「給与のデジタル払い」が2023年4月より解禁
2022/11/29
厚生労働省は、2022年10月26日に実施した「第181回労働政策審議会労働条件分科会」で、給与のデジタル払いを前提とし、労働基準法の一部を改正する省令案を了承しました。これにより2023年4月1日から、給料のデジタル払いが解禁となり、事業者の申請受付が開始となる見込みです。
給与のデジタル払いとは
「給与のデジタル払い」とは、銀行をはじめとする金融機関の口座を介さずに、PayPayやLINE Payなどのスマートフォンの決済アプリや電子マネーで給与を振り込んでもらうことのできる制度のことです。現在の給与支払いの方法は「現金」もしくは「口座振替」のふたつですが、今後は「デジタル通貨払い」が加わることになります。
現在の給与支払いのルールは、労働基準法第24条第1項第2項において「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。」と定められている賃金支払いの5原則です。多くの企業では「現金」ではなく銀行口座に振込をする支払方法をとっていますが、これには「本人の同意を得た場合に」例外的に許されている方法です。給与のデジタル払いでは、「通貨で」「直接」という点で対応していないことになります。厚生労働省では、今回、労働基準法施行規則を改正、施行するものとし、給与のデジタル払いとして、資金移動業者の口座へ給与を支払うことを可能としました。利用できる資金移動業者は、厚生労働大臣の指定を受けたものに限り、給与をデジタル払いするときには、従業員に同意を得る必要があります。その同意も使用者が労働者に強制をしないことが前提です。
また、指定する資金移動業者に関しては、次の①~⑤のすべてを満たすものとして、厚生労働大臣に認定を受けなくてはならないとしています。
① 破産等により資金移動業者の債務の履行が困難となったときに、労働者に対して負担する債務を速やかに労働者に保証する仕組みを有していること。
② 労働者に対して負担する債務について、当該労働者の意に反する不正な為替取引その他の当該労働者の責めに帰すことができない理由により当該労働者に損失が生じたときに、当該損失を補償する仕組みを有していること。
③ 現金自動支払機(ATM)を利用すること等により口座への資金移動に係る額(1円単位)の受取ができ、かつ、 少なくとも毎月1回は手数料を負担することなく受取ができること。また、口座への資金移動が1円単位でできること。
④ 賃金の支払に関する業務の実施状況及び財務況を適時に厚生労働大臣に報告できる体制を有すること。
⑤ ①~④のほか、賃金の支払に関する業務を適正かつ確実に行うことができる技術的能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有すること。
労働者に対しては銀行口座に振り込む場合の違いやリスク、不正引き出し等に際しての補償、アカウントの有効期限等について説明し、理解を得ておくことが重要です。
キャッシュレス化、デジタル化の加速にともない、給与のデジタル払いがどれだけ浸透するのか、今後の動向を注目していく必要があります