男女雇用機会均等法とは?概要や必要な理由、メリットデメリット、よくある質問に回答!
2024/11/30
男女雇用機会均等法は、男女が雇用のあらゆる場面において平等に扱われることを目的とし、制定された法律です。
企業は改めて男女雇用機会均等法の内容を確認し、引き続きこの法律を遵守し、職場環境の改善に取り組むことが求められています。
この記事では、男女雇用機会均等法の概要やメリット、デメリット、よくある疑問などについてわかりやすく解説します。
男女雇用機会均等法とは
男女雇用機会均等法(正式名称: 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)は、日本において男女が平等に雇用される機会を保障するための法律です。
1979年の第34回国連総会において女子差別撤廃条約が採択されたことを受け、1985年に制定、1986年に施行されました。現行の内容に変更となった2020年を含め、これまで複数回の改正が行われています。
内閣府男女共同参画局の調査によると、15歳〜64歳の女性の就業率は2017年の58.1%から2023年の73.3%と6年間で大きくアップしていることが明らかになっています。
同期間の男性の就業率は80.4%から84.3%への上昇となっており、以前と比べ男女間の就業率の差はほぼなくなりつつあるのです。
男女雇用機会均等法の目的
男女雇用機会均等法には主に以下の4つの目的があります。
性別・経済的な平等
・職場において、採用や昇進、賃金、権限や業務配置など雇用の各場面で性別を理由にした差別をなくし、平等な機会を提供すること。
・育児や介護などの家事負担が女性にかたよることなく、男性も積極的に家事に参加し家庭内の役割を担える社会構造を目指すこと。
・職場でのセクシャルハラスメントの防止を義務付け、安心して働ける職場環境を整備し、性別に関わらず個々の能力が発揮できる環境を構築すること。
職場におけるセクシャルハラスメントのタイプについて、より詳しく知りたい方は「職場におけるセクシャルハラスメント対策についての正しい理解」をご覧ください。
多様性の促進
・性別にとらわれず多様な視点・意見が反映されやすい職場環境を構築すること。
・育児や介護のための休暇を取得しやすくする制度を普及し、さまざまな背景を持つ人々が働きやすい環境を作ること。
ワークライフバランスの確保
・出産や育児、介護などを理由とした従業員の不利益な取り扱いを禁止し、性別問わず育児休業や介護休業が取りやすい環境を作ること。
・フレックスタイム制度やテレワークなど、多様な働き方の導入を推奨し、仕事と家庭生活の両立が取りやすい環境を作ること。
妊娠・出産に対する保護
妊娠中の労働時間の短縮や産後の時短勤務といった制度の導入を推奨し、妊娠中や育児中の女性が働きやすい職場環境を構築すること。
なぜ男女雇用機会均等法が必要?
性別による不平等や差別をなくし、すべての人が平等な機会を持って生きられる社会を実現するためには、保障されるべき権利や問題点に成り得る言動を法で明らかにすることが大切です。
また、日本の経済の持続的な発展という視点でも、男女雇用機会均等法はなくてはならない法律です。
少子高齢化が進む日本において、女性が積極的に働ける社会を作ることは、労働力不足解決のための重要なファクターとなります。性別に関係なくすべての人材が平等に活用されることで、生産性の向上にもつながります。
女性が働きやすい社会を実現するためには、女性活躍推進法に基づく具体的な取り組みも重要です。他の記事「女性活躍推進法とは?」では、女性活躍推進法に基づく具体的な取り組みを詳しく解説しています。
男女雇用機会均等法の概要
ここからは男女雇用機会均等法の主要な条項、対象者、適用範囲について説明します。
主な条項
雇用管理全般において、性別を理由とする差別の禁止(第5条、第6条)
採用活動や業務配置、昇進、雇用形態や退職の勧奨などについて、男女で異なる対応を行うことを禁止する
間接差別の禁止(第7条)
採用に当たって、身長・体重や体力を要件とすることや、転居を伴う転勤に応じられることを条件とするなど、間接的な差別を禁止する
妊娠・出産などを理由として女性に不利益な取扱い等をすることの禁止(第9条)
妊娠、出産などを理由に、解雇や不利益な取扱いをすることを禁止する
セクシャルハラスメント、マタニティハラスメントの禁止(第11条)
職場におけるセクシャルハラスメント、マタニティハラスメントを禁止し、相談窓口の設置など、雇用管理上必要な対策をとることを義務とする
対象者
男女雇用機会均等法の対象者は、企業の全従業員です。正社員、パート、契約社員、派遣社員など、雇用形態にかかわりなく適用されます。
適用範囲
・職場における募集
・採用、配置(業務の配分及び権限の付与を含む)
・昇進・降格
・教育訓練
・一定範囲の福利厚生
・職種・雇用形態の変更
・退職の勧奨
・定年
・解雇
・労働契約の更新
【従業員側】男女雇用機会均等法のメリット
男女雇用機会均等法により、従業員は性別に関係なく平等な待遇を受けるための権利が保障され、多くのメリットを受けることができます。以下はその主な内容です。
性別にかかわらず公平な雇用機会を得ることができる
男女雇用機会均等法では採用や昇進、業務配置や給与などにおいて、性別を理由とする差別が禁止されています。男女ともに公平に機会を得ることができ、性別にかかわらず能力や実績により公平な評価を受けられます。
仕事と家庭生活の両立ができる
性別にかかわらず、育児や介護を理由とする休業が取りやすくなり、仕事と家庭生活のバランスが取りやすくなります。
仕事を長く続けやすい
結婚や出産、育児や介護といったライフイベントの際も休暇を取りやすく職場に復帰しやすい制度が整備されていることや、ハラスメントの禁止といった職場環境改善により、中途退社することなくいつまでも継続して働きやすい環境が整います。
【従業員側】男女雇用機会均等法のデメリット
一方で、従業員へのデメリットが生じる可能性も考えられます。以下はその主なポイントです。
制度と現状の乖離
男女雇用機会均等法に沿って制度は整備されたものの、実際には昇進や給与など、性別による間接的な差別が残っている場合があります。制度と現状の乖離により、より従業員が職場へのストレスや不満を感じる可能性があります。
ハラスメント禁止の過度な配慮
ハラスメント防止のために従業員が気軽にコミュニケーションを取ることが難しくなるケースが見られます。過剰にハラスメントを意識するあまり、業務上のやり取りが円滑でなくなり、職場環境が悪化する場合があります。
【企業側】男女雇用機会均等法のメリット
男女雇用機会均等法による企業へのメリットは、職場環境の改善や業務の生産性向上につながる点にあります。以下は主なメリットの内容です。
従業員のモチベーションがアップする
性別にかかわらず公平な雇用や評価の機会が得られることで、従業員のモチベーションが向上します。業務の生産性向上にもつながります。
人材の確保
従業員のモチベーションの向上は離職率の低下にもつながります。また、公平に採用や昇進の機会を提供することで、性別にとらわれない多様な人材を確保することができます。
企業のイメージがアップする
性別にとらわれず平等な雇用や評価を行うことは、社会的に良いイメージを持たれやすく、企業のブランド力の向上につながります。
【企業側】男女雇用機会均等法のデメリット
企業にとってデメリットと成り得る可能性もあります。以下に考えられる可能性を記載します。
制度運用のためのコストがかかる
男女雇用機会均等法に沿って制度を整備するため、社内規程の見直しや各種研修の実施が必要となる場合があり、時間・費用・労力コストが必要になる可能性があります。
社内の意識改革や制度の浸透に時間がかかる
男女雇用機会均等法に従い社内の制度整備を行っても、現場レベルでその意識が浸透するまでには時間がかかります。制度と現状に乖離があると、従業員の不満を招くこともあります。
男女雇用機会均等法についてよくある質問
ここからは、男女雇用機会均等法についてよくある質問とその回答を紹介します。
企業が遵守しない場合の罰則は?
男女雇用機会均等法を遵守していない疑いのある企業は、厚生労働大臣から違反事実の有無の報告を求められることがあります。違反の事実がある場合、助言や指導、勧告が行われ、事業主は改善のための措置を求められます。
報告に応じない場合や、嘘の内容の報告をした場合、過料20万円が課されることになります。勧告に従わない場合は、企業名が公表されます。
具体的にどのような差別を禁止している?
採用活動や業務配置、昇進、雇用形態や退職の勧奨といった雇用にかかわること、妊娠・出産などを理由として女性に不利益な取扱いをすること、セクハラやマタハラといったハラスメントなどを禁止しています。
パート・派遣社員にも適用される?
男女雇用機会均等法は正社員、パート、契約社員、派遣社員など、雇用形態にかかわりなく企業の全社員に適用されます。
企業に課される具体的な義務は?
男女雇用機会均等法に沿い、以下の義務が課されます。
・採用や昇進などの雇用における各場面で、性別にとらわれず平等な機会を提供すること
・セクハラやマタハラ防止のための社内教育や相談のための窓口を設けること
・出産、育児や介護など、さまざまな背景の人が柔軟に働ける職場環境を作ること
まとめ
男女雇用機会均等法により、企業は性別に関わらず平等な雇用機会を提供することが求められます。性別や背景にとらわれず多様な人材が活躍する組織は、幅広い考え方や創造性が促進され、生産性向上の可能性が広がります。
働きやすい職場環境の整備により、優秀な人材の確保や定着率向上も進み、少子化の中でも労働力の確保が得られ、持続可能な競争力の強化にも寄与すると考えられます。
ぜひこの記事を参考に、改めて男女雇用機会均等法について見直してみましょう。
参考:
内閣府男女共同参画局.”2-1図 女性就業率の推移”.2024,
厚生労働省.”男女雇用機会均等法の概要”.2024,