研修とは【社労士監修】目的とメリットデメリット、課題、実施フローをわかりやすく解説
2024/11/19
企業や組織で従業員のスキル向上や成長を目的に行われる「研修」は、現代のビジネスにおいて欠かせない取り組みの一つです。
新入社員の基礎教育からリーダー層のマネジメント強化まで、さまざまな目的に応じた研修が存在します。しかし、研修を効果的に実施するためには、その目的やメリット・デメリットを正しく理解し、計画的に進めることが重要です。
本記事では、社労士監修のもと、研修の基本から、そのメリット・デメリット、現場での課題、実施フローに至るまでをわかりやすく解説します。
これから研修の導入を検討している企業担当者や、より効果的な研修を目指す方に向けて、実践的な情報をお届けします。
研修とは
研修とは、従業員に対して教育を行うことで、必要な知識やスキルを習得させたり、マインドを醸成することです。主に社内研修と社外研修に分かれます。
社内研修と社外研修の違い
社内研修とは、人事・教育担当者など、社内の人間が企画・運営する研修のことです。主に社内の会議室や教育施設などで行われる職場研修を指します。
社外研修とは、アウトソーシングサービスやe-ラーニングなど、社外の人間に委託して行われる研修のことです。外部講師を招くこともあれば、オンライン講座を受講したり、社外で実施されているセミナーに社員が出向いたりするケースもあります。
研修を受ける意味は?
従業員が研修を受ける意味としては、以下のような点が挙げられます。
キャリア形成ができる
研修を通して知識やスキルを習得すると、業務の効率化や仕事の質の向上が期待できます。従業員の業務遂行能力が上がることで、社内外からより良い評価を得ることができ、キャリア形成にポジティブな影響を与えます。
自己成長ができる
研修で学んだことを主体的に業務に活かすことで、従業員の自己成長を促すことができます。成長実感が湧くことで、業務にあたるモチベーションも高まります。
組織やチームを強化できる
研修を受ける仲間とグループワークやディスカッションをすることで、お互いの考え方を理解し、チーム力を向上することも可能です。
研修の重要性
近年、人口減少などの影響から、日本企業における人手不足が深刻化しています。また、転職が一般化し、人材の流動化も進んでいます。こうした背景の中で企業が成長するためには、在籍している従業員の業務遂行能力を向上することが重要です。
研修をすることで、階層や職種ごとに必要な能力を従業員に付与することができます。また、組織やチームの能力を標準化する効果もあります。
このような観点から、優秀な外部講師を招いたり、効率的に学べるe-ラーニングを導入したりと、積極的に研修へ投資する企業も増えています。今後とも、日本企業における研修の重要性は増していくでしょう。
研修の種類
研修には、さまざまな種類があります。一例として、以下について紹介していきます。
入社時研修
入社する新入社員に向けた研修のことです。新人研修や新入社員研修とも呼ばれます。新人が企業や職場の考え方やルールを理解し、業務を遂行するために必要な知識やスキルを身につけるために必要な研修です。
OJT
OJT(On the job training)とは、現場で働きながら学ぶ研修のことです。受講者は、上司や先輩から指示やアドバイスを受けながら業務にあたることで、効率的に仕事の進め方などを学ぶことができます。
OFF-JT
OFF-JT(Off the job training)とは、実務から離れた場所で学ぶ研修のことです。会議室や研修センターなどで行われる対面研修や、オンライン研修などの種類があります。受講者は、業務から一時的に離れることで、集中して学習に取り組むことができます。
外部研修
外部研修とは、社外の事業者に研修の企画・運営を委託して行われる研修のことです。研修講師が社内に派遣される場合や、社外の特定の会場で行われる場合、オンライン講座を受講する場合などがあります。受講者は、専門家から上質な研修を受けることによって、自社にはない知見やノウハウを得ることができます。
eラーニング・オンデマンド
インターネット上に配信された動画教材を活用して学ぶ研修のことです。e-ラーニングシステムにアクセスすることで、時間や場所を限定されることなく、学びを得ることができます。
オンライン研修
ビデオ通話を活用して、オンラインで開催される研修のことです。インターネットを介することで、受講者がどこにいても研修を受講することができます。また、ビデオ通話の中でチーム分けができるブレイクアウトセッション機能などを活用することで、双方向的な学習も可能となります。
研修の目的
企業が研修を行う目的は、主に人材開発と組織開発の二点です。
人材開発ができる:研修を行うことで、従業員の知識やスキルを向上することができます。これにより、業務の生産性や質が向上し、業績アップにも繋がります。
組織開発ができる:研修を行うことで、企業の理念やビジョン、職場のルールなどを浸透させることができます。また、組織のチームワークを高め、従業員同士の関係性を改善することも可能です。
研修の実施手順
研修の実施手順としては、以下の流れで進めていきます。
1.研修の目的と対象者の設定
まずは、業務上の課題や職場のニーズから、研修を実施する目的を整理します。そのうえで、目的に応じて研修を受講する対象者を設定します。
2.研修の内容と実施方法の検討・準備
研修の目的を達成するために、教育すべきコンテンツを洗い出します。また、対象者や研修の内容を踏まえて、実施方法を検討します。
