2023年4月から中小企業の月60時間超え時間外労働の割増賃金率が上がります
2022/12/15
国が働き方改革の取組みのひとつとして進めている「時間外労働」に関する法改正。2023年4月1日からは、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が、中小企業に対しても引き上げられます。
中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が50%に
1週間40時間、1日8時間の法定労働時間を超える時間外労働をした場合に、給与に上乗せされる割増賃金。2010年の法改正で、月60時間を超えた時間外労働に対して50%以上の割増賃金を支払うことが決まりました。ただし、中小企業に対しては、この引き上げは2023年3月31日まで猶予がされていました。
2023年4月1日からは、中小企業に対しても、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が、25%以上から50%以上に引き上げられます。なお、60時間を超えている、いないに関わらず月45時間超の時間外労働を従業員にさせるには特別条項付きの36協定の締結が必要です。特別条項の締結なしに月60時間の残業をさせた場合、割増賃金率50%以上の割増賃金を支払っていたとしても労働基準法違反となります。
また月60時間超の時間外労働を深夜(22時~5時)の時間帯に行わせた場合、
深夜割増賃金率25%+時間外割増賃金率50%=75%となります。
この算定には法定休日に行った時間外労働は含まれませんが、それ以外の休日に行った労働時間には含まれます。法定休日に労働させた場合の割増賃金率は35%です。
企業に求められる対応とは何か
1.代替休暇(有給)の取得推進
月60時間を超える法定時間外労働を行った従業員の健康を確保するため、引き上げ分の割増賃金の支払の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。その場合は以下の内容を定める労使協定の締結が必要です。
①代替休暇の時間数の具体的な算定方法(換算率を何%にするかなど)
②代替休暇の単位
③代替休暇を与えることができる期間
④代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日
個々の従業員が、割増賃金の受領に代えて代替休暇を取得するか否かは、あくまで本人の意思によって決定されるものである点に注意しましょう。強制は出来ません。
2.労働時間の把握と可視化を意識する
割増賃金率が引き上げられた後は、労働時間の把握と時間外労働時間の可視化がさらに重要となります。時間外労働が毎月60時間を超えるようでは、割増賃金率引き上げ前よりも残業代含む人件費が大幅に増加してしまうためです。
3.時間外労働の削減努力
自社の労働時間を把握、可視化した上で、月の時間外労働時間が60時間を超えないような対策を講じます。月の労働時間の把握した上で、余分な時間外労働が多い傾向がある、または業務の進め方に課題があると判断した場合は、管理職や部署メンバーにヒアリングした上で、業務量の調整や必要業務の精査などの見直しを行います。外部の研修制度などを取り入れるのもよいでしょう。
4.就業規則の変更
1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金率と1か月の起算日については、労働基準法第89条第1項第2号に定める「賃金の決定、計算及び支払の方法」に関するものです。この部分に変更がある場合は、割増賃金率50%の引き上げに合わせて就業規則自体を変更し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
厚生労働省のページには「モデル就業規則」も掲載されていますので、参考にしてください。
今年も早いものでもう12月も半ばです。対象となる企業ははやめはやめの対策が必要となってきます。働きやすい職場づくりには、時間外労働の削減は欠かせません。ぜひこれを機会にじっくりと対策をしてみませんか?