社的な取り組みとして定着しやすくなるでしょう。
フレキシブルな働き方を導入する
育児や介護といったライフイベントと両立しやすい柔軟な働き方を導入することで、多様な人材の活躍を推進できます。
具体例としては、リモートワークやフレックスタイム制の導入などが挙げられます。
リーダーシップの多様化を推進する
権威主義的・家父長的な従来型のリーダー像にとらわれず、サーバント・リーダーシップやオーセンティック・リーダーシップといった新たな概念を取り入れる動きも広がっています。
多様なリーダー像を提示することにより、誰もが自身のスタイルでリーダーを目指せるようになります。
メンターシップとキャリア開発の支援
多様性のある働き方を支援するうえで、メンター制度などを活用したキャリア開発支援は非常に有効です。
経験豊富な先輩社員との対話を通じて、個々の課題や悩みを整理し、自分に合ったステップを踏めるようサポートが可能になります。
その結果、離職率の低下や社員定着にもつながるでしょう。
参照元:メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル(厚生労働省)
教育と意識改革を行う
出産や育児などのライフイベントを見据えて、早いうちから若手社員に多様な経験を積んでもらえるよう教育体制を整備・拡充することもおすすめです。
また、無意識のバイアスを取り除き、公平な処遇を徹底できるよう、全社員に対して啓蒙活動や意識改革運動を行うことも効果的でしょう。
データ活用と進捗のモニタリングをする
女性管理職比率などの具体的な指標を設定したら、タレントマネジメントシステムなどを活用した定期的な進捗確認が重要となります。
たとえば、離職率の高い部署や女性の管理職登用が進まないエリアなどを可視化し、個別にアプローチすることで、着実にガラスの天井を打破することができます。
外部の支援を活用する
評価制度や働き方改革の見直しに取り組むうえで、社内だけで対応が難しい場合は、外部の専門家を活用する選択肢もあります。
組織人事コンサルタントや社会保険労務士などの力を借りることで、より効果的な制度整備が期待できるでしょう。
【企業向け】ガラスの天井に対してできること
企業が主体となって取り組むべき解決策としては、次のような施策が挙げられます。
採用・昇進の公正化
まずは、採用や昇進のプロセスを公平に整えることが基本となります。
現場社員を対象にしたアンケート調査などを実施し、職場や評価者、評価項目設計による評価のブレや不公平な待遇が生じていないかを確認しましょう!
もし不公平な傾向が見つかった場合は、人事評価制度の見直しや評価者研修を導入して対応します。
施策実施後は効果測定を行い、課題が解消されているか、新たな問題が生じていないかを継続的にチェックすることが大切です。
ワークライフバランスの推進
企業が率先してワークライフバランスを推進することも必要です。
まずは、全社員に対してワークライフバランスの意義や重要性を周知し、意識改革を促しましょう。そのうえで、自社の課題に合わせた施策を実行していきます。
ワークライフバランスの推進に向けた施策には、育児・介護休暇の取得率向上に向けた取り組みや、在宅勤務・短時間勤務制度の実施、長時間労働を助長する業務プロセスや評価基準の是正などが挙げられます。
女性リーダーの育成
女性管理職を増やすためには、リーダーとしての経験を積む機会を意図的に用意することが効果的です。
たとえば、小さな案件でもプロジェクトリーダーとしての経験を積むことで、メンバーマネジメントや仕事の役割分担、進行管理など、昇進後に必要なスキルを実践的に身につけることができます。
あわせて、管理職や経営層候補向けの研修プログラムを整備し、意欲ある社員の成長を後押ししていくことが望まれます。
企業文化の変革
ガラスの天井を打破するには、根底にある企業文化そのものを見直す必要があります。
無意識のバイアスやジェンダーステレオタイプをなくすために、経営層自らがD&I推進を発信することが欠かせません。たとえば、全社会議でのメッセージ発信や、全社員向けの研修実施などが効果的です。
特に女性の評価やキャリアに直接関与する管理職や評価者には、重点的な意識改革が求められます。
ガラスの天井を解消するメリット
企業がガラスの天井を取り除くことで、経営面・組織面・社会的信用など、さまざまな側面でプラスの効果が期待できます。
以下にその主なメリットを紹介します。
人材確保につながる
女性社員が働き続けやすい職場環境を整えることで、離職率の低下が見込めます。特に優秀な人材の定着は、将来的な人材不足の解消にも貢献し、安定した組織運営につながります。
組織力が高まる
多様な視点や価値観が意思決定に加わることで、より柔軟かつ創造的な組織になります。
性別にとらわれない人材登用は、イノベーションやチームパフォーマンスの向上にも寄与します。
社会的評価が上がる
ダイバーシティ推進は、ESG経営や人的資本経営の観点からも注目されており、株主や投資家からの評価を高める要素となります。
結果として、資本市場における企業価値の向上も期待できます。
ガラスの天井解消へ取り組む企業事例
この章では、ガラスの天井の解消に向け、組織の多様性の確保に取り組んでいる企業の事例を紹介します。
東京海上ホールディングス株式会社
人材の多様性の強化を経営戦略と捉え、2030年に向け女性管理職比率30%達成を目標に掲げている。
女性活躍を推進できるよう、場所や時間の制約にとらわれず働ける制度や、階層・部署を横断して気楽に話せる対話の場を設けるなどの施策を講じている。
株式会社丸井グループ
多様性が活かされる組織基盤作りに取り組んでいる。たとえば、経営層から一般社員まで、全社員にアンコンシャスバイアス研修を実施している。
また「ジェンダーイクオリティプロジェクト」として、性別役割分担意識の見直し度合いを評価指標として設定し、達成に向け取り組んでいる。
参照元:人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~人材版伊藤レポート2.0~ 実践事例集(経済産業省)
まとめ
本記事では、ガラスの天井の概要や要因、解決策について紹介しました。
ガラスの天井は、女性社員の能力開発やキャリア開発を妨げ、企業経営に対しても悪影響を及ぼします。株主や投資家からも注目されているテーマであるため、経営課題として積極的に解決に取り組むことが求められます。
ぜひ本記事を参考に、ガラスの天井の打破に向けたアクションを実践してみてください。
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