人事評価制度とは【人事担当者は必見】各メリットやデメリット、導入手順を解説!
2023/12/21
一定の期間ごとに評価を行い、従業員の処遇を決める制度「人事評価制度」。
評価はどのようにされるのか
そもそも評価制度とはどのようなものなのか
人事評価制度の導入について
社員の考え方・能力・役職などを正しく評価するために、こちらの記事を参考に「人事評価制度」の仕組みや導入手順について詳しく理解を深めましょう。
人事評価制度とは
人事評価制度とは、企業における従業員の仕事への取り組み方や成果・スキルを会社が評価し、給与や昇進に反映させるための仕組みです。適切に運用することで、従業員のモチベーション・生産性アップに繋がります。
個人事業主や中小企業はもちろん、公務員においても、組織の目標達成を担う人材の育成・確保になくてはならない仕組みです。
人事評価制度の仕組み
人事評価制度は下記の3つの機能で構成されており、互いに連動し機能を果たしています。
等級制度 |
評価制度 |
報酬制度 |
それぞれの制度の内容を順に解説していきます。
等級制度
人事評価制度の基礎を担う機能の1つ、等級制度。従業員を「能力」「職務」「役割」などの観点から序列化する制度です。等級制度により、従業員の人事処遇の基準を明確化し、評価を客観的に行えます。
等級制度はランク付けする軸となる基準によって、大きく「職能資格制度」「職務等等級制度」「役割等等級制度」の3種類に分けられます。
・「職能資格制度」とは
日本では主流とされる等級制度です。従事する仕事内容において、従業員各々が職務を遂行するのに必要な能力がどれくらいあるかを判定し、レベルに応じて等級を決定する制度です。
職能資格制度により決定する等級は、部長・課長といった役職とは異なり、勤続年数が長いほど職務を遂行する能力が上がるという前提で決められているケースがほとんどです。そのため、序列や賃金体系が年功序列になりやすいという特徴があります。
これまで日本企業の等級制度の主流とされた職能資格制度ですが、働き方の変化が著しい昨今ではあえてこの制度を避けたり、他の等級制度との組み合わせで運用したりする企業が増えています。国家公務員の人事評価制度でも、能力と業績を組み合わせた等級制度が採用されています。
・「職務等級制度」とは
職務等級制度は、従事する仕事の内容や難易度によりランク分けを行う等級制度です。前述の職務資格制度が職務遂行の能力を基準とするのに対し、こちらは仕事の達成度を基準とします。勤続年数に関わらず仕事内容で等級分けされるため、年功序列になりにくい特徴があります。
・「役割等級制度」とは
勤続年数や年齢に関わらず、組織における仕事の役割の大きさで等級分けする制度です。より難易度の高い仕事や重要度の高い仕事で成果を出すことによって、高い等級に上がることができます。成果主義・実力主義につながる評価制度として、近年注目されている制度です。
評価制度
評価制度は従業員の能力や仕事の成果、組織への貢献度を評価するための仕組みです。企業ごとに決められた等級制度を土台に、半年に一度、1年に一度といった期間ごとに定期的に評価を行います。
報酬制度
等級制度と実績を元に従業員の評価を行い、その評価に伴いどのような報酬を支払うかを決めるのが報酬制度です。給与・賞与といった金銭的な報酬の他、従業員が成長できる場の提供や休暇の授与など非金銭的な報酬があります。
人事評価制度によるメリット
人事評価制度を整え運用することにより得られるメリットを下記にまとめました。
メリット1. 従業員のモチベーションアップ
適正に評価されることや評価に基づく給与や待遇の向上は、従業員の日々のモチベーションアップにつながります。
メリット2. 会社の目標や理想とする姿、価値観を社員に共有できる
評価の指標や組織が求める人物像を明確にすることで、会社の目標や理想像、重要視する価値観を改めて社員と共有できます。
メリット3. 従業員一人ひとりのスキルや弱点を明確にできる
評価を行うことで、従業員一人ひとりの強み・弱みを明らかにでき、適切な人事配置や研修による人材育成につなげることができます。
↓
企業の組織力の強化・生産効率の向上・人材育成に効果
人事評価制度導入によるデメリット
導入により企業の成長に大きな効果をもたらす人事評価制度ですが、デメリットもあります。ここでは、人事評価制度を導入することで発生する可能性のあるデメリットを解説します。
評価を行うための労力・時間・スキルが必要
人事評価制度を導入し適正な運用を行うためには、制度構築のために大きな労力・時間と評価者の高いスキルが必要になります。評価基準が適正でない場合は、一部の社員のみが高く評価される不公平な制度になってしまうことも。
場合によっては従業員のモチベーションが低下するケースもある
自己評価より会社の評価が低かった場合など、従業員のモチベーションが低下することがあります。全ての従業員が納得する評価を行うことは容易ではありませんが、そのようなケースが発生する可能性があることを気に留めておく必要があります。
人事評価制度の導入手順
ここからは実際に人事評価制度を導入する際の手順を解説していきます。
1.現状分析
人事評価制度の導入にあたり、まず会社の現状分析を行います。会社の事業・組織・人材の3つの観点から現況と問題点を把握します。経営者や役員の感覚での評価ではなく、数値を用いた定量的評価を行います。
項目 |
事業 |
組織 |
人材 |
現況と問題点 把握ポイント |
事業内容・収益構造・業績 |
組織の構造 |
人材配置・労働条件・人件費 |
2.目的の設定
人事評価制度を導入し
・組織をどのような姿に持っていきたいのか
・企業全体が何を目指すのか
といった、導入の目的や目標を設定します。
3.評価基準の設定
「1.現状分析」で把握した現状と「2.目的の設定」で設定した目的を元に、自社に適する評価制度を選定し、どの程度目標が達成できたかを評価するための基準を設定します。
