えるぼし認定制度とは【社労士監修】申請方法や事例、注意点、取得メリット等をわかりやすく解説
2025/06/01
「えるぼし認定制度」は、女性の採用や昇進、職場環境の改善など、女性が働きやすい職場づくりに積極的に取り組んでいる企業を、厚生労働省が認定する制度です。
女性が職場でその力を発揮し、キャリアを築いていける環境づくりは、本人の成長を支えるだけでなく、企業にとっても安定した人材の確保や組織力の向上につながります。
こちらの記事では、えるぼし認定の申請方法、認定基準、取得によるメリットや注意点、実際の企業事例について、社会保険労務士の視点からわかりやすく解説します。
制度の活用を検討している企業のご担当者様は、ぜひ参考にしてください。
えるぼし認定制度とは
えるぼし認定制度は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」に基づいて創設された国の認定制度です。
この制度では、女性活躍に関する「一般事業主行動計画」を策定・届出した事業主のうち、採用状況や管理職比率、労働時間などの一定の基準を満たした企業に対して、厚生労働大臣が認定を行います。
認定は取り組み状況に応じて3段階に分かれており、認定マークの使用や公的支援制度での加点措置など、企業ブランディングや人材確保にも役立つ制度として注目されています。
女性活躍推進法の概要
女性活躍推進法(正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)は、少子高齢化が進む中で、社会における女性の活躍推進を進めるため、企業や国・地方公表団体などが果たすべき役割を明確にする目的として2016年に施行された法律です。
この法律に基づいた取り組みが優れていると認められた企業に対して与えられるのが、「えるぼし認定」。つまり、えるぼし認定制度は、女性活躍推進法に則った具体的な実行内容の評価と、その成果の証といえる制度となっています。
えるぼし認定制度の取得メリット
女性の活躍を促進するための企業の取り組みを評価し認める、えるぼし認定制度。取り組みを行い、認定制度を取得することで企業にはさまざまなメリットがあります。
以下に考えられるメリットを解説します。
社員のモチベーション向上
性別に関わりなく平等な雇用機会を提供し、キャリアアップの支援を行うことは、社員のモチベーション向上に寄与します。職場の活気が増し雰囲気が良くなることで、女性社員のみならず男性社員の働く意欲も向上します。
優秀な人材・労働力の確保
働きやすい環境作りに注力している企業には、採用活動で女性を始めたくさんの人材が集まりやすくなります。必然的に優秀な人材や労働力の確保もしやすくなります。
企業のイメージアップ
えるぼし認定を取得すると、認定段階に応じたマークをホームページや名刺、自社商品等に掲載することができます。女性の活躍推進に力を入れていることが社会に周知され、企業のブランドイメージや社会的信頼度が向上します。
経済社会の多様化・グローバル化が進む昨今、社会的責任をしっかりと全うしている点が評価されます。
行政支援を受けられる
えるぼし認定企業は、政府や地方自治体からの助成金や支援プログラムを受けやすくなる場合があります。また、補助金申請時に加点措置を受けることができるケースも多くあります。認定された企業はいくつかの公的支援を受けることができる点もメリットの一つです。
持続的な成長と競争力の維持
女性の活躍推進を通じて、優秀で多様な人材を確保し、さまざまな視点を取り入れることで企業全体の組織力・競争力が向上します。外的環境の変化がめまぐるしい時代においても、影響を受けることなく持続的な成長が見込めます。
えるぼし認定制度の注意点
えるぼし認定を受けるためには、採用状況や管理職比率など5つの評価項目のうち、少なくとも1項目以上の認定基準を満たす必要があります。
また、えるぼし認定後は、その評価項目に関する実績を毎年「女性の活躍推進企業データベース」に公表し続けることが求められます。
注意すべき点として、公表した実績が基準を下回った場合、認定が取り消される可能性があるということです。
さらに、認定が取り消された場合は、その後3年間は再申請ができないという制限があります。
えるぼし認定の取得後も、継続的に取り組みを行い、基準を維持し続けることが重要です。
えるぼし認定制度の認定基準は?
