介護離職をさせない職場環境づくり
2023/10/31
介護を理由に会社を辞める「介護離職」をする人が増えています。総務省が5年ごとに実施している基幹統計調査のひとつ「就業構造基本調査」では、昨年10月時点で親などの介護をしている人は629万人、そのうち働きながら介護をしている人は365万という結果が出ています。そして実際直近1年間で介護・看護のために仕事を辞めた人は10万6千人。前回の2017年と比較して7,000人の増加です。高齢化がますます加速している日本、今後さらに増えることが予想されます。
また「介護離職」をした従業員が企業のうち半数以上で、介護休暇や介護休業などの制度が利用されていなかったということが、東京商工リサーチの行った「介護離職に関するアンケート調査」により明らかになりました。
働きながら介護をするための支援制度
まず仕事を辞めることなく、要介護状態にある家族の介護を続けるための支援制度について、もう一度確認をしましょう。
1.介護休業
要介護状態にある対象家族を介護するために取得することの出来る休業です。育児・介護休業法により定められています。
対象となる労働者 | 対象家族を介護する男女の労働者 (日々雇用される者を除く) |
対象となる家族 | 配偶者(事実婚含む)、父母、子、 配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫 |
利用期間・回数 | 対象家族1人につき3回まで 通算93日まで |
パートやアルバイト、有期雇用契約の方も取得できますが、申出時点で、介護休業取得予定日から起算して、93日を経過する日から6ヶ月を経過する日までに契約期間が満了し更新されないことが明らかでないこと。つまり介護休暇を93日取得した後も6ヶ月以上、仕事を続けていくことが条件です。
このときの「要介護状態」とは、「負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」をいいます。
介護には終わりが見えないとよく言われます。平均介護期間は5年です。この93日は仕事と介護を両立していけるような体制を家族でつくっていく期間です。市区町村の制度や民間のサービスなどを検討する時間でもあります。
2.介護休暇
通院の付添い、ケアマネージャーとの打合せなど短時間の休みが必要な時に利用することが出来ます。
取得できる日数 | 対象家族が1人のときは、年5日まで 対象家族が2人のときは、年10日まで |
取得単位 | 1日または時間単位 |
対象の労働者、家族は介護休業と同様です。
3.その他の制度
短時間勤務等の措置 | 事業主は利用開始の日から3年以上の期間で2回以上利用可能な次のいずれかの措置を講ずる必要がある ・短時間勤務制度 ・フレックスタイム制度 ・時差出勤制度 ・介護費用の助成 |
所定外労働の制限 (残業免除) |
1ヶ月以上1年以内の期間 回数制限なし |
時間外労働の制限 | 1ヶ月について24時間 1年について150時間を超える 時間外労働の制限 |
深夜業の制限 | 午後10時から午前5時までの業務を制限 1ヶ月以上1年以内の期間、回数制限なし |
介護休業期間の生活保障「介護休業給付金」
雇用保険の被保険者、が対象家族を介護するために介護休業を取得した場合、一定の要件を満たすと「介護休業給付金」の支給を受けられます。介護終了終了後に事業主を通じて申請をします。
支給される額は、原則として休業前の給与の67%です。ただし介護休業中に給与が支払われていた場合は減額されます。
休業中に支払われた給与額 | 介護休業給付金支給額 |
13%以下 | 休業開始前の給与水準の67% |
13%を超え80%未満 | 休業開始前の給与水準の80%相当額までの差額 |
80%以上 | 支給なし |
仕事と介護の両立支援制度の社内周知を
家族の介護をしながら仕事を続けるという働き方は、間違いなくこれから増えていくことになります。そしてそれは40代から50代の企業にとっては重要な役割を担う人材である場合が多く、離職せざるを得ない状況は本人はもちろんのこと、企業側にとっても大きなダメージとなり得ます。
まずは制度の内容を従業員に周知する必要があります。また前出の調査でも、介護休業の取得が進まない理由に、「代替社員の確保が難しい」が62%と最多にあがっていました。
両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)の利用も念頭に入れましょう
中小企業であれば、仕事と介護の両立のための様々な支援に取り組む企業への助成金として「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」があります。家族の介護をしながら働く従業員が介護休業の取得や復帰、両立支援制度を導入した企業に支給されます。令和5年度からさらに個別に介護休業取得促進を周知する事業主、また代替職員を雇用する事業主へ助成をするコースも新設されています。
こちらの助成金を申請するためには、介護支援プランを策定し、就業規則や育児・介護休業規定に規定として定めたり、仕事と介護を両立しやすい環境整備を進める必要があります。
しかし、これから介護休業を取得する従業員は増えてくる一方だと思われます。きちんと対策をして、介護離職をさせない社内制度づくりに取り組むことで、従業員が働きやすい環境整備につながり、それは雇用の安定と事業の発展につながっていくことになります。