4.評価項目の作成
「3.評価基準の設定」で設定した評価基準を参照しながら、評価を行う項目を作成していきます。
5.評価方法を決める
1.~4.の手順を経て決定した評価項目について、どのように、何段階で評価を行うかのルールを決めます。例として、下記に評価方法のサンプルを記載します。
評価項目 |
|
上期 個人売上高目標:10,000,000円 |
|
評価 |
評価基準 |
A |
達成率100%超える |
A' |
達成率100% |
B |
達成率90%以上100%未満 |
C |
達成率80%以上90%未満 |
D |
達成率75%以上80%未満 |
E |
達成率75%未満 |
6.導入予定日の設定
策定した人事評価制度を従業員に周知の上、運用を開始するスケジュールを設定します。
7.人事評価内容を社員へフィードバック
評価を行った後、評価者は対象者へ内容のフィードバックを行います。一度の評価とフィードバックにおいて、評価結果の内容が充分に対象者に伝わり、対象者自身が問題点を認識できていること、対象者のモチベーションのアップにつながっていることが目指すゴール点と言えます。
フィードバックで重要となるのは下記2点です。
・評価の根拠を明確に伝える
・結果だけなく改善するための方法を話し合う
人事評価の種類
ここからは、人事評価方法のうち、よく用いられているものを紹介していきます。
目標管理(MBO)
目標管理(MBO)はManagement by Objectivesを略したもので、従業員が自ら目標を設定し、目標達成までの活動を自身でマネジメントし達成に望む自主性の高い評価方法です。上司と充分に面談の上、努力により達成できるレベルの目標を設定することがポイントとなっています。
自身で目標を設定し活動を行い、目標を達成できた際の達成感は高く、従業員のモチベーションアップや力を引き出す手法。
一方で、目標・結果にのみ目が行きやすくプロセスが無視されやすいことや、目標自体を低く設定してしまいがちな点に注意が必要です。
コンピテンシー評価
高いパフォーマンスを発揮している人の仕事の取り組み方、行動特性(コンピテンシー)を評価基準とする方法です。行動そのものではなく、なぜその行動をとったのかという行動につながる考え方や価値観を重視します。
360度評価
1人の従業員に対し、上司・部下・同僚といった異なる立場の複数の人により評価を行う方法です。直属の上司からのみの評価と比較し、客観的でさまざまな角度からの評価が可能なため、被評価者が納得しやすいという特徴があります。
反面、評価者の主観が入りやすい点や同僚同士で良い評価をし合うなどの問題が生じやすいのがデメリットと言えます。
OKR(Objectives and Key Results)
OKRはObjectives and Key Results(目標と主要な結果)の略です。組織のモチベーションを高めるような、難度が高めの挑戦しがいのある目標を設定します。
設定した共通の目標達成のため、会社・部門・個人といった階層ごとにそれぞれ目標を定め達成に向けて取り組むことと、高い頻度で設定・評価を行う点がOKRの大きな特徴です。
バリュー評価
バリュー評価は、バリュー(企業の経営方針に基づく価値観や従業員に求められる行動規範)に沿って従業員が事業活動を行えているかを評価する手法です。従業員が会社の価値観に関心を持ち理解する機会となり、組織力を高める効果が期待できます。
評価が評価者の主観に依りやすく、明確な判断基準となるガイドラインの設定が必要です。
人事評価制度導入時の注意点
人事評価制度を導入する際に注意すべき点をいくつかご紹介します。
評価項目を増やしすぎない
人事評価制度を導入すると、評価される側・評価者いずれにも、これまでなかった業務が発生します。評価項目を増やすことにより、労力・時間がかかり社員の負担が増加します。
評価制度の運用にリソースを費やし、本来の業務に支障をきたすことのないよう、評価項目は増やしすぎないことが大切です。
定期的に見直す
企業内部の状況や外部環境は刻一刻と変化するものです。人事評価制度も定期的に見直す必要があります。企業の経営方針・経営戦略と合った評価制度であるよう、定期的に改善や改変を行うようにしましょう。
評価ガイドラインを作成する
評価制度を制定しても、評価者の視点がまちまちで統一されていない状況では適切な評価は行えません。評価制度の運用時には、評価のガイドラインを作成し、評価者全員が同じ視点で評価を行えるような環境を整備しましょう。
ご相談は「サプナ社会保険労務士法人」へ
適切な人事評価制度は従業員のモチベーションアップにつながり、企業の組織力・生産力を高めます。しかし人が人を評価する以上、公平公正で全従業員が納得する結果を出すのはたやすいことではありません。
評価制度が一部の人に高い評価を与える内容だったり、評価者の主観が評価内容に色濃く反映されてしまったりすることも少なくないのが実情です。そのため、昨今は外部に評価制度のコンサルを依頼したり、専門家にアドバイスを求める企業も増えています。
サプナ社会保険労務士法人では、多くの人事評価制度作成のご相談をいただいております。評価制度の知識と対応実績豊富なスタッフが、あらゆる評価制度のお困りごとに対応します。適切な人事評価制度を制定し、企業力をアップしたい方はぜひ一度「サプナ社会保険労務士法人」にご相談ください。
まとめ
人事評価制度の仕組みや導入手順、運用するうえでの注意点について解説してきました。少子化が懸念される昨今、労働力の確保や人材育成は企業活動を行う上での最重要ファクターと言えます。
この記事を参考に適切な人事評価制度を運用し、長期的な人材育成と企業の発展につなげてください。
参考:内閣官房.”国家公務員の人事行政”,https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/jinji_d.html