えるぼし認定を取得するには、企業が以下の5つの評価項目のすべてにおいて、認定基準を満たしている必要があります。
認定は、満たした項目数に応じて3段階の等級(1~3段階目)に分かれており、すべての項目を満たすと最高位の3段階目が取得可能です。
5つの評価項目
えるぼし認定の評価項目は、以下の5つで構成されています。
1.採用状況
2.継続就業の状況
3.労働時間など働き方に関する状況
4.管理職比率の状況
5.多様なキャリアコースの整備状況
これらの項目は、女性が継続的に働きやすく、キャリアを築きやすい職場環境かどうかを多面的に評価する指標です。
採用状況
以下の①②いずれかに該当すること。
①男女別の採用における競争倍率(応募者数/採用者数)が同程度である
②直近の事業年度において、以下のいずれにも該当する
・女性正社員の割合がが産業ごとの平均値(平均値が4割を超える場合は4割)以上
・正社員の基幹的な雇用管理区分における女性労働者の割合が産業ごとの平均値(平均値が4割を超える場合は4割)以上
※雇用管理区分:事務職や営業職といった職種、正社員やパートといった雇用形態等の労働者区分
※産業ごとの平均値は厚生労働省「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく認定制度に係る 基準における「平均値」について」を参照ください。
継続就業状況
直近の事業年度において、次の①と②のいずれかに該当すること。
①「女性労働者の平均継続勤務年数」÷「男性労働者の平均継続勤務年数」が雇用管理区分ごとにそれぞれ7割以上
②「女性労働者の継続雇用割合」÷「男性労働者の継続雇用割合」が雇用管理区分ごとにそれぞれ8割以上
※新規学卒採用者等として雇い入れた労働者かつ、期間の定めのない労働契約を締結している労働者を対象とする
※①②の算出が難しい場合は、直近の事業年度において、正社員の女性労働者の平均継続勤務年数が産業ごとの平均値以上でも可
労働時間等の働き方
雇用管理区分ごとの労働者の法定時間外労働及び法定休日労働時間の合計時間数の平均が、直近の事業年度の各月ごとに全て45時間未満
上記の条件を満たすことが難しい場合は、[「各月の対象労働者の総労働時間数の合計」-「各月の法定労働時間の合計=
(40×各月の日数÷7)×対象労働者数」] ÷「対象労働者数」< 45 時間であること。
管理職比率の状況
以下の①②のいずれかに該当すること。
①直近の事業年度において、管理職に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値以上である
②「直近3事業年度の平均した1つ下位の職階から課長級に昇進した女性労働者の割合」÷「直近3事業年度の平均した1つ下位の職階から課長級に昇進した男性労働者の割合」が8割以上
多様なキャリアコースの整備状況
直近の3事業年度のうち、以下①~④について、
・常時雇用する労働者数が301人以上の事業主は2項目以上(非正社員がいる場合は必ず①を含む)
・常時雇用する労働者数が300人以下の事業主は1項目以上
の実績がある
① 女性の非正社員から正社員への転換(派遣労働者の雇入れ含む)
②女性労働者のキャリアアップに資する雇用管理区分間の転換
③過去に在籍した女性の正社員としての再雇用
④おおむね30歳以上の女性の正社員としての採用
3段階の等級とは?
