介護休業給付金とは|概要や申請方法、注意点、貰えない場合の対処法をわかりやすく解説
2024/11/29
少子高齢化が進む昨今、介護をしながら働く人が増えています。総務省による「令和4年就業構造基本調査」では、15歳以上の人で介護をしている人は約629万人、このうち働いている人は58%以上の約365万人であることが分かっています。
2012年から2022年の10年間で、介護をしながら働く人の数はおよそ73万人増加しており、今後もますます増える見込みです。介護のため休職を検討しながら収入が減るため決断できない人も多いようです。
そのような人の経済的負担を減らすための制度に「介護休業給付金」があります。この記事では、介護休業給付金の内容や申請方法、注意点などについて詳しく解説します。
介護休業給付金とは
介護休業給付金は、一定の条件を満たし介護休業を取る場合、93日まで、休業前の給与の67%相当が支給される制度です。
介護休業給付金の概要
以下に介護休業給付金の概要を解説します。
支給対象者
支給となる対象者は下記の1~3のすべてを満たしている必要があります。
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※対象となる「家族」は下記です。
本人の祖父母、配偶者(事実婚を含む)、配偶者の父母、父母、本人の子供(養子含む)、本人の兄弟姉妹、本人の孫
有期雇用者の場合
上記1~3に加えて、介護休業開始予定日から93日を経過する日から6ヶ月を経過する日までに、労働契約が終了することが決まっていないことが必要
支給条件
また、支給条件として下記の3点が定められています。
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支給期間
介護休業給付金の支給期間は、対象家族1人につき通算93日までです。同一の被介護者の介護理由に変更があった場合でも、93日までとなります。
93日以内であれば、3回までの分割が可能です。
【支給例1】
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【支給例2】
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介護休業給付金の申請プロセス
ここからは介護休業給付金を申請する際の方法や必要な書類について解説します。
必要書類
受給資格があることを確認するために必要な書類
・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(ハローワークで入手可能)
・賃金台帳、出勤簿やタイムカードといった、賃金の支払いを証明できる書類
申請するために必要な書類
・被保険者が事業主に提出した介護休業申出書
・住民票記載事項証明書等(介護対象家族の方の氏名、申請者本人との続柄、性別、生年月日等が確認できる書類)
・介護休業の開始と終了日、介護休業日数の確認ができる書類(出勤簿、タイムカード等)
・支給申請書に記載した支給対象期間中に支払われた賃金や休業日数、勤務日数を確認できる書類(賃金台帳等)
※介護休業給付金支給申請書の記載方法は下記をご確認ください。
厚生労働省「介護休業給付の内容及び支給申請手続きについて」
申請方法
介護休業終了日の翌日から2ヶ月経過する日の属する月の末日までに、提出在職中の事業所を管轄するハローワークに上記の必要書類を持参の上、提出します。原則として、事業主を経由して行いますが、受給者が希望する場合は本人が申請手続きを行うことも可能です。
全国のハローワーク:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/hellowork.html
介護休業給付金申請の際の注意点
ここでは、介護休業給付金申請の際に注意したいポイント3点を解説します。
申請期限
介護休業給付金の申請には期限があります。期限は介護休業終了日の翌日から2ヶ月経過する日の属する月の末日までです。期限内に必ず申請を行うようにしましょう。
介護休業後に給付される
給付金は休業中ではなく、休業期間終了後申請することにより支払われます。
休業中の就労制限
就業している日数が支給単位期間(1か月ごとの期間)中10日を超える場合、その単位期間は支給対象外となります。この就労している日数は、在職中の会社以外で就労した分も含まれます。
介護休業給付金が貰えない場合は?
介護休業を取得する従業員の大きな経済的サポートとなる介護休業給付金ですが、支給申請ができないケースがあります。どのような場合、不支給対象となるのかを以下に解説します。
支給対象者が雇用保険に加入していない
介護休業給付金は、雇用保険に加入している人が対象となるため、パート・アルバイト等で未加入の場合、申請できません。
休業前の勤務期間が不足している
介護休業の開始前の2年間で、11日以上働いた月が12か月以上ない場合、支給対象外となります。
賃金額が介護休業前の賃金の80%以上支払われている
介護休業期間中の1ヶ月ごとに休業開始前の給与の8割以上の金額が支払われている場合、支給対象外となります。
貰えない場合の対処法
介護休業給付金が受給できない場合でも、状況を改善するために知っておきたい具体的な対処法があります。
短時間勤務や在宅勤務、短期的な介護休暇取得などを検討
時短勤務やテレワークの導入、短期の介護休暇の取得といった介護と仕事の両立のサポート体制を整え、従業員の負担を軽減する。
他の制度を利用する
介護休業給付金が受け取れない場合でも、他の介護支援のための制度を利用できる場合があります。地域によって、介護に関連する一時的な補助金制度が用意されているケースもあります。地方自治体の窓口で相談してみましょう。
【企業向け】介護休業の支援向けの助成金とは?
事業主が従業員の介護支援に積極的に取り組むことは、従業員の離職防止や職場環境の改善につながります。そのような取組を行う事業主に対し、国は下記の助成金の給付を行っています。
両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)
事業主が「介護支援プラン」を作成し、プランに沿って労働者の介護休業取得や職場復帰に取り組み、実際に労働者が介護休業の取得、または介護のための柔軟な就労形態の制度(介護両⽴支援制度)を利用した場合、事業主に助成されます。
「介護離職防止支援コース」は介護休業と介護両⽴支援の2つの項目に分けられています。
介護離職防止支援コースの助成金額
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※<個別周知・環境整備加算の条件>
●対象労働者に対し、介護休業・両⽴支援制度の⾃社制度の説明を資料により⾏う
●対象労働者に対し、介護休業を取得した場合の待遇についての説明を資料により⾏う
●社内の労働者に、仕事と介護を両⽴しやすい雇用環境整備の措置を2つ以上行う
介護休業給付金についてよくある質問
ここでは、介護休業給付金についてのよくある質問と回答をご紹介します。
介護休業給付金と他の給付金の併用は可能?
介護休業給付金は、育児休業給付金や産前産後休業給付金など、他の給付金と併用することはできません。
介護休業の期間の具体的な数え方は?
介護休業は、対象家族1人につき最大93日間取得できます。この93日間は連続日数としてカウントされ、土日祝日も含まれます。
例えば、4月1日に介護休業を開始した場合、4月1日から連続して土日祝日を含め93日間カウントされます。
介護休業期間中に一部日数仕事をしていた場合、その仕事をした日は休業期間から除外されます。
有給休暇や特別休暇を取った日は介護休業としてカウントされません。
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まとめ
介護のために一定期間仕事を休むことを可能にし、その間の経済的負担を軽減する役割を果たす介護休業給付金は、働く人にとっても企業にとっても、今後ますます重要なものとなるでしょう。日本の高齢化が進む中で、介護離職を防ぎ働き続けられる環境を整えることは、企業、ひいては社会全体の労働力維持にも大きな役割を果たしています。
この記事を参考に、ぜひ積極的に介護休業給付金制度を利用し、従業員がより働きやすい環境を整えていきましょう。
参考:
厚生労働省.”介護休業給付金支給申請書”.ハローワークインターネットサービス,