3.研修にかかる予算の割り出しと確保
研修の内容や実施方法を踏まえ、研修にかかる予算を割り出し、財源を確保します。助成金や補助金を活用できるかどうかも確認します。
4.研修スケジュールの設定と参加者への通知
研修を行うスケジュールを設定します。また、業務を調整しやすいよう、早い段階で参加者に通知します。
5.研修前の最終確認
研修資料のチェックや、運営の流れなどの最終確認を行います。研修に関わるスタッフを集めて、本番同様の環境でリハーサルやシミュレーションを行うことがおすすめです。
6.研修の実施
準備した内容を踏まえて、研修を実施します。振り返りや効果測定ができるよう、必要に応じてアンケートを取ります。
7.研修の振り返りや効果測定
研修の振り返りや効果測定を行います。課題として抽出されたポイントは、次回の開催に向け、改善できるようにします。
研修の成功ポイント
研修を成功させるためのポイントとしては、以下が挙げられます。
基礎から発展へのステップを意識する
いきなり発展的な内容を教えても、基礎がしっかりしていないと受講者の身にならないことがあります。研修を設計する際には、業務の拠り所になるルールや考え方を教えてから、具体的な知識やノウハウ、細かい注意点を教えていくなど、基礎から発展へのステップを意識しましょう。
研修間の優先順位を意識する
新人研修など、複数の研修を開催する場合には、研修間の優先順位を意識する必要があります。緊急度や重要度から研修プログラムごとの優先順位を定め、優先順位が高いものから開催できるようスケジュールを設定しましょう。
社内研修と社外研修を使い分ける
コスト削減を意識して研修を内製化しても、効果に繋がらなければ意味がありません。同様に、社内で開催した方が効果が出やすい研修もあります。研修を設計する際には費用対効果を意識し、社内研修と社外研修をうまく使い分けることが重要です。
現場に依存しない
企業の中には、新人研修を現場に丸投げした結果、新人がほとんど指導を受けられず放置されてしまっているところもあります。こうした状況が続くと、新人のモチベーションが低下し、早期離職に繋がる恐れがあります。たとえOJTであったとしても、現場に依存せず、人事が適切に管理・監督することが重要です。
振り返りや効果測定を行う
研修は一度開催して終わりではありません。入社や昇格、ジョブチェンジなど、人が入れ替わるのにあわせて、定期的に行う必要があります。研修の際に振り返りや効果測定を行うことで、課題点の抽出や改善につながり、より良い研修を実施することができるようになります。
研修効果を測定する方法
研修効果を測定する代表的な方法として、カークパトリックモデルが挙げられます。
カークパトリックモデルとは、ウィスコンシン大学の教授が提唱した教育の効果測定法のことです。
具体的には、教育の効果の程度を受講者の反応・学習・行動・成果の4段階に分けて測定します。
これにより、網羅的に研修の効果が分かり、課題も把握しやすくなります。課題が生じている場合は、研修後に対象者にフォローを行うとともに、次回研修時の改善に活かしましょう。
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研修についてよくある質問
最後に、研修に関するよくある質問にお答えします。
企業が研修を提供する理由は?
企業が研修を提供する理由は、主に人材開発と組織開発の二点です。
企業が研修を行うと、従業員の能力を向上させることができます。これにより、業務の生産性や質が向上し、業績アップにも繋がります。また、理念やビジョン、職場のルールなどを浸透させることで、組織力を強化することもできます。さらに、組織のチームワークを高めたり、従業員同士の関係性を改善することも可能です。
オンライン研修と対面研修の効果の違いは?
オンライン研修と対面研修には、さまざまな面で効果の違いがあります。
オンライン研修は、コストや工数を抑えることができ、録画を繰り返し視聴できることが特徴です。一方で、集中力が切れやすく、グループワークや実践をともなう研修がしづらい面もあります。そのため、インプット中心の研修や語学研修に活用することで、高い費用対効果が得られます。
対面研修は、受講者が集中しやすく、受講者間での交流や共同作業がしやすいのが特徴です。一方で、スケジュール調整や移動手段の確保など、費用や手間がかかりやすいところもあります。そのため、グループワークや実践をともなう研修に活用することで、高い費用対効果が得られます。
研修による費用対効果を高める方法は?
研修による費用対効果を高めるためには、研修の目的を明確にすることが重要です。
研修の目的がはっきりしていないと、プログラム内容がブレてしまい、肝心な学びに繋がらないことがあります。また、研修を「やりっぱなし」になり、効果測定や次回への改善がされない要因にもなります。
目的が明確化すれば、研修の中でやるべきことや、投資すべきポイントが見えてきます。まずはしっかりと目的を定めるようにしましょう。
まとめ
研修は、企業の発展や従業員の成長に欠かせないものです。一方、「社内に必要な知見やノウハウが蓄積されていない」「リソース不足で研修の企画・運営ができていない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか?
研修の質の向上や効率化を図るためには、社外研修やe-ラーニングを活用するのもおすすめです。研修にお困りの際にはぜひサプナ社会保険労務士法人までお問い合わせください。