「えるぼし認定」には、満たした評価項目数に応じて、以下の3段階があります。いずれも、実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表することが条件です。
1段階目(★)
5項目中、1〜2項目の基準を満たしている企業
2段階目(★★)
5項目中、3〜4項目の基準を満たしている企業
3段階目(★★★)
5項目すべての基準を満たしている企業
※1・2段階目の場合、未達成項目については、指針に基づく取組を実施し、その実績が2年以上連続で改善していることが必要です(取組状況もデータベースに公表)。
えるぼし認定制度の取得方法
えるぼし認定を取得するには、必要書類の準備と、所定の手順に沿った申請が必要です。以下に、準備すべき書類と申請の流れを紹介します。
必要書類
申請時に提出する主な書類は、以下の6点です。
※書式は厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」からダウンロード可能です。
1.基準適合一般事業主認定申請書
2.一般事業主行動計画の写し(申請日時点で有効な計画)
3.計画の周知・公表状況がわかる資料(例:公開日が分かるウェブサイトのスクリーンショット)
4.申請書3の実績を証明する資料
5.申請書4・5に関する公表日の確認資料(女性の活躍推進企業データベースの印刷画面など)
関係法令遵守状況報告書
申請手順
以下にえるぼし認定の申請方法を解説します。
1.えるぼし認定基準の確認
2.女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、内容を社内外に周知する
3.⼀般事業主⾏動計画を策定した旨を都道府県労働局へ届け出る
4.⾃社の⼥性の活躍推進に関する取り組み状況を「⼥性の活躍推進企業データベース」や、自社のホームページ等へ公開する
5.郵送、持参、電子申請のいずれかにより、必要書類を都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に提出しえるぼし認定申請を行う
えるぼし認定制度の認定事例
日本アイ・ビー・エム株式会社
日本アイ・ビー・エム社は女性活躍推進企業として「えるぼし認定」の3段階目を取得しています。採用や働き方改革等、さまざまな女性活躍推進の取り組みを実施し、これまでに以下のような成果を収めています。
・女性の採用比率:1割程度から4割へ引き上げ
・定着率の向上
・キャリア継続を支援する柔軟な働き方の推進
・在宅勤務、短時間勤務等の働き方制度の導入
三井物産株式会社
三井物産株式会社はジェンダーの多様性推進を最重要課題としており、女性が活躍できる職場推進に向けた取組みを強化しています。その取り組みが「えるぼし認定」2段階目に認定されています。
現在10%の女性管理職比率を、2031年3月期に20%に向上させることを目標とし、さまざまな育成プログラムを実施しています。
「えるぼし認定制度」と「くるみん認定制度」の違い
くるみん認定制度は、次世代育成支援対策推進法に基づき、 仕事と子育ての両立支援に取り組む企業が対象となり取得ができるものです。
えるぼし認定制度は、女性の活躍推進にフォーカスしたものですが、くるみん認定は子育てサポート推進を目的とした認定制度である点が違います。
えるぼし認定制度取得に関するよくある質問
Q.認定されるまでの期間はどれくらいかかる?
認定には前述のように一般事業主行動計画の提出、女性の活躍に関する情報公表、労働局への認定申請が必要です。
一般事業主行動計画の計画期間は2年~5年ですが、認定申請は、行動計画の取組期間中であっても可能です。
認定の書類審査は、申請から約1カ月ほどかかります。
審査の過程で必要書類の不足の指摘や追加資料の提出を求められることもあります。
Q.中小企業でも取得は可能?
中小企業もえるぼし認定の取得が可能です。企業の規模に関わらず、女性活躍推進法に基づいて女性の活躍を促進する取り組みを行っている企業は申請ができます。
Q.どういったサポートが受けられる?
えるぼし認定を受けた企業は、公共調達(政府や地方自治体の契約)で優遇される場合があります。政府や公共団体からの契約で加点評価されることがあるため、ビジネスチャンスが広がる可能性があります。
また、 日本政策金融公庫において実施している働き方改革推進支援資金を利用する際、通常よりも低金利での低利融資を受けることができます。
Q.プラチナえるぼし認定の取得条件は?
えるぼし認定(3段階のうちのいずれか)を受けているほかに、下記の要件を満たしている必要があります。
・5つの評価項目を、プラチナえるぼしの基準で全て満たしている
・策定した一般事業主行動計画に基づく取組を実施し、当該行動計画に定めた目標を達成している
・男女雇用機会均等推進者、職業家庭両立推進者を選任している
・女性活躍推進法に基づく情報公表項目(社内制度の概要を除く)のうち、8項目以上を「 女性の活躍推進企業データベース 」で公表している
まとめ
えるぼし認定を受けるために企業全体で女性活躍を推進することは、企業文化の改善や生産性向上、ビジネスチャンスの拡大にもつながります。この記事を参考に、ぜひえるぼし認定の取得にトライしてみてください。
参考:
日本アイ・ビー・エム株式会社.”女性の活躍支援”,
三井物産株式会社.”女性の活躍推進